shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

This Is It (Pt. 1) / Michael Jackson

2009-12-16 | Rock & Pops (80's)
 マイケル・ジャクソンが今年の夏に行われる予定だったロンドン公演に向けて、急死する直前まで行っていたリハーサル風景とその舞台裏の映像を中心に構成されたドキュメント映画「ディス・イズ・イット」の DVD が来年の1/27に発売される。私にとって映画は基本的にレンタル DVD で借りてきて家で見るものなので、先月国内封切りされている時も “もう少し待てばDVDで見れる...” と考え、映画館へ足を運ぶことはなかった。そんなある日、ネットで彼の97年ヒストリー・ツアーにおけるベスト・パフォーマンスとの呼び声も高い “ミュンヘン・ライブ” の DVD を格安で見つけ、しかもそのセラーがオマケとしてタダでこの「ディス・イズ・イット」のロシア語字幕ヴァージョン(←正式発売前のロシア向けPromotional Copy) DVD-R を付けてくれるということで早速ゲット、時折インタビュー映像の場面で画面下部にロシア語の字幕が現れるが映画の大半はステージ・リハーサルのダンス・シーンなので気にならない。
 この映画はバックダンサーたちのインタビューで始まる。みんなマイケルと踊れることが嬉しくて大コーフンしているのが伝わってくる。「ワナ・ビー・スターティン・サムシン」ではシルバーのジャケットにオレンジのパンツといういかにもリハーサルっぽいラフな格好で歌い踊るマイケルがかえって新鮮に映る。そしてその動きのシャープさにビックリ(゜o゜) しかもあくまでも軽やかに、スルスルと横滑り(!)していくその姿は人間ワザとは思えない素晴らしさだ。ここ数年、大きなマスクを付けて顔にバンソコウを貼り弱々しく歩くマイケルの姿を見るたびに “もうあの神業のような動きは見れへんのやろか...(>_<)” と思っていたが、それはとんでもない誤解で、とても50才とは思えないキレの良さだ。バックを務めるベーシストに “もっとファンキーに...” と自分の求めるサウンドを口ベースで伝えるマイケルの徹底したプロフェッショナルぶりが凄い。
 まるで「コーラスライン」みたいなバックダンサーたちのオーディション・シーン、「ジャム」でそのダンサーたちがステージ下から飛び上がってくる舞台裏、「ゼイ・ドント・ケア・アバウト・アス」でダンサーたちにマイケル自ら振り付けの指導をするシーン、「ヒューマン・ネイチャー」でテキパキとまわりに指示を与えながらステージを作っていくシーン... 彼のライブは DVD で何十回と見ているのでその動きは私の脳裏に刻まれているが、あのパーフェクトといえるステージがどのようにして練り上げられていったのかが実によく分かる映像だ。彼こそまさに “120%の努力をする天才” だと思う。
 「スムーズ・クリミナル」でのダンスは相変わらず絶品だし、「ザ・ウェイ・ユー・メイク・ミー・フィール」で自分が納得いくサウンドになるまでキーボードにテンポの微妙なニュアンスまで注文を出すシーンなんか一切の妥協をしないプロ中のプロという感じだ。しかも厳しさの中にも相手への配慮というか優しさが言葉の端々に感じられて、マイケル、バック・ミュージシャン、ダンサー、そして様々な演出担当のスタッフが一つになって良いものを作り上げようというポジティヴな姿勢が伝わってくる。
 「ジャクソン5・メドレー」のシーンでは “まるで耳の中に拳を入れられてるようでやりにくい” と言ってイヤフォンを外してしまう。モニター・スピーカーで音を聴きながらやってきたマイケルにとっては耳のアジャストが大変なのだろう。そういったサウンド・エンジニアへの細かい指示の言葉の最後に “With love...L・O・V・E.” (怒ってるんじゃないよ)と一言添えるマイケル... この人はプロとしての厳しさと同時に常に相手を思いやる優しい心の持ち主なんだなぁと改めて感じ入った。(つづく)

Michael Jackson 'This Is It' Official Movie Trailer

In The Court Of The Crimson King / King Crimson

2009-12-15 | Rock & Pops (70's)
 9月から約3ヶ月半、年間の1/3弱を連続してビートルズ関係の盤ばかり取り上げて勝手に盛り上がっていたのだが、ほとんどビートルズ一色だった中で細々と(笑)他の音楽も聴いていた。そんな中で最大の収穫は、あの一度見たら忘れられないエグいジャケットで有名なキング・クリムゾン衝撃のファースト・アルバム「クリムゾン・キングの宮殿」の UK ファースト・プレス、通称 “ピンク i レーベル” 盤(マト番 A2/B2 )をついにゲットしたことだった。
 このアルバムを買うのはこれで4枚目で、初めて買った日本盤 LP はモコモコしたトホホな音だったし、次に大いなる期待を抱いて買った日本盤紙ジャケ CD はゴールド CD であるにも関わらず(←私はこれまで音の良いゴールド CD を聴いたためしがない...)、普通の CD と大して変わらん音質で、当時リマスタリング技術で一歩先を行っていたジャズの CD 並みの音を期待していた私には物足りないものだった。
 ところが2005年に発売された “オリジナル・マスター・エディション” と呼ばれるリマスター CD は音が全然違うということで、騙されたと思って私も買ってみたのだが、そのクリアーで生々しい音にビックリ(゜o゜) それはそれまで自分が聴いてきた「宮殿」は一体何やってん!と言いたくなるぐらいの鮮烈なサウンドで、音の情報量も段違いだった。色々調べてみると、この世紀を揺るがす大名盤のオリジナル・マスターはあろうことか紛失して行方が分からず、“ピンク・リム・パーム・トゥリー・レーベル” と呼ばれるセカンド・プレス(島の絵のレーベルです)以降はコピー・マスターが使用されていたとのこと。それだけが原因ではないだろうが、どうりで高音の伸びがイマイチなわけだ。要するにリマスタリング技術云々ではなく、元々のマスター・テープの音質の差があまりにも大きかったということなのだが、その “紛失” したオリジナル・マスター・テープがアイランド・レコードではなく何故かヴァージンの倉庫から出てきたというから一体何がどーなっているのかワケがわからない...(>_<)
 とにかくこの圧倒的高音質の “オリジナル・マスター・エディション” CD で「宮殿」に関しては決着がついたと喜んでいたのだが、ある日ふと “ CD でこんだけ素晴らしい音がするっちゅーことは UK ファースト・プレスのオリジ LP はもっと凄いんちゃうか...” などと余計な好奇心がムクムクと湧き上がり、 eBay やヤフオクでチェックする日々が始まった。しかしその相場は安くても1万円台後半、状態の良い物は軽く3万円を超えてビッドが殺到するという修羅場の連続で、ヘタレな私はいつも指をくわえてただ眺めているばかりだった。
 そして先月、ついに eBay で格好の獲物を見つけた。表示は VG+ ながら、写真で見る限りそれほど状態は悪くなさそうだったので、今年1年の自分へのご褒美(笑)の意味も込めて一気に勝負に出て £63.00でゲット、送料込みでも約1万円というのだからもう嬉しくてたまらない(^o^)丿 早朝5時起きでスナイプが成功した日は睡眠不足も何のその、大コーフンして仕事が手につかず、同僚に大笑いされたものだった。
 約2週間して届いたブツは梱包に激しくダメージを負っていた(←海外からLPを買う時はコレが一番のネックやね... >_< )が中身は何とか無事で一安心。「スキッツォイド・マン」のド迫力でありながらどこまでもナチュラルなサウンドは圧巻だし、「風に語りて」のフルートもエエ感じ。「エピタフ」のフォルティッシモなんてゾクゾクしてしまうし、「クリムゾン・キングの宮殿」におけるメロトロンの響きなんかアナログの良さを存分に味わえる素晴らしいものだ。「ムーンチャイルド」の静かなパートではプチプチ・ノイズが入るも十分許容範囲でコスト・パフォーマンスは抜群に高かった。
 ノイズレスでディテールまで楽しめる究極の “オリジナル・マスター・エディション” CD と、家宝ともいえる “ピンク i レーベル” LP 、今度こそ私の「宮殿」は完結と言いたいところだが、果たしてどーなることやら...(笑)

King Crimson - In The Court Of The Crimson King

John Lennon Anthology (Disc 4)

