2004年、ミシガン州の人口2万2千人の町、ハムトラムクはバングラディシュやイエメンからの移民でイスラム教徒の住民が過半数を占めるに至りました。イスラム教徒たちが礼拝への呼び掛けをスピーカーで流す許可を市に求めてきた際、反イスラムの動きが沸き起こります。一方、「もしイスラム教徒の隣人に表現の自由がないなら、私たちすべてにとっての脅威になる」と支援に回る人も現れます。最終的には住民投票で55%の賛成を得て、モスクを認める条例が生まれました。その後、この町ではいろいろな国からの移民が増え、今では20以上の言語が話されているそうです。
今、町の歴史博物館の運営者はこう語ります。「あらゆるものは変わっていく。それなら、自らコントロールして、変化をよい方向に導くほうがいい。新しい移民を歓迎することで、彼らの中に、単なる住む場所ではなく、自分たちのコミュニティーだという意識が芽生えるのだ。」また、市長は、「異文化間の誤解や様々な問題があっても、ここに住む人々は交わることに価値を見いだし、お互いにどうやって共に生きるかを学んでいる。人々はそのことに誇りを持っている」と述べています。
大統領選ではアメリカ国内の分断が大きく報じられていましたが、この記事を見る限り世界中から移民を受け入れてきたアメリカの懐の深さが垣間見えます。こういった良識が、移民との共生だけではなく、分断の懸け橋になることを期待したいです。(国際面「(9・11から20年)二つの祈りの音、鳴り響く町 イスラム教徒が過半数、探る共生」)
同じ朝刊の紙面に、アフガニスタンのタリバン政権の記事が出ていました。その中に、「暫定政権では、旧政権で『宗教警察』として恐れられた勧善懲悪省も復活した」とあります。「勧善懲悪省」が具体的に何を行う役所なのかは書いてありませんでしたが、名前からして如何にもおっかなそうです。政治権力、軍事力、警察力、そして道徳の泉源をタリバンが一手に握れば、恣意的に何でも出来てしまいます。民主化とは逆に舵を切るわけで、大政翼賛的社会になってしまうなら、そりゃぁ、国外へ逃げ出したいと思う人たちがいっぱい出てくるでしょう。(総合面「タリバン、権力独占 暫定政権33人、反対勢力や女性排除 勧善懲悪省が復活」)
同じ総合面にこんな記事も出ていました。「菅義偉首相が今月下旬に米国を訪問する方向で検討していることがわかった。バイデン米大統領との会談などを視野に入れている。訪米が実現した場合、国連総会に出席する可能性もある。複数の政府関係者が明らかにした。首相は29日投開票の自民党総裁選への立候補を断念しており、総裁交代に合わせ、首相を退く方針。退陣直前の外遊は異例だ。」
八方塞がりで政権を投げ出した身としては、新総裁・新総理誕生の時に、その場にいたくない、アメリカにでも逃げ出すかと思ってのことでしょうか。国内はさておき、国際的にも立つ鳥跡を濁すようなことにならなければ良いのですが。