霜後桃源記  

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「みんなで考える」とチャットGPT

2023-06-18 22:03:17 | 社会
    藻谷浩介氏のデータを駆使した主張は、いつも説得力があって分かり易い。
   今朝の毎日新聞「時代の風」も傾聴に値する内容だった。
  チャットGPTの問題点指摘も大変興味深かった。

 (タマネギに続きニンニクも収穫)

「みんなで考える」日本 人口減、乗り切れるのか
=藻谷浩介・日本総合研究所主席研究員(毎日新聞「時代の風」2023.6.18)

 続々と現れるさまざまな社会課題をどう受け止め、どう対処するか。常に
自問するのは、「その現実認識と対処策を『宇宙人』に説明したら納得する
のか?」ということだ。「宇宙人」はもちろんたとえで「世の空気から自由
で、事実関係や自分の利害得失を客観的に、ドライに把握できる存在」だと
認識されたい。
 そうした「宇宙人」の対極が、最近話題の、文章を生成する人工知能だろ
う。何かテーマを与えると、インターネット空間にある膨大な文字情報を
参照し、日本語の文章に要約してくれる。特に条件をつけない限り、言葉を
世間で多用される語順と用法でつなぐので、すんなり読める。
 だがその中身が、客観的で正しいとは限らない。仮に、この人工知能が
中世にあれば「地球は平面」と答えただろう。1945年7月に運用されていれば
「一億玉砕の覚悟であれば日本は必ず勝つ」とし、「竹やりでB29を落とす
方法」を教えてくれたに違いない。
 つまるところ、この人工知能は、意見の取りまとめの天才だが、情報の真偽
の判定はできない。客観と主観を区別できる「宇宙人」ではないのだ。だから
こそ「自分で考える力はない」と指摘されている。ただ、「自分で考えない」
のは人工知能だけだろうか。
 解剖学者で東大名誉教授の養老孟司氏は、最近の筆者との対談で「日本人は
小さいときから、学校でも社会でも『みんなで考えましょう』と教育されてき
ました。でも、どうやって『みんなで考える』のでしょうか。動作ならみんな
で合わせることはできますが、『考える』のは一人一人でしかできないこと。
つまり『みんなで考える』とは、『自分では考えず、みんなの考えに合わせ
る』ことでしょう」と語った。
 その通りだ。「みんなで考える」ことが、多数派の意見を自分の考えとして
取り入れることならば、人工知能のやる作業と本質は同じである。そもそも日
本の教育自体が真偽を判定する能力を鍛えず、「正解」とされるものや解法を
暗記させるばかり。いや、日本だけではない。中国やロシアはもとより、世界
中に「みんなで考える」人が充満しているのではないか。
 岸田文雄政権が「異次元の少子化対策」を打ち出した。日本の出生者数が
第2次ベビーブーム後、減り始めてから約半世紀。4割程度に減ったのを受け、
ようやくこれは大問題なのだと「みんなが考え」始めたようである。
 だが、その財源の生ぬるい議論を見ていると、事態の深刻さについて、
やっぱり「みんなはあまり考えていない」ようだ。過疎地を見れば明らかだ
が、人口が減れば需要と労働力が減り、企業は苦しむ。そうであれば、旧来型
の「景気対策」の予算を十数兆円削り、出産や子育て、高等教育の無償化に回
すのが筋ではないか。
 2010年刊行の拙著「デフレの正体」で、経済低迷の主因は少子化だと指摘。
少子化対策と賃上げ政策が最優先だと説いた。しかし12年末に政権に復帰した
安倍晋三氏は、同じ「異次元」でも、金融緩和というまったく見当違いの策に
全力を投じ、退陣後も亡くなる間際まで、同書の内容を公の場で批判し続けて
いた。
 それでも彼には自身の信念があった。それに対し、政官財界や言論界の多く
は「みんなで考え」、漫然と偏った政策に従い、乏しい成果を漫然と受け入れ
ただけなのではないか。だから彼らは「異次元の少子化対策」に対しても「み
んなで考え」、漫然と成果の出ない対応を繰り返しそうだ。
 新生児が半減以下になったからには、総人口もいずれは半減以下になる。
移民頼みも難しい。17年と22年の0~4歳児の人口を比べると、中国や欧米のみ
ならず、東南アジアやインド、ラテンアメリカまでもがマイナスになっている
(国連経済社会局人口部の中位推計)。今の乳幼児は近未来の若者だ。若者が
既に減っているタイや中国は、労働者を日本に出さなくなって久しいが、他の
アジア諸国も早晩、これに続く。
 状況の抜本的な改善は「みんなで考える」教育が改められ、「宇宙人」のよ
うな客観性を備える世代が登場する先になるのではないか。人口減はマンパワ
ーや規模の利益も深刻に減らすが、経済は大打撃でも地球環境には優しいと
信じ、順応するしかない。=毎週日曜日に掲載 
コメント
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