2009-12-14 | John Lennon
 Disc-4 “ダコタ” はジョンのハウス・ハズバンド時代後半の2年間にホーム・レコーディングされたデモ音源と「ダブル・ファンタジー」セッションのアウトテイクスで構成されている。①「アイム・ルージング・ユー」は他の「ダブル・ファンタジー」収録曲とは激しく一線を画すエッジの効いたシャープなサウンドにビックリ(゜o゜) それもそのはずで何故かこのヴァージョンだけチープ・トリックのメンバーを起用しているのだ。このストレートなロック・サウンドを聴いて思うのは、「ダブル・ファンタジー」がヨーコとの共作という形態ではなく全曲こんな感じのロックだったらどんなに良かったかということ... まぁ今更言ってみてもしゃあないが、それほどこのヴァージョンは素晴らしい(^o^)丿
 ③「サーヴ・ユアセルフ」はジョンが激しくアコギをかき鳴らすホーム・レコーディングで、ディランへの返答歌とのこと。ディランの盤は持ってないので何とも言いようがないが、かなりアグレッシヴなトラックだ。④「マイ・ライフ」は「スターティング・オーヴァー」のデモで、まだ曲のアイデアを探っているような感じがする初期ヴァージョンだ。⑤「ノーバディ・トールド・ミー」は「ミルク・アンド・ハニー」収録ヴァージョンよりもジョンのヴォーカルが活き活きと躍動感に溢れ、自由闊達な感じがしてめっちゃエエ感じ。エンディングがブチッと切れてしまうのが残念だ。⑥「ライフ・ビギンズ・アット・40」はジョンがリンゴのために書いたカントリー調のナンバーで、リズムボックスをバックにアコギの弾き語りで歌っている。
 ⑦「アイ・ドント・ウォナ・フェイス・イット」はノリの良いロック・ナンバーで、ジョンにはこんな感じのストレートなロックをもっともっと聴かせてほしかったというのが正直なところ。スティーヴ・ミラーみたいなドライヴ感溢れるギター・サウンドが印象的だ。⑧「ウーマン」はリズムボックスをバックにアコギの弾き語りで歌うヴァージョンで、そのシンプルの極みのようなサウンドからそこはかとなく漂ってくる哀愁がたまらない(≧▽≦) ⑨「ディア・ヨーコ」ではバディ・ホリーのしゃっくり唱法で軽やかに歌うジョンが面白い。⑩「ウォッチング・ザ・ホイールズ」はアコギ弾き語りによるホーム・レコーディングだが、私は本テイクよりもアップテンポで駆け抜けるこっちの方が好きだ。この手の秀逸な別テイクを集めてジョン曲だけで “ダブル・ファンタジー・アンプラグド” としてリリースしたら売れそうな気がするのだが...(^.^)
 ⑪「アイム・ステッピング・アウト」は冒頭のセリフが入ってない別テイクで、「ミルク・アンド・ハニー」収録ヴァージョンに比べると何となく物足りない感じがするのは否めない。⑫「ボロウド・タイム」はアコギ弾き語りによるホーム・レコーディングで、曲としてはやや単調に響く。⑬「ザ・リシ・ケシュ・ソング」はジョージのインド趣味をおちょくった歌で、CD解説には “皮肉った” とあるが、私の耳にはネガティヴな響きはなく、ただふざけて作ったようにしか聞こえない。本当のところはどーなんやろ?ジョージの「ブロー・アウェイ」の歌詞とメロディーがそのまんま出てくるところがジョンらしくて好きだ(笑)。
 ⑮「ビューティフル・ボーイ」はジョンの歌声が本テイクよりも優しさに溢れ、父親としての愛息への想いがダイレクトに伝わってくる微笑ましいヴァージョンだ。⑰「オンリー・ユー」はオリジナルのプラターズであれリンゴであれ正直言って苦手な曲だったのだが、このジョンのヴァージョンだけは別。もう何度でも聴きたくなるような魅力溢れる歌声だ。苦手曲を愛聴曲に変えてしまうヴォーカリスト、ジョン・レノン恐るべしだ(>_<)
 ジョンが優しい歌声で “これから一緒に歳を重ねていこう...” と歌う⑱「グロウ・オールド・ウィズ・ミー」はビートルズ・ファンなら涙なしには聴けない大名曲だが、ここで聴けるのはジョンの遺したテープに何とあのジョージ・マーティンがストリングスをオーヴァーダビングして完成させたニュー・ヴァージョン!ただでさえウルウルきてしまう曲に加えて更に涙腺を刺激するストリングス・アレンジはマーティン先生の見事な仕事という他ない。⑲「ディア・ジョン」はジョンが最後に書いた曲だそうで、自分自身への励ましのメッセージのように響く。 “そんなに頑張らなくていいよ。たまには息抜きも必要だ。人生は駆け抜けるものじゃない。” という歌詞がたまらなく好きだ。
 ということで12月に入って始めた “ジョン・レノン・ウイーク” は既に取り上げた「ロックンロール」を除く70年代のオリジナル・アルバムを1週間で制覇するつもりが結局「アンソロジー」まで含めて2週間もやってしまったが、一応これで終了ということで... いつものことながら計画性もへったくれもないブログやね(笑)。明日からどないしよ~(>_<)

john lennon grow old with me

John Lennon Anthology (Disc 3)

2009-12-13 | John Lennon
 Disc-3 “ザ・ロスト・ウイークエンド” は「ウォールズ & ブリッジズ」と「ロックンロール」セッションのデモ & アウトテイクスで構成されている。「ウォールズ & ブリッジズ」はジョンのアルバムの中ではターンテーブルに乗る回数が一番少なかったとこの前書いたばかりだが、不思議なことにこの「アンソロジー」収録の別テイク群はスーッと心に入ってくる。私が馴染めなかったのはアメリカ的なアレンジやAORっぽいサウンドだったので、私的にはそういった装飾を施される前のシンプルなテイクと出会えただけでもこのDisc-3 は価値がある。①「ホワット・ユー・ゴット」はホーム・レコーディングによる超シンプルなアコギの弾き語りだが、まるでジョンが独り言を呟いているかのようなトラックだ。②「ノーバディ・ラヴズ・ユー」はストリングス類が入っていない別テイクで、シックな公式テイクと甲乙付け難い名唱が聴ける。曲もヴォーカルもそのすべてが素晴らしい、ジョンの隠れ名曲といえるだろう。
 「ホワットエヴァー・ゲッツ・ユー・スルー・ザ・ナイト」は38秒のホーム・レコーディング③をイントロにして同曲のリハーサル・テイク④が聴けるが、エルトンが入っていない分ジョンのヴォーカルが存分に堪能できるし、シンプルな楽器構成も良い。これでピアノがエレピじゃなかったら最高なのに...(←生理的にエレピの軽薄な音が嫌いですねん!) ⑧「スケアード」は公式ヴァージョンよりも遥かにシンプルかつ重厚で、グッと迫ってくるものがある。この「アンソロジー」にはそういった別テイクが数多く収録されており、特に「ウォールズ & ブリッジズ」に関してはどうしてもこっちを聴いてしまう。
 ⑨「スティール・アンド・グラス」は姉妹曲(?)の「ハウ・ドゥー・ユー・スリープ」同様、やっぱりストリングス入りの方が雰囲気が出ていて良いように思う。⑩「サプライズ・サプライズ」はエンディング部分の「ドライヴ・マイ・カー」アレンジはまだ無いが、ジョンの歌声は力感に溢れており、これはこれでエエ感じだ。⑪「ブレス・ユー」は別テイクながら公式テイクとそれほどの違いは感じられない。どっちにしてもサビのメロディーを聴くとストーンズの「ミス・ユー」を思い浮かべてしまう(>_<) タイトルもソックリやし、やっぱりミックがパクッた、というか拝借したような気がする。(24)「オールド・ダート・ロード」は本テイク同様、私にはちょっと薄味というか大人しすぎてあまり楽しめない。これは曲の善し悪しではなく、私が苦手とするタイプの楽曲なので仕方がない。
 ⑬「ムーヴ・オーヴァー・ミズ・L」は「ニューヨーク・シティ」の気分で「スリッピン・アンド・スライディン」を演ったかのような公式ヴァージョンが圧倒的に素晴らしいが、この別テイクもかなりの出来だ。要するにこの曲が本質的に持っているノリの良さがジョンのロックンロール・スピリットに火をつけるのだろう。こんなカッコイイ曲なのにアルバム未収録でシングルのB面に甘んじているというのが不憫でならない。
 ジョンのソロ作品中私が最も好きなアルバム「ロックンロール」からの音源はどれもこれも聴き応え十分だ。ブラッシュを擦る音の後、ジョンのカウントで始まる⑥「ビー・バップ・ア・ルーラ」のカッコ良さは筆舌に尽くし難い。ロックンロールを歌うために生まれてきた男、ジョン・レノンの真骨頂が聴ける名唱だ(^o^)丿 ⑦「リップ・イット・アップ / レディ・テディ」はあの豪快なホーン群が入る前のヴァージョンだが、このままでも十分通用する熱いヴォーカルが素晴らしい。 “リトル・リチャードといえばポール” のイメージがあるが、どうしてどうして、ジョンだって “リトル・リチャード好き” を全開にしてロックしている。その最たるものが⑮「スリッピン・アンド・スライディン」で、⑦と同様にまだホーン群は入っていない別テイクなのだが、そんなのカンケーネェ!とばかりに疾走するジョンが圧巻だ。ピアノの連打(←こーゆーの大好き!)もスリリングで名演度アップに拍車をかけている。
 ⑯「ペギー・スー」はバンドが一体となって火の出るような勢いで突っ走るところが最高だが、わずか1分強で終わってしまう理不尽さが悲しい。コレはもっともっと聴きたかった...(>_<) ⑰「ブリング・イット・オン・ホーム・トゥ・ミー / センド・ミー・サム・ラヴィン」もホーン抜きのテイクで、変にアレンジせずにストレートに歌っているところがいい。(22)「ビー・マイ・ベイビー」はフィル・スペクターを起用して破綻したLA セッションからの音源で、「ルーツ」で耳ダコとはいえ、何度聴いても重苦しいだけのヴァージョンだ。せっかくの名曲が拷問に耐えているように響く。(23)「ストレンジャーズ・ルーム」は後に「ダブル・ファンタジー」に収録されることになる「アイム・ルージング・ユー」の原型で、1980年のホーム・レコーディングながら、この時期の体験を元にして出来た曲だからという理由でここに入れられたという。ヨーコによる判断だが、何となく居心地の悪さを感じてしまうのは私だけかな?

