花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

知は力なり

2016-02-27 14:40:48 | Weblog
 かつてアメリカ歴史学会長を務めたこともある入江昭さんは、著書の「歴史を学ぶということ」(講談社現代新書)の中で次のように高校時代を振り返っています。「とくに私にとって刺激的だったのは、安藤英治先生の教える社会科で、高校一年生にアダム・スミス、フリードリッヒ・リスト、マックス・ヴェーバーなどの思想を教えてくれた。どこまで吸収できたかは疑問であるが、教科書以外にも知識の宝庫が山とあること、そしてその宝庫の扉はだれかに開いてもらうのではなく、自分たちで開くものだという姿勢を教えられたように思う。安藤先生の専門分野は社会思想史で、歴史学そのものではなかったが、先生が尊敬していた政治学者の丸山真男教授と同じように、ドグマ、とくに国家によって強制的に押しつけられる「史実」に対して、常に批判的な態度で接しておられた。」
 教科書以外にも知識の宝庫が山とあること、その宝庫は自分で開かなくてはならないこと、これらのことは入江さんの時代のみならず、今においても大切なことです。「知は力なり」と言いますが、知識が力となるにはこのような姿勢が必要ではないかと思います。そして、知が力となれば、ズルズルと忍び寄るドグマの浸食を許さなくなります。そのことを考えると、大学を職業訓練校的なものへシフトしたい人たちは、ドグマに対する批判力を封じることを狙っているのではないかと思えてきます。

あなたの数ではありません

2016-02-18 23:25:49 | Weblog
 政治家がふさわしくない行為を行った場合、新聞では政治面ではなく社会面で扱われることが多いようです。2月18日(木)の朝日新聞朝刊の社会面に「『米は黒人が大統領。これ奴隷』 自民・丸山議員が発言」の見出しがありました。記事によると、丸山和也議員は参院憲法審査会で「アメリカは黒人が大統領になっている。これ、奴隷ですよ。建国当初、黒人、奴隷が大統領になるなんて考えもしない。ダイナミックな変革をしていく国だ」と発言し、後で「意図するところと違う発言をした」と謝ったそうです。「意図するところと違う」かどうかに関係なく、何をか言わんやです。
 さらに驚いたのは、朝日新聞デジタルに出ていた発言の詳細を見た時です。丸山議員はこう言っています。「例えば、日本がですよ、アメリカの第51番目の州になるということについてですね、憲法上どのような問題があるのか、ないのか。(中略)これはですね、日本がなくなることではなくて、例えば、アメリカの制度になれば、人口比において下院議員の数が決まるんですね。比例して。するとですね、おそらく日本州というのは、最大の下院議員選出数を持つと思う、数でね。上院もですね、州一個とすれば2人ですけれども、日本もいくつかの州に分かれるとすると、かなり十数人の上院議員もできるとなる。これは、世界の中の日本と言うけれども、要するに、日本州の出身が米国の大統領になるって可能性が出てくるようなんですよ」。参院憲法審査会はいつから行列のできる何とかになり下がったのでしょうか。テレビで面白おかしく話すような発言が求められる場ではないはずです。
 それから、この発言から透けて見えるのは、「数こそはすべて」の意識です。数はもちろん大切ですが、政治の目標ではありません。普段から多数派の動向をうかがって、うまいことやっていこうと思っているから、こんな考えになるのだろうかと邪推したくなります。もしそうなら、私たちのことも「数」として利用しようと考えているのかもしれません。同じ朝日新聞朝刊には、マイナンバー制度に引っかけたサラリーマン川柳のことも載っていました。マイナンバーのナンバーとは番号ですが、丸山議員から見れば自分の手持ちの人数ということになるのでしょうか。「日本の有権者数は1億人。国会前のデモはそのうちの何パーセントなんだ?ほぼ数字にならないくらいだろう。こんな人数のデモで国家の意思が決定されるなら、サザンのコンサートで意思決定する方がよほど民主主義だ」とツイートした橋下さんはテレビにお帰りになるそうです。「丸山さんもご一緒にいかがですか」と言いたくなります。

京都3区が軽く見られていませんか?

2016-02-15 20:36:22 | Weblog
 不倫問題で辞職する自民党の宮崎衆院議員の穴を埋める京都3区の補選に関して、茂木自民党選挙対策委員長は「自民党がすぐに候補者を選ぶ、先に行動する、というより、まずは謹慎だ」と述べ、候補者擁立に慎重な考えを示していると、バレンタイン・デーの日、朝日新聞朝刊に書いてありました。ところで「まずは謹慎だ」と言っても、問題は宮崎議員の個人的な女性関係なので、党として謹慎する必要があるのかなと思います。また候補者を立てないことは、京都3区の有権者の声を国会に届ける意思が自民党にはないことを意味していないでしょうか。そもそも、宮崎議員が育休をとると言いだした時、「この人には有権者を代表している意識があるのかな」と思いました。育休をとっている間、京都3区の代表は国会にいないことになるからです。育休ではなく、歳費でベビーシッターを雇うようなことを議論しても良いのではないかと思っていたところ、件の不倫問題が週刊誌にすっぱ抜かれ、今の事態に至っています。宮崎議員といい茂木選対委員長といい、ふたりの言動から感じられるのは、有権者軽視の姿勢です。有権者軽視が「基本的人権の尊重」の軽視につながるようで気になります。

復興の先進地域

2016-02-12 21:18:34 | Weblog
 東日本大震災後、気仙沼に手編みのセーターを作る会社が出来ました。一生もののセーターを地元の人たちが編み、ネットを通じて販売しています。初年度から黒字を出し、気仙沼に雇用を創出するとともに納税もして、復興の後押しをしています。その会社の社長である御手洗瑞子さんは、「気仙沼ニッティング物語」(新潮社刊)で会社立ち上げから事業が地域に根差すまでを綴っています。この本の中に、ハーバード・ビジネススクールの学生が会社のことを調査しにやって来た時のことが書いてあります。学生たちは震災の悲惨さではなく乗り越え方を学びに来たとしつつ、「東北が復興の先進地域として世界に学びを伝えていく可能性をあらためて認識しました」と述べています。この視点は被災した人たちのみならず、私たちみんなを力づけてくれると思います。自分の頑張りに積極的な意味を見出すのと、我慢を強いられていると感じているのでは、雲泥の差があるからです。困難に直面した時、自分はこの困難を乗り越えるパイオニアなんだと思って自らを奮い立たせる、そんな気持ちを持ちたいものです。