東京に住んでいて良かったと思うのは、神保町の古書店に行けることです。数日前から何となく源実朝の「金槐和歌集」が読みたくなり、岩波文庫で出ていたものは絶版と知って、休日、神保町の古書店へ出掛けました。こうやって簡単に古書店へ行けるのは、東京のいいところだとつくづく思います。さて、岩波文庫の品揃えが良く、「ここならきっと見つかる」と当てにしていた古書店で空振りし、他でも結局見つからず、「いずれどこかで出くわすのを待とう」と思いながら自転車を漕いで帰りました。何件か古書店を回りましたが、どこでも岩波文庫の赤版や青版に比べて黄版の点数は明らかに少なく、古本として出回る数が少ないのか、あるいはあんまりニーズがないのか、意外に思いました。夕方、子どもと行った近所の区立図書館には「金槐和歌集」が置いてあったので、借りて帰りました。休みの日は飲み始める時間が早くなりがちで、この日も「金槐和歌集」の頁をパラパラとめくりながら安いワインを飲みました。その後風呂上がりにヱビスビールを飲んだら、すっかりいい気持ちになってしまいました。気がつけば、リビングでクッションを枕にすっかり寝込んでしまっていて、「今日は風が涼しくて寝苦しくないなぁ」と思っていたのは、扇風機の風が当たっていたからでした。源実朝の次の歌とはおよそ風情が異なる、夏の日の夜でした。
「夏ふかみ思ひもかけぬうたたねの夜の衣に秋風ぞ吹く」
「夏ふかみ思ひもかけぬうたたねの夜の衣に秋風ぞ吹く」