EARLY TAKE - Be Bop A Lula

John Lennon Anthology (Disc 2)

2009-12-12 | John Lennon
 Disc-2 “ニューヨーク・シティ” には「サム・タイム・イン・ニューヨーク・シティ」~「マインド・ゲームズ」の頃のアウトテイクスと、この時期に出演したコンサートのライブ音源が収録されている。①「ニューヨーク・シティ」はホーム・レコーディングによるわずか56秒のアコギ弾き語りで、あっけなく終わってしまうので不完全燃焼もいいところ。本テイクが素晴らしいだけに、それに迫るような別テイクを期待していたのだが...(>_<) ②「アッティカ・ステイト(ライブ)」と③「イマジン(ライブ)」の2曲はアポロ・シアターにおけるチャリティー・コンサートのライブ録音で、どちらもかなり充実した歌と演奏だ。特にアコギ弾き語りによる③はピアノ主体の公式ヴァージョンとは又違った深い味わいがあり、グッと胸に迫ってくる。
 ④「ブリング・オン・ザ・ルーシー」はラフなリハーサル・テイクながらジョンは結構ノッていて、自らを鼓舞しながら(12~24秒あたり)実に気持ち良さそうに歌っている。「ウーマン・イズ・ザ・ニガー・オブ・ザ・ワールド」は⑤がホーム・レコーディングによるわずか39秒のアコギ弾き語りで、「ワン・トゥ・ワン・コンサート(昼の部)」での同曲ライブ・ヴァージョン⑦のイントロ的な扱いだ。このコンサートからは続く⑧「イッツ・ソー・ハード(ライブ)」、⑨「カム・トゥゲザー(ライブ)」と3曲連続で収録されているが、そのどれもがアルバム「ライブ・イン・ニューヨーク・シティ」収録の夜の部よりもジョンの出来が良いように思う。特に⑨ではアドリブで “ストップ・ザ・ウォー!” と叫ぶなど気分の面でもノッており、何でこっちを単独で出さんかったのか不思議なくらいだ。
 ⑩「ハッピー・クリスマス」は公式ヴァージョンのラフ・ミックス、つまりテイクは同じで最終的なお化粧がまだ済んでいないというだけの違いなので特に目新しさはない。似通った曲想の次曲⑪「ラック・オブ・ジ・アイリッシュ(ライブ)」へのつなぎとして入れたのだろうか? その⑪は⑫「ジョン・シンクレア(ライブ)」と共にミシガン大学で行われたジョン・シンクレア救済コンサートからのライブ音源で、その政治的な歌詞とアコギ主体のサウンドは60年代のフォーク・フェスティバルを思い出させるが、ジョンのヴォーカルは凡百のフォーク・シンガーとは次元の違う説得力を持って激しく迫ってくる。
 ⑭「アイ・プロミス」と⑮「メイク・ラヴ・ノット・ウォー」は共に「マインド・ゲームズ」の原曲と呼べるもので、元々は曲の断片のような⑭(←まだ最終形の面影は殆どない...)があり、その “ラヴ イズ ジ アンサ~♪” の部分を核にして曲を発展させていったのが⑮(←ラフだが構成はかなり最終形に近い...)という感じだろうか。とにかくジョンの曲作りの一端が垣間見れて非常に興味深いトラックだ。
 ⑯「ワン・デイ・アット・ア・タイム」は派手な女性コーラスの入っていない素朴そのもののリハーサル・テイクで、若干テンポを落として1オクターブ低い声で歌い、ギター・ソロのフレーズをハミングするジョンがめちゃくちゃ渋くてカッコイイ(≧▽≦) この声こそが私をジョン・レノン狂いにした張本人で(笑)、装飾過多な公式ヴァージョンよりも遥かに魅力的に響く “ネイキッドな” ヴァージョンだ。⑰「アイ・ノウ」もシンプルなホーム・デモだが、超素晴らしい⑯の次に聴くとどうしても印象が薄くなってしまうのはしゃあないか。
 ⑱「アイム・ザ・グレイテスト」と⑲「グッドナイト・ヴィエナ」の2曲は共にジョンがリンゴのアルバム用にプレゼントした曲だが、ここではジョンがリンゴのためにガイド・ヴォーカルを歌っているヴァージョンが収録されており、リンゴには悪いがジョンが歌うことによって曲の良さを極限まで引き出しているように感じられる。この2曲は本当に素晴らしい!特にまるで初期ビートルズのようなハンド・クラッピングの入ったウキウキするような⑲は個人的にはこのボックス・セットの中でも1・2を争うほどの愛聴トラックだ。
 (22)「リアル・ラヴ」はあの “アンソロジー・プロジェクト” の目玉とでも言うべき再結成シングルのベースになった “テイク1” とは微妙に違う “テイク4” というのが嬉しい。幽玄の美を湛えたようなジョンのピアノ弾き語りによるこのヴァージョンにはただただ涙ちょちょぎれる。(23)「ユー・アー・ヒア」は本テイクと甲乙付け難い素晴らしいヴァージョンで、ジョンのヴォーカルだけに限って言えばこっちの方がより優しさに溢れていて良いかもしれない。他のアーティストとは違い、ジョンの場合はあれこれアレンジを凝らすよりも何も考えずにシンプル&ストレートに歌ったデモやリハーサル・テイクの中にこそ宝が潜んでいることをこのボックス・セットが如実に物語っているように思う。

John Lennon - Goodnight Vienna - A Extended Mix



John Lennon Anthology (Disc 1-Pt. 2)

2009-12-11 | John Lennon
 Disc-1 “アスコット” の後半は「イマジン」セッションが中心だ。名曲⑨「イマジン(テイク1)」は公式ヴァージョンには入っていないオルガンやハーモニウムでゴテゴテと着飾った、いかにもスペクターらしいサウンドで、私の耳にはそれらがジョンのヴォーカルの邪魔をしているように感じられる。スペクターという人はロネッツやクリスタルズといった一連のフィレス・レーベルの作品は言うまでもなく、「マイ・スウィート・ロード」や「インスタント・カーマ」のようにツボにハマるととてつもない大傑作を生み出すが、その一方でアルバム「レット・イット・ビー」のように装飾過多なサウンドでロック色が薄まってしまう(←ロックに拘らない一般ピープルにはかえって聴きやすいかもしれないが...)危険性をも孕んでおり、まさに両刃の剣のようなプロデューサーだと思うのだが、このテイク1は後者の印象を受ける。ジョンのヴォーカルに限って言えば、心に沁み入るような瑞々しい歌声で説得力抜群なだけに余計に残念だ。
 ⑪「ベイビー・プリーズ・ドント・ゴー」はアルバム「サム・タイム・イン・ニューヨーク・シティ」収録のザッパとの共演ライブでゾクゾクするようなヴォーカルを聴かせてくれたジョンだが、これは実に貴重なスタジオ録音ヴァージョンで、エッジの効いたシャープなリズム・ギターといい、スリリングなヴォーカルといい、ジョンの本気度を雄弁に物語る。未発表だったのが信じられないくらいのクオリティーの高さだ。⑫「オー・マイ・ラヴ」はドラムレスのリハーサル・テイクで、ややかすれ気味のジョンの歌声が湛えている優しさがじんわりと感じられて癒される。実に素朴な味わいのヴァージョンだ。
 ⑬「ジェラス・ガイ」はストリングスが入ってない分、より自然で生々しいサウンドになっており、ニッキー・ホピキンスのピアノやジム・ケルトナーのドラムも活き活きとダイナミックに響いてこの曲の新たな魅力を実感させてくれる。私的には公式テイクより断然こっちの方が好きだ。⑭「マギー・メイ」はわずか53秒のトラックで、曲と曲の繋ぎというか効果音的に使われているのだが、なぜ1979年のホーム・レコーディングをここに収録したのかは意味不明だ。
 ⑮「ハウ・ドゥー・ユー・スリープ」はまだストリングスが入る前のテイクでジョージのスライド・ギターが実にエエ味を出しているのだが、攻撃的な歌詞を持ったこの曲にはあのスペクター・アレンジのおどろおどろしいストリングスが実に効果的だったことをこのシンプルなヴァージョンが逆説的に証明しているように思う。⑯「ゴッド・セイヴ・オズ」は廃刊の危機にあったアングラ雑誌「オズ」を支援するためのシングル用にジョンが書いた曲で、これはリード・ヴォーカルのビル・エリオットのためにジョンが歌ったガイド・ヴォーカル・ヴァージョン。いかにも “ファイト一発!” といった感じのやや単調な曲ながら、勢いだけで聴かせてしまうような歌と演奏になっており、サウンド的にはアルバム「サム・タイム・イン・ニューヨーク・シティ」に近い雰囲気だ。⑰「ドゥ・ジ・オズ」は全編を通して気色悪い魔女の断末魔が入っているのでパス。こんなん聴きたくない(>_<) 
 ⑱「アイ・ドント・ウォント・トゥ・ビー・ア・ソルジャー」は実にハード・ドライヴィングな演奏で、そのパーカッシヴなサウンドは穏やかなイメージのアルバム「イマジン」の中では思いっ切り浮いてしまうだろう。こういう異色のヴァージョンが聴けるのがこのボックス・セットの面白いところだ。⑲「ギヴ・ピース・ア・チャンス」はレコーディング前のリハーサル音源で、ジョンが参加メンバーにアレコレと指示している様子がわかる。歌や演奏がどうのこうのというよりも、一つの記録としてこのボックス・セットに収録されたのだろう。
 ⑳「ルック・アット・ミー」はアコギによる弾き語りで、そのシンプルな味わいは公式テイクとはまた違った魅力に溢れている。ジョンの素朴そのもののヴォーカルが絶品だ。(21)「ロング・ロスト・ジョン」は歯切れの良いアコギのリズム・カッティングがめっちゃ気持ちいいノリノリのナンバーで、リンゴのタイトなドラミングが生み出す躍動感溢れるリズムをバックにジョンの闊達なヴォーカルが楽しめる。このように魅力的なテイクが満載のこのボックス・セット、今では中古なら5,000円弱で手に入るようなので、ジョンのオリジナル・アルバムを聴き込んだファンなら絶対に “買い” でっせ(^o^)丿

