秋の日はつるべ落としと言いますが、すっかり暗くなったある日の夕方、家へ帰る道すがら、ふと足を止めてとある古書店のワゴンセールの本を何の気はなしにのぞき込みました。すると、100円とゴム印の押された紙が貼ってある末川博編著「法学入門」が目に入りまし た。末川先生はとっくの昔に鬼籍に入られていますが、民法学の権威であり、かつては「西の末川、東の我妻(榮)」と言われたほどの 、関西法学界を代表する学者でした。法学とは無縁の私ですら知っている斯界の大家の本が、野ざらし、雨ざらしのワゴンセールに出ているのが、とても忍びなく思え、にわかに買おうという気持ちが起こりました。ただ、100円の本を1冊だけ買うのも、これまた忍びなく、ワゴンに並んだほかの本を眺めていると、いずれ図書館で借りて読もうと思っていた辻邦生著の「安土往還記」がありました。「法学入門」と日焼けした「安土往還記」を手に店の奥に入り、300円を支払い、家路を急ぎました。
さて、表題にある「古本の効用」についてです。普通、新刊本を買って帰ると、「また本を買ったのぉぉ」と冷ややかな視線を向けられますが、古本の場合、おそらく本棚から持ってきたと思われるのか、「あら、法律の本を読むの?」と、怪訝がられこそすれ、おとがめはありません。パラパラと頁を繰りながら、「末川先生は立命館大学の総長をしていた有名な法学者なんだよね」なんて素知らぬ顔で応えました。
さて、表題にある「古本の効用」についてです。普通、新刊本を買って帰ると、「また本を買ったのぉぉ」と冷ややかな視線を向けられますが、古本の場合、おそらく本棚から持ってきたと思われるのか、「あら、法律の本を読むの?」と、怪訝がられこそすれ、おとがめはありません。パラパラと頁を繰りながら、「末川先生は立命館大学の総長をしていた有名な法学者なんだよね」なんて素知らぬ顔で応えました。