花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

せめてなりたや、ニワトリに

2019-10-27 23:14:18 | Book
 年に一度くらい椎名誠さんの本が読みたくなる時があります。昭和軽薄体と言われる椎名さんの言葉使いに触れたくなるのは、ナツメロ番組についチャンネルを止めて見入ってしまうのと同じ心性なのかもしれません。

 この土日で読んだのは「さらばあやしい探検隊 台湾ニワトリ島乱入」(角川文庫)でした。この本でも、「わがココロはタハタハ化したのだった」だの、「面白的堕落的卒倒的泥酔人生」だの、「中国のしきりもドアもない非人間的な全身まるだしニイハオトイレ」だの、シーナ節は相変わらず随所で炸裂していました。

 さて、タイトルにある「台湾ニワトリ島」とは、椎名さん一行が滞在した家の庭にノラ化したニワトリがたくさん集まっていたことからきています。通訳氏の説明によると、「メンドリはやがてタマゴを産まなくなると若いうちに人間に食べられます。オンドリも食べられますがまあ好みによりますね。結局雄のニワトリはある程度トシをとるとどうしようもない存在になります。こうして仲間と集まって毎日大きな声で鳴いているしかない」、とのことです。

 説明を受けた椎名さんは、「じっくり聞いているとなんだか切なくなってくる。期せずしてほぼ同じ状況にいるおれたちとニワトリなのだ」と、同類相憐れむ感じになっていきます。

 しかし、このニワトリも椎名さんたちも集まって大きな声を出す仲間がいます。休みの日の日比谷公園などで見かける、ただ時間をつぶしているだけといった風でひとりポツ・ネンとベンチに腰かけている、おじさん、おじいさんに比べれば雲泥の差があります。自分がどうしようもない存在になったとしても、せめてニワトリくらいにはなりたいものだと思いました。

台風余波

2019-10-22 15:14:41 | Weblog
 台風19号による被害は甚大で、復旧がなかなか進まない中、今日の雨も恨めしく思われます。不自由な生活を余儀なくされている方々をニュースで見るにつけ、気の毒に感じながらも、避難所にありながら笑顔で遊ぶ子どもたちの姿はせめてもの慰めとなります。

 さて、9月に台風17号が列島を通り過ぎた後のことです。とある地方の無人駅で、乗り換えのため列車を待っていました。台風余波の影響でダイヤは乱れ、ホームには私を含めたふたりだけ、時間が流れるに任せていました。無人駅のこと、形ばかり改札を抜け駅前の通りに出ても何があるわけでもなく、ホームに戻っても飲み物の自販機を買う気がないままぼんやり見るだけでした。

 ところでこの駅、無人にしてはホームがやたらと長く、ここまで乗ってきた列車は2両編成なのに、湘南新宿ラインにも十分な長さがあるような感じでした。一向に列車が訪れる雰囲気がないので、暇つぶしにホームの端まで行ってみました。舗装された部分が切れても、半ば草むらとなった土のホームがまだまだ続いています。

 ホームの端に明確な区切りはなく、いつのまにか空き地に溶け込んでいました。きびすを返して駅舎の方に戻りかけた時、何と列車が近づいてくるではありませんか。丈のある雑草をよけるのもままならず、構わず踏み倒しながら走って戻って、まさに閉まろうとしているドアに危うく挟まれそうになりながら車内に飛び込みました。

 どこにいようと油断は禁物、台風もローカルの無人駅も違いはないのかもしれません。ただ、自然の脅威は往々にして人間の備えを上回ります。今日は冷たい雨が降っています。木枯らしの季節、雪の季節に変わる前に、日常生活が戻ってくることを願うばかりです。

秋のみぞ多かる

2019-10-12 02:19:52 | 季節/自然
 徒然草・第十九段から。
 「やうやう夜寒になるほど、雁鳴きてくる比、萩の下葉色づくほど、早稲田刈り干すなど、とり集めたる事は、秋のみぞ多かる。」
 「とり集めたる事は、秋のみぞ多かる」、秋はやるべきことが多くて、しかも一時期に集中すると兼好法師はおっしゃっています。もし今の世にいらっしゃれば、早稲田の刈り取りや日に干す作業のほかに、台風来襲に備えた買い出しや家の戸締り確認を加えられるのではないでしょうか。
 さておき、何事もなく台風が通過していくよう祈ります。