John Lennon - "Baby Please Don't Go"

John Lennon Anthology (Disc 1-Pt. 1)

2009-12-10 | John Lennon
 1990年代半ばにビートルズ自身の手によってその歴史を音と映像で残そうという “アンソロジー・プロジェクト” により CD やビデオが怒涛の如くリリースされてビートルズ・ファンを狂喜させたが、それらが一段落したのも束の間、今度はジョンのホーム・レコーディングやリハーサル・テイクといったいわゆる未発表音源を時系列に沿って編集した究極の4枚組ボックス・セットが発売された。それがこの「ジョン・レノン・アンソロジー」で、 “アスコット” 、 “ニューヨーク”、 “ロスト・ウイークエンド” 、 “ダコタ” の4つのパートに分けられている。私は当初、この企画がかなりヨーコ色の強いものになるのではと危惧していたのだが、実際に聴いてみるとそれは全くの杞憂に終わった。その大半がアウトテイクということもあってか、飾らない素のジョンの歌声が実に生々しく、ファンとしては涙ちょちょぎれる内容なのだ。
 まずDisc-1 の “アスコット” だが、「ジョンの魂」~「イマジン」期のアウトテイクスが中心で、最終形ヴァージョンとはかなり異なる初期テイクが多くてめっちゃ面白い。①「ワーキング・クラス・ヒーロー」はジョンのアコギ弾き語りで、本テイクに迫るくらいの完成度を誇るかなりクオリティーの高い歌と演奏が楽しめる。メロディー・ラインのアレンジが公式テイクとは微妙に違っているのも聴き所。ジョンが様々なトライを重ねていた様子が垣間見える貴重なトラックだ。②「ゴッド」はピアノの入っていないギター、ベース、ドラムスというシンプルなフォーマットのリハーサル・テイクだが、ある意味ではあの衝撃的だった公式テイクよりも強烈かもしれない。若干速めのテンポで “信じないっ♪” を連呼するうちにノッてきたジョンが勢いに任せて一気呵成に歌い切る。公式テイクのような細かいアレンジがまだ出来てない分、あれこれ考えを巡らせることなく本能の趣くままに言葉の速射砲を連発するジョンのヴォーカルに圧倒される。
 ③「アイ・ファウンド・アウト」はエレキ・ギターによる弾き語りで、まだプリ・プロダクションの段階と言えるようなラフな歌と演奏だ。これも②と同様にジョンが何も考えずに心の中にあるものをストレートに吐き出しているような感じがする。④「ホールド・オン」はわずか43秒という短いトラックだが、公式テイクとは全く違うウキウキするようなリズムに乗って軽やかな歌声を聴かせるジョンがたまらなく好きだ。肩の力の抜けた名唱とはこういうのを言うのだろう。コレ、もっともっと聴きたかったなぁ...(>_<)
 ⑤「アイソレイション」は演奏の途中で一旦中断し、再開する様子が丸ごと収められているが、その間のジョンと他のメンバーとのやり取りが微笑ましくもリアルで、“ごめん、ミスった...(>_<)” と謝るリンゴに対し “よくあることさ、もう一回やろう!” と答えるジョンの優しさに満ちた声がたまらない。恥ずかしい話だが、このトラックは歌よりもこのジョンの喋りに萌えてしまう(≧▽≦) ⑥「ラヴ」はピアノ伴奏による公式テイクとは違うアコギの弾き語りヴァージョンで、双方とも甲乙付け難い素晴らしさだ。途中ミスると鼻を鳴らして中断し、“ギターに集中しなきゃ...” と自らに言い聞かせて再開するところなんかも生々しくってエエ感じだ。
 ⑦「マザー」は重厚にして鬼気迫る公式テイクとは雰囲気の違う、躍動感に溢れる歌と演奏で、ピアノではなくギター、ベース、ドラムスというフォーマットでシンプルに仕上がっている。重苦しさを演出した結果の公式テイクなのだろうが、私はむしろこっちのギター・ヴァージョンの方が好きだ。クラウスの轟音ベースもたまらない(^o^)丿 ⑧「リメンバー」は開始早々にジョンがリズム隊に向ってゲラゲラ笑いながら “おい、速すぎるよ!” と言って中断し、テンポを落として再開するもこの日のジョンは余程機嫌が良かったのか、随所で笑い転げながらも歌い続ける。実に楽しそうだ(^.^)。緊張感溢れる公式テイクからは想像もつかないほどの和気あいあいとしたセッション(笑)だが、逆説的に言えばゲラゲラ笑いながら歌っても十分聴かせてしまうヴォーカリストがジョン・レノンという人なのだと思う。(つづく)

John Lennon - Mother

Shaved Fish / John Lennon

2009-12-09 | John Lennon
 この「シェイヴド・フィッシュ」はジョンが5年間の主夫生活に入る直前の1975年にリリースされたベスト・アルバムである。ジョンのベストといえば「ジョン・レノン・コレクション」、「イマジン・サントラ」、「レノン・レジェンド」、「アコースティック」、「ワーキング・クラス・ヒーロー」etc、彼の死後に何種類も発売されているが、そのどれもが既存の音源の切り売り状態で、ただ収録曲が多いだけだったり初CD化のナンバーを含んでいたりというだけの何のコンセプトも感じられない “曲の寄せ集め” なのに対し、この「シェイヴド・フィッシュ」はキャピトル・レコードが作った原案をジョン自らがチェックして完成させたもので、選曲や曲順にもジョンの意思が明確に反映されている。それを象徴するのがアルバムのオープニングとエンディングに置かれた「ギヴ・ピース・ア・チャンス」で、そういう配置のせいかアルバム全体がコンセプト・アルバムのような性格を帯び、ベスト盤でありながら “もう1枚のオリジナル・アルバム” として一気呵成に聴けてしまうところもめっちゃ気に入っている。
 その①「ギヴ・ピース・ア・チャンス」だが、最初このアルバムを買った時(もちろん日本盤のアナログLP)は1分弱に短縮されたこの曲を聴いて “何でフル・ヴァージョン入ってないんやろ?” と不思議に思い、LP未収録曲とあってシングル盤を買いに走ったものだったが、腹八分目でフェイド・アウトして間髪をいれずに(←ココが肝心!)次曲「コールド・ターキー」のイントロのギターが唸りを上げるというこの演出がアルバム全体に絶妙な緊張感を与えていることが今の耳で聴くとよく分かる。さすがはジョン、天才の仕事だ(≧▽≦)
 ②「コールド・ターキー」は当時の邦題が「冷たい七面鳥」という竹を割ったような直訳というのも今となっては微笑ましいが、英語では麻薬の禁断症状を表すスラングで、毒を撒き散らすクラプトンのラウドなギターがめっちゃカッコイイ(^o^)丿 ジョンのヴォーカルも鬼気迫るモノがあり、さすがは経験者だけあって(笑)凄まじいまでの説得力だ。尚、ポールの「レット・ミー・ロール・イット」はこの曲のリフをアダプトした(←婉曲表現です...笑)もののように思えるのだが違うかな?
 ③「インスタント・カーマ」はジョンがフィル・スペクターとの共同作業で生み出した作品の中で④と共に “ウォール・オブ・サウンド” が最も効果的に用いられた曲だろう。スペクターの見事なサウンド処理によってジョンのヴォーカルは重々しく反響し、アラン・ホワイトの重厚なドラミングも圧巻、ビートルズ印のハンド・クラッピングも効果抜群で、とてもたったの1日で完成させた(朝思いついたメロディーに速攻で詞を付けて完成させ、その日の晩にレコーディングしたらしい...)とは思えないような名曲名演だ。
 ④「パワー・トゥ・ザ・ピープル」もスペクター効果が著しいナンバーで、総勢40名を超える大合唱に手拍子と足踏みが加わり、そこへトドメとばかりにスペクター渾身のエコー処理が炸裂するのだ。その迫力は大音量で聴くと凄まじいものがあり、過激な(しかし至極真っ当な)歌詞の持つメッセージ性を増幅させている。何年か前に TV の CM ソングとしてこの曲が流れてきた時はビックリしたなぁ...(゜o゜)
 ⑪「ハッピー・クリスマス」は私的にはビング・クロスビーの「ホワイト・クリスマス」、ナット・キング・コールの「ザ・クリスマス・ソング」と並ぶクリスマス3大名曲の一つで、ジョンの “ソゥ ジスイズ クリスマス~♪” の一声だけでもう雪が降ってくるような錯覚を覚えるぐらいジョンの表現力が冴えわたっている。天才ヴォーカリスト、ジョン・レノンの真骨頂といえる名唱だ。尚、このアルバムではエンディング部分に「ギヴ・ピース・ア・チャンス」のワン・トゥ・ワン・コンサートにおけるライブ・ヴァージョンが被せられており、リプリーズの役割も果たしている。
 このアルバムはジャケットも素晴らしく、12分割された表カヴァーは収録曲をイメージさせるイラスト(←コレ良く出来てます!)で構成されており、裏カヴァーにはアルバム・タイトルの “カツオ節” のパッケージ(←“正味二オンス詰” にはワロタ...)が描かれているのだ。又、表カヴァーやインナー・カヴァーに日の丸が描かれているのも日本人としては嬉しい。そういった一切合切を含め、ジョンの軌跡を辿るのに不可欠なアルバムとして愛蔵している1枚だ。

John Lennon - Power To The People
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マージービートで唄わせて / 竹内まりや

2009-12-08 | J-Rock/Pop
 今日12月8日はジョン・レノンの命日である。あの悪夢のような日からもう29年が経ち、当時高校生だった私もいつの間にか40歳を過ぎてジョンの享年を追い越してしまったが、私の心の一部はあの日以降まるで時が止まってしまったような感じで、これだけ時が経ったというのに未だに心の傷は癒えず、去年のブログにも書いたが、今でも辛すぎて「ダブル・ファンタジー」を聴けない。どうしてもあの日のことを思い出してしまうからだ。こんなビートルズ・ファンは多分私だけではないだろう。
 ショックを受けたのは我々一般のファンだけではなく、これまで多くのアーティストたちがジョンへの追悼曲をレコーディングしてきた。ジョージの「オール・ゾーズ・イヤーズ・アゴー」やポールの「ヒア・トゥデイ」といった元ビートルズの仲間たちの曲からは改めて彼らの心の絆のようなものが感じられて胸を打ったし、クイーンの「ライフ・イズ・リアル」やエルトン・ジョンの「エンプティー・ガーデン」からは彼らのジョンに対する愛情とリスペクト、そして何とも言えない喪失感が伝わってきてジーンとくるものがあった。
 そんな様々なジョン追悼曲の中で私が最も共感を覚えたのが竹内まりやの「マージービートで唄わせて」である。この曲は1984年にリリースされた彼女のカムバック・アルバム「ヴァラエティ」に入っていた曲で、彼女自身が “私の人生の中で、いろんな意味で最も大きな影響を受けたビートルズへのオマージュ・ソ ング。60年代のバンド・スタイルによる一発録り演奏に、杉真理さん、伊藤銀次さん、村田和人さんというマージービート・ファン3人のコーラスを入れてもらいながら、子供のように楽しんでレコーディングした一曲です。中学生だった頃の私は、いつもビートルズが載っているグラビアページをめくりながら、真剣に音楽雑誌の編集者になることを夢見たものでした。” と語っているように、ジョンを偲んで下手に湿っぽくならず、いかにも60's な明るい曲想でツボを押さえた音作りに徹しているところが大好きなのだが、何にも増して私の心を打ったのはビートルズ・ファンの心情を見事に表現したその歌詞で、何度聴いても心に沁み入ってきて目頭が熱くなる。下に貼り付けた YouTube の映像でも、有名なシェア・スタジアムの演奏シーンで愛器リッケンバッカー325 をかき鳴らしながら熱唱するジョンの姿とまりや姐さんの素敵な歌声が絶妙に合っていて涙ちょちょぎれる。私は彼女のデビュー以来の大ファンだが、この曲を聴いた時は本当に嬉しかったし、ファンでよかったなぁと思ったものだ。
 凶弾はジョンの命を奪ったが、彼が生涯を通じて我々に与えてくれた夢や喜びの数々は決して色褪せることはない。今夜はジョンゆかりの曲を聴きながら彼の思い出に浸るとしよう。

竹内まりや マージービートで唄わせて

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Wlalls And Bridges / John Lennon

2009-12-07 | John Lennon
 ジョンは前作「マインド・ゲームズ」がリリースされた1973年秋以降しばらくヨーコとの別居生活に入るが、この “失われた週末” と呼ばれる時期にレコーディングされたのがソロ通算5作目にあたる「ウォールズ・アンド・ブリッジズ」だった。
 私が音楽を聴き始めたころ目にした音楽誌のこのアルバムに対するレビューは “今までのジョンの作品の内で間違いなく最高のプロジェクト” だとか、 “「イマジン」に充分に匹敵しうる最高のロックンロール・アルバム” だとか、どれも判で押したように大絶賛の嵐で、“ここからシングル・カットされた②がジョンにとってソロ初の全米№1に輝いた” こともあって “英米日ともに久々のマンモス・セラー(笑)を記録” とまぁこれ以上ないくらいの美辞麗句が並んでいた。今では音楽評論家の提灯記事など全く信用していないが、まだ素直だった当時はこれらのレビューを信じ、速攻でこのアルバムを買ってきて絶大なる期待感を持ってターンテーブルに乗せた。しかし、スピーカーから流れてきたのは私が期待したのとはかけ離れた音楽だった。 “えっ?コレが最高のロックンロールってか?” 正直、私は失望した。何度聴いてもこのアルバムのどこが良いのか分からなかった私はこの盤を一旦レコード棚の奥深くしまい込んだ。そして様々な種類の音楽を聴いて経験を積みながら時々取り出して聴いてみて昔よりは幾分その良さが分かるようになってきたが、やはり他のアルバムほどには馴染めない。私が特に苦手なのは①「ゲット・ダウン・オン・ラヴ」、③「オールド・ダート・ロード」、⑥「スケアード」といった曲たちで、いくらジョンの声で歌われてもメロディーが薄すぎて楽しめない。きっと私の感性がこのアルバムについていけてないのだろう(>_<)
 全米№1になった②「ホワットエヴァー・ゲッツ・ユー・スルー・ザ・ナイト」はエルトン・ジョンとのデュエット曲だが、私にはゴテゴテと装飾過多なアメリカン・ロックにしか聞こえない。そもそもこのエルトン・ジョンと言う人、「ユア・ソング」や「キャンドル・イン・ザ・ウインド」といったスロー・バラッドではいかにもイギリス的な抒情味溢れる素晴らしい曲作りをするのに対し、アップテンポなナンバーはアメリカ的な薬にも毒にもならないようなものが多くて好きになれないのだ。ジョンのこの曲もどちらかというとそんなエルトン色が強いように思うのだが、それでもジョンが単独で歌っているパートにだけは耳が吸いつく。 “腐っても鯛” じゃないが、これこそまさにジョン・レノンのヴォーカリストとしての底力だろう。
 ⑤「ブレス・ユー」はストーンズの「ミス・ユー」の元ネタになったっぽいサビのメロディーが哀愁を誘うが、エレピのサウンドが軽すぎるのが玉にキズ。しかし70年代半ばのアメリカン・アダルト・コンテンポラリー・サウンドが好きな人なら気に入りそうなサウンドだ。当時の恋人メイ・パンのことを歌った⑧「サプライズ・サプライズ」は曲そのものよりもエンディングで炸裂する「ドライヴ・マイ・カー」そのままのコーラスが嬉しい。⑫「ヤ・ヤ」は当時10歳だった息子ジュリアンとのお遊びセッションで、和やかな雰囲気が伝わってきて微笑ましいのだが、1分ぐらいでフェイド・アウトしてしまうのが残念だ。
 このアルバムで一番好きなのはシングル・カットされて全米9位まで上がった⑦「#9・ドリーム」だ。タイトル通り夢見心地といった感じのジョンのアンニュイな歌声が何とも心地良い浮遊感を感じさせるサウンド・プロダクションと絶妙にマッチした名曲名演だだと思う。 “ア~バワ カゥワ ポッセポセ~♪” という夢言葉みたいなフレーズはジョンお得意の造語で、この曲に更なる神秘性を与えているようだ。④「ホワット・ユー・ゴット」は何となくスティーヴィー・ワンダーの作風を連想させるファンキーなナンバーで、A面はこの曲があることによって救われているような気がする。
 ⑨「スティール・アンド・グラス」はビートルズ解散の一因となった悪徳マネージャー、アラン・クラインをあらかさまに攻撃した内容で、曲想からバックのストリングス・アレンジに至るまで、ポールを皮肉った「ハウ・ドゥー・ユー・スリープ」そっくりだ。そういえばこの頃ジョンはポールと仲直りし、過去を水に流して再会セッションまでしているが、そのこととこのクライン攻撃は無関係ではないだろう。⑩「ビーフ・ジャーキー」はジョンには珍しいインスト・ナンバーで、一説によるとブッカーT & ザ・MGs の「グリーン・オニオン」をイメージして書いたという。不思議なグルーヴを醸し出すこの曲に続くのが⑪「ノーバディ・ラヴズ・ユー」で、それまでの曲とはジョンのヴォーカルの質感がガラリと変わる。 “大人のヴォーカル” とでも言えばいいのか、適度に肩の力の抜けた、実に懐の深い歌い方だ。曲そのものもまるでスタンダード・ナンバーのような気品を備えており、「ジェラス・ガイ」を彷彿とさせる口笛によるエンディングもカッコイイ(^o^)丿 こーやって聴いてくると地味ではあるが中々味わい深いアルバムかもしれない。

John Lennon - # 9 Dream

Mind Games / John Lennon

2009-12-06 | John Lennon
 1973年にリリースされたジョンのソロ4作目にあたる「マインド・ゲームズ」は、前作「サム・タイム・イン・ニューヨーク・シティ」は一体何やったん?と言いたくなるような落ち着いた内容で、攻撃一辺倒だった前作とは違って様々なタイプの楽曲が収められていたが、特に歌詞の面では架空の理想国家 “ヌートピア” に言及したり、ヨーコへの愛を綴ったりと、「イマジン」時代に立ち返ったかのような作りになっているのが一番の特徴だ。もう政治ごっこに飽きたのか、はたまた前作の商業的な失敗に懲りたのか(ライバルであるポールの復活もめっちゃ意識してたハズ...)、様々な理由が考えられるが、とにかく歌いたいことを歌いたい時に歌うだけというこの無軌道無責任ぶりこそがジョン・レノンなのだと思うし、私はそんなジョンの人間臭さが大好きだ。又、これまで続いてきたプロデューサー、フィル・スペクターとの蜜月関係も終わりを迎え、ジョン自身がプロデュースしていることもあって、それまでのシンプルな音作りから一転、華やかなサウンドになっている。
 アルバム・タイトル曲の①「マインド・ゲームズ」はジョンにしか歌えないような雄大な曲想を持ったナンバーで、歌詞の面でも昔のように “愛と平和” 路線に軌道修正されている。元々のタイトルは「メイク・ラヴ・ノット・ウォー」といい、フェイド・アウト直前に歌詞の中に登場させ “前にも聞いたことがあると思うけど...” と結ぶところがいかにもジョンらしい。②「タイト・A$」は爽快なロックンロールで、ラバー・ソウルなリズムをバックに気持ちよさそうに歌うジョンがカッコイイ(^o^)丿 タイトル通りのタイトでシャープな歌と演奏に思わず引き込まれてしまう。“愛と平和”もエエけど、やっぱり私は無心でロックンロールを歌うジョンが一番好き!A面では(←CDにはそんなモンないけど...)べストなトラックだと思う。
 ③「あいすません」は日本語のタイトルからも分かるようにヨーコに向けて歌われた個人的なメッセージ・ソング。このアルバムには他にも④「ワン・デイ」、⑧「アウト・オブ・ザ・ブルー」、⑩「アイ・ノウ」と、全収録曲の1/3にあたる4曲がヨーコに語りかけるように歌われているが、いくら何でもこれはやり過ぎだろう。③の歌詞を聴いてると何でそこまでして媚びへつらわなアカンねんとイライラしてくるし、⑧はジョンらしい旋律を持った佳曲だが、アレンジ、特にバックの女性コーラスは大仰すぎてイマイチ好きになれない。これら4曲の中ではエルトン・ジョンもカヴァーした④とビートルズ的な懐かしさを感じる⑩が良いと思う。特に④はヨーコの存在なんか忘れさせるほどの美旋律に溢れた哀愁舞い散る名曲で、ジョンの切ない歌声に涙ちょちょぎれる。これでもう少し女性コーラスが控え目だったら言うことナシやったのに...(>_<)
 ⑤「ブリング・オン・ザ・ルーシー」は前作を彷彿とさせる挑発的な歌詞を、ペダル・スティールの音と華やかな女性コーラスが耳に残る煌びやかなサウンドでコーティングしたようなナンバー。歌詞の重さを絶妙なヴォーカルによって軽くしているところなんか、天才ヴォーカリスト、ジョン・レノンの真骨頂と言えるのではないだろうか。B面トップの⑦「インテューイション」は肩の力の抜けたポップなナンバーで、初めてこのアルバムを聴いた時からずぅーっと大好きな1曲。ジョンを代表する名曲とは言えないかもしれないけれど、私の感性のスウィート・スポットにジャスト・ミートしたようで、何度も聴きたくなるスルメ・チューンだ。軽快な⑨「オンリー・ピープル」はノリノリのお気楽ポップ・ソングだが、歌詞は “人々だけが世界を変える方法を知っている” というメッセージ・ソング。⑤にも言えることだが、前作の反省を踏まえた明るい音作りが成功している。
 ⑪「ユー・アー・ヒア」はリラクセイション溢れる癒し系隠れ名曲で、“リヴァプールから東京まで...” とか、 “海の彼方3,000マイル” とか、またしてもヨーコとの関係を歌ったものだが、珍しくクールで客観的な視点で語られており、 “またですか感” はない。この曲が醸し出すゆったりした雰囲気がどことなく「ビューティフル・ボーイ」に似ているような気がするのは考え過ぎか。⑫「ミート・シティ」はジョン・レノンここにあり!と声を大にして言いたくなるような猥雑なロックンロール。「コールド・ターキー」を裏返しにしたようなこの曲、水を得た魚のようにシャウトするジョンがたまらなくカッコイイし、ラウドなギターが唸りを上げてオフ・ビートを刻むところなんかもう最高だ(^o^)丿 私の中では「ニューヨーク・シティ」や「ムーヴ・オーヴァー・ミズ・L」と並んで三指に入る “究極のジョン・レノン・ロックンロール・クラシックス” という位置づけの超愛聴曲だ。何やかんや言うたかて、やっぱりジョンはロックンロールに限るでぇ~(≧▽≦)

John Lennon - Meat City

Some Time In New York City / John Lennon

2009-12-05 | John Lennon
 「ジョンの魂」、「イマジン」に続くソロ第3作「サム・タイム・イン・ニューヨーク・シティ」はそれまでとは打って変わったようなアグレッシヴな内容のアルバムで、当時の世界情勢とジョンを取り巻く環境の変化を色濃く反映した政治色の強いものだった。
 まずは何と言ってもニューヨーク・タイムズ紙をパロッたジャケットのインパクトが強烈だ。ニクソンと毛沢東が裸で踊っている合成写真とか、 “血の日曜日事件” の写真とかをフィーチャーし、記事にあたる部分にに歌詞を載せているのだ。このアイデアは非常にユニークで面白いし、これほど攻撃的な歌詞をジャケットに印刷すること自体、ジョンの並々ならぬ決意の表われだと思う。
 アルバムはスタジオ録音の Disc-1 と 過去の2つのライブを収めた Disc-2 の2枚組で、当初の予定では前年にライブ単独で「ロンドン・エアー・アンド・ニューヨーク・ウインド」というタイトルで出す予定だったものが、「バングラデシュ・コンサート」とリリースが重なるということで翌72年のこのアルバムに組み込まれることになったという。そのせいかアルバムとしての立ち位置が曖昧になってしまい(「ロンドン・タウン」に「USA ライブ」がカップリングされてるよーなモンやね...)、そのあまりにも政治的な内容と相まって不当なほど低い評価に甘んじているのだが、私は一部の不快なパート(笑)を除けばこの盤が大好きで、ジョンの全作品中でもトップ3に入るほど愛聴しているアルバムなのだ。
 ①「ウーマン・イズ・ザ・ニガー・オブ・ザ・ワールド」はフィル・スペクターの “音の壁” で強化されたエレファンツ・メモリーの分厚いサウンドをバックに、腹の中にあるものをストレートにぶちまけるジョンの潔いヴォーカルがカッコイイ!放送禁止?上等じゃねえか!発売禁止?大いに結構!ゴチャゴチャぬかしてる奴はこれでも食らえ、と言わんばかりの熱唱が素晴らしい。それでこそジョン・レノンだ (^o^)丿 
 ⑤「ニューヨーク・シティ」はジョンの全ソロ作品中トップ3に入るほど大好きな曲で、ジョン・レノンの魅力ここに極まれりといった感じの痛快なロックンロール。これを聴かずしてジョンを語るなかれと声を大にして言いたくなるような疾走系のナンバーだ。エレファンツ・メモリーの演奏もノリノリで、2分59秒からのピアノの連打なんてもう最高!!! 向かうところ敵なしといった感じのゴリゴリのブギー・ロック・サウンドが圧巻だ。
 ⑥「サンデイ・ブラッディ・サンデイ」は非武装のアイルランド市民がイギリス軍に虐殺された “血の日曜日事件” を取り上げたもので、U2 のものとは同名異曲。ジョンの戦闘的な姿勢が最も顕著に表れた歌詞とサウンドがスリリングだ。⑦「ザ・ラック・オブ・ジ・アイリッシュ」は「ハッピー・クリスマス」に非常に似た雰囲気を持った大名曲で、何と言ってもメロディー展開が素晴らしい!とにかくあまりにも良く出来た曲なので、苦手なヨーコのヴォーカルも気にならないほどだ(笑)。歌詞はその穏やかな曲調に反して過激で、 “略奪者” や “大量虐殺” といった言葉のバズーカ砲を容赦なく浴びせ、祖国イギリスを徹底的に非難している。
 ⑧「ジョン・シンクレア」は心地良いドブロ・ギターのサウンドが耳に残る佳曲で、 “ガッタ ガッタ ガッタ...♪” を15回も繰り返すなど、アレンジも凝っている。⑨「アンジェラ」は旋律の起伏に乏しく、ストリングスを加えたりタンバリンでメリハリをつけたりとあれこれとこねくり回してサウンド・プロダクションに工夫を凝らしてはいるが、このアクの強い曲が揃ったアルバムの中ではイマイチ印象が薄いように思う。
 Disc-2 の前半は1969年12月にロンドンで行われたユニセフのチャリティー・コンサートのライブで、ジョージやクラプトン、キース・ムーン、アラン・ホワイト、クラウス・ヴアマン、ビリー・プレストン、ニッキー・ホプキンスといった錚々たる顔ぶれによる演奏で、8分を超える①「コールド・ターキー」は混沌とした中にもこの曲が内包している殺気のようなものを見事に表現した緊張感溢れる演奏だ。
 Disc-2 の後半は1971年にニューヨークのフィルモア・イーストで行われたフランク・ザッパ & マザーズ・オブ・インヴェンションとのライブ・セッション。ジョンの “昔リヴァプールのキャヴァーンで歌っていた曲だよ。” という MC から始まる③「ウェル(ベイビー・プリーズ・ドント・ゴー)」はジョンの第一声 “ャノウ アィ ラーヴュー ベイベェー プリーズ ドン ゴゥ~♪” がもう鳥肌モノ。大げさではなく、音楽を聴いて背筋がゾクゾクする瞬間というのはこういうのを言うのだろう。バックで “キェェェ~” と叫び始めるヨーコを圧倒するかのように爆裂するザッパのギター・ソロが最高だ(^o^)丿 ⑤「スカンバッグ」は非常にテンションの高いインスト演奏をバックに “スカンバッグ!” と連呼するだけの曲なのだが、全員が一体となって疾走するグルーヴは快感の一言だ。この際、何かワケのわからんことをわめいているヨーコは無視しよう(笑)
 とまぁジョンのレコードを聴く時に何かとしゃしゃり出てきて鬱陶しいことこの上ないヨーコだが、 Disc-1 の②「シスターズ・オー・シスターズ」は前衛かぶれのヨーコととはとても同一人物と思えない軽快なガール・ポップ風の佳曲だし、歌詞が面白い⑩「ウィー・アー・オール・ウォーター」は気色悪い叫び声(←頭おかしいとしか思えん!)に目をつぶればエレファンツ・メモリーのノリノリの演奏が楽しめるブギー・ロックに仕上がっている。両方とも曲として十分傾聴に値する中々の出来だと思うが、 Disc-2 における発狂した魔女の断末魔のような雄叫びは相も変わらずで、ジョンとザッパの初共演に泥を塗って涼しい顔の KY ぶりを存分に発揮している。厚顔無恥とはこういう人のことを言うのだろう。まぁ Disc-1 は彼女の曲を飛ばして聴けばすむので特に問題はないが、ライブの Disc-2 はそうもいかないので、最新のデジタル技術を駆使してヨーコの声をキレイサッパリ消し去ってくれたら超愛聴盤になるのになぁ...(>_<)

New York City - John Lennon

Imagine / John Lennon

2009-12-04 | John Lennon
 純粋なスタジオ録音盤としてはジョンのソロ2作目にあたるこのアルバム「イマジン」には、彼の書いた曲の中で多分最も有名であろうタイトル曲を含め、全10曲が収められている。前作「ジョンの魂」は “これを聴かずしてジョン・レノンを語るなかれ!” と言っていいような、ジョンにとってのいわばプライベート・アルバム的内容で、私のようなビートルズ・ファンにとっては必聴の超重要作だったが、一般の音楽ファンにとってはへヴィーすぎるアルバムだった。そのせいか、それなりにヒットはしたものの、チャート上ではライバルのポールはおろか、ジョージにすら及ばないという結果に終わり、ジョンとしては内心忸怩たる思いがあったのだろう。このアルバムでは前作で見られた “重さ” は影を潜め、一般受けするような聴きやすいアルバムになっている。
 パッと聴いてわかる一番大きな違いはピアノを主体とした穏やかなサウンドが目立つことで、逆にシャープでエッジの効いたアップテンポの曲が少なく、ロックンロール色は非常に希薄なアルバムと言える。美しい旋律を持った曲が多く、アルバム「レット・イット・ビー」でも顕著なように、フィル・スペクター流のふわっとした包み込むようなサウンド処理や一般ウケしそうなストリングス・アレンジが随所に活かされている。それ故、世間では “ジョン・レノンの代表作” として大絶賛され、屈指の名盤的な扱いを受けているのだが、アルバム「ロックンロール」を取り上げた時に書いたように、純粋なロックンローラーとしてのジョンに惚れ込んでいる私としては、アスコットの白亜の豪邸の白い部屋で、白い服を身に纏って白いピアノを弾きながら歌うジョンよりも、「スタンド・バイ・ミー」のプロモ・ビデオのエンディングでペロッと舌を出すジョンの方が数段好きなのだ。困ったものである(笑)。
 ①「イマジン」は今や泣く子も黙る “平和のアンセム” として学校の教科書に載っていたりとか、不相応なまでに美化され、すっかり神棚に祭り上げられてしまったような感があるが、そーいった一連の流れにはどうしても違和感を覚えてしまう。私はこの曲を聴く時は、ただただ旋律の美しさとジョンの絶妙なヴォーカルを楽しむことにしている。②「クリップルド・インサイド」は軽妙な味わいがたまらない愛すべき小曲で、ジョージの弾くドブロ・ギターが絶妙なアクセントになっている。この曲、結構好きです(^o^)丿 ③「ジェラス・ガイ」も①と並ぶジョンの代表曲で、ジョンのヴォーカリストとしての素晴らしさが存分に味わえる名曲名唱。間奏部の口笛なんかもう見事としか言いようがないカッコイイ演出なのだが、バックのストリングスがうるさすぎるのが玉にキズだ。このスペクター・アレンジは好きじゃない(>_<)。
 ④「イッツ・ソー・ハード」は前作の流れを組むへヴィーなブルース・ナンバーで、このアルバムでは浮いてしまいそうなハードなギターとキング・カーティスのネチこいサックスに “ハウ・ドゥー・ユー・スリープな” ストリングスが絡む展開が面白い。⑤「アイ・ドント・ウォント・トゥ・ビー・ア・ソルジャー」はやや一本調子なメロディー展開の曲だが、凝りに凝ったサウンド・プロダクションとスペクターの見事なエコー処理、そしてジョンのヴォーカルの吸引力で聴かせてしまう。⑥「ギヴ・ミー・サム・トゥルース」のイントロのジョージのギター、もろ「アビー・ロード」ではないか!ハッキリ言って旋律は薄味で曲そのものの印象も薄いが、このギターのサウンドだけで萌えてしまう(笑)。⑦「オー・マイ・ラヴ」は前作に入っていた「ラヴ」の流れを汲むジョン的名バラッドで、そのメロディーの美しさには “アップテンポなロッケンロー命” の私も思わず頭を垂れて聴き入ってしまう。ニッキー・ホプキンスのリリカルなエレピが絶妙な隠し味になっている。
 ⑧「ハウ・ドゥー・ユー・スリープ」はポールを露骨に、そして痛烈に皮肉った歌詞であまりにも有名なナンバーだが、私がこの曲を聴いて感じるのは、ドロドロした憎しみではなく、 “嫌い嫌いも好きのうち” みたいな、ジョンのポールに対する複雑な感情である。歌詞をじっくり読んでみると、その行間から盟友でありライバルもあるポールに対する思いが伝わってくるのだ。まぁ皮肉屋ジョンの面目躍如といったところだろうか。そういう意味でも私はこの曲が大好きなんである。⑨「ハウ?」はいかにもジョンな佳曲だが、いかんせん⑧の後ではインパクトが弱すぎてほとんど印象に残らない。逆にラストの⑩「オー・ヨーコ」は非常に軽快なフォーク・ロック調のナンバーで、何度聴いても心がウキウキするようなハジけるようなメロディーがたまらない。(^o^)丿 エンディングのハーモニカもごっつうエエ味出してて、思わず鼻歌で口ずさみたくなるような(歌詞が歌詞だけに名前の部分は引いてしまうが...)愛すべき曲だと思う。

John Lennon - How do you sleep

John Lennon / Plastic Ono Band (Pt. 2)

2009-12-03 | John Lennon
 この「ジョンの魂」というアルバムは「マザー」や「ゴッド」etc、聴く者の耳に突き刺さるようなジョンの赤裸々な心の叫びを表現した曲を多く含んでいるため、どうしても歌詞に目が行きがちだが、もう一つ忘れてはならないのがプロデューサー、フィル・スペクターの存在である。60年代前半のフィレス・レーベル黄金時代に彼がプロデュースしたドリーミーなポップ・ソングの数々は全人類の宝物と言ってもいいくらい素晴らしいものだったが、ロックの音がしないアルバム「レット・イット・ビー」に対する世間の風当たりは強かった。私が思うに人一倍プライドが高いフィルのこと、きっとリベンジの機会を狙っていたのだろう。重い反響音を巧く使った彼のレコーディング・テクニックがこのアルバムのシンプルなサウンドの良さを見事に引き出している。同時期の「インスタント・カーマ」や「パワー・トゥ・ザ・ピープル」、ジョージの「マイ・スウィート・ロード」なんかもスペクターの “ウォール・オブ・サウンド” がなければあれほど強烈なインパクトは与えられなかっただろう。
 そんなスペクター流の見事なサウンド処理が活かされた曲がB面トップの⑥「リメンバー」だ。へヴィーなピアノの連打(←フォリナーの「ブルー・モーニング・ブルー・デイ」はこの曲の影響をモロに受けているように思う...)とそれに付かず離れず追従するベースとドラムス、そして絶妙な間を生み出すエコー処理が印象的なこの曲は私の愛聴曲。シンプルなバンド編成でありながらこれだけの切迫感、緊張感を出せるのが凄い。爆発音で唐突に終わるエンディングも衝撃的だが、その余韻の向こうから⑦「ラヴ」のイントロのピアノの音が徐々に近づいてきて、おもむろに“ラヴ イズ リアル~♪” とジョンがかすれた声で歌い出す瞬間なんかもう鳥肌モノ(≧▽≦) ジョン・レノンのヴォーカリストとしての魅力を活かしきった実に見事な演出だと思う。ジョンの歌声は説得力に溢れ、アコギとピアノのマッチングも絶妙な “シンプル・イズ・ベスト” を地で行くような歌と演奏で、聴いていると心が優しくなれるような気がする名バラッドだ。
 ⑧「ウェル・ウェル・ウェル」は初めて聴いた時はジョンの絶叫に圧倒されてインパクトも強かったが、今の耳で聴くと何となく “作り物” 的に響く。要はそういう時代だったということだろうが、そういった作品ほど風化の度合いは激しいように思う。それでも思わず引き込まれてしまうあたりはさすがジョン・レノン。そしてそれに輪をかけて凄いのがリンゴのドラミングで、それと感じさせないハイ・テクニックの連発は圧巻だ。⑨「ルック・アット・ミー」は何となく「ホワイト・アルバム」的な匂いが濃厚に立ち込めるバラッドで、「ジュリア」を「ディア・プルーデンス」で包んでチンして一丁上がり、みたいな感じの1曲だ。
 ⑩「ゴッド」はこのアルバムの、いやジョンの全ソロ作品中のベストと言えるナンバーで、何と言ってもその歌詞のインパクトは測り知れないものがあった。リリースから5年経って後追いで聴いた私があれほどの衝撃を受けたのだから、この曲をリアルタイムで聴いたビートルズ・ファンの心境は察するに余りある。ポピュラー音楽の歴史を変え、ポールと共にビートルズを引っ張ってきたあのジョンが “信じないモノ” を延々と羅列し、そのラストに “ビートルズを信じない!” と言い切ったのだ。今から考えれば迫真の演技だが、当時はこの歌詞がめっちゃリアルに響き、エンディングの “夢は終わった...” というジョンの歌声が胸に突き刺さった。この表現力、この説得力、この吸引力... 天才ヴォーカリスト、ジョン・レノンの真骨頂といえる屈指の名曲名演だと思う。
 ⑪「マイ・マミーズ・デッド」はまるで小さなラジカセから流れてくるようなサウンド処理を施され、ジョンが子供のような歌い方で “僕の母さん死んじゃった...” と淡々と綴っていく。超大作「ゴッド」の後にさりげなく置かれたこの小曲を聴いて、私は何となく「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」の後の「インナー・グルーヴ」や「アビー・ロードB面大メドレー」の後の「ハー・マジェスティー」を思い出してしまった。“ビートルズを信じない!” と叫んだ直後のこの展開、ジョンが思いっ切りビートルズを引きずっているように感じたのは私だけだろうか?

GOD- john Lennon

John Lennon / Plastic Ono Band (Pt. 1)

2009-12-02 | John Lennon
 私が音楽を聴き始めた1970年代半ば、ビートルズは既になく、リアルタイムではポールがウイングスを率いて US ツアー中でわが世の春を謳歌していたのに対し、ジョンはベスト・アルバム「シェイヴド・フィッシュ」を出して70年代前半の自らの音楽活動を総括した後、主夫生活に入り沈黙していた。私は後追いの形でビートルズのアルバムを1枚ずつ買いながら、それと並行する形で各メンバーのソロ作品も少しずつ買い集めていった。当時の私は音楽誌のレヴューを参考にしてなけなしの小遣いをやりくりしながら次に何を買うかを決めていったが、ほとんど全てのレビューで大絶賛されていたのがこの「ジョン・レノン / プラスティック・オノ・バンド」で、「ジョンの魂」という秀逸な邦題が付けられていた。
 確かにどのレヴューにも “自らの個人的な苦悩を曝け出したジョンの赤裸々な叫び!” みたいなことが書いてあったように思うが、まだ自分の音楽観が確立していなかった私は何も分からずに“ビートルズの元メンバーのソロ作品中最高のアルバム”という讃辞に目がいき、愚かにもビートリィなサウンドを期待してこのアルバムを購入、初めて聴いた時はそのあまりにも重苦しい雰囲気に満ちた内容に圧倒されてしまった。何と言ってもアルバムの冒頭からいきなり “ゴ~ン、ゴ~ン... ” と重厚な鐘の音が響き渡り“マザァ~ ユゥ ハド ミィ~♪” とジョンの鬼気迫るヴォーカルがスピーカーから飛び出してくる。そこには私の大好きな「レヴォリューション」や「ヘイ・ブルドッグ」といった後期ジョンのへヴィーなロックンロールも、「トゥモロー・ネヴァー・ノウズ」や「アイ・アム・ザ・ウォルラス」のようなサイケなロックとは全く違った、非常にシンプルな形のロックとして提示されていた。
 で、その①「マザー」だが、アルバムのA面1曲目にインパクトの強い曲を配置するというビートルズ由来の手法に則っての大抜擢。シンプルながら一度聴いたら耳から離れないような強烈なメロディーに乗って、パーソナルでへヴィーな歌詞がジョンの切迫感溢れるヴォーカルで歌われるという、耳に心地よいポップスとは対極に位置するような曲で、絞り出すような声でシャウトするジョンの歌声には凄味すら感じられる。歌詞もシンプルながら実に生々しいもので、“母”そして“父”への想いが赤裸々に綴られている。特に後半のリフレインの部分で “mother, father” ではなくまるで子供のように “mama, daddy” と叫んでいるところなんかめっちゃリアルでゾクゾクさせられる。尚、この曲はアメリカではシングル・カットされたらしいが、ヒット・チャート番組で聴くには最も似つかわしくない、凡百のポップ・ソングとは激しく一線を画する名曲名演だと思う。
 ②「ホールド・オン・ジョン」はジョン自らが客観的な視点から当時色々と世間を騒がせていた “ジョンとヨーコ” に対して “しっかり頑張れ!” と励ますという変わった作りの歌。穏やかなメロディーを持ったこの曲、あまり印象に残るようなトラックではないが、あの強烈な「マザー」の後に置けるのはこんな曲しかないだろう。
 ③「アイ・ファウンド・アウト」はシンプルにしてソリッド、そのシャープでエッジの効いたサウンドはこの時期のジョンが書いた極上のロックンロール・チューンだ。ジョンの歌心溢れるリード・ギター、クラウス・ヴアマンのポールを想わせるような躍動的なベース・ライン、そして “ザ・ワン・アンド・オンリー” リンゴの絶妙なドラミング... まるでホワイト・アルバムに入っていても全然おかしくないような、まるで “進化した「ハイパー・グラス・オニオン(笑)」みたいなカッコ良い演奏だ。
 ④「ワーキング・クラス・ヒーロー」も初めて聴いた時から強く印象に残っているナンバーで、アコギの弾き語りで淡々と歌われる歌詞は痛烈そのもの... “fuckin’ crazy”、“fuckin’ peasant” と、“fuckin’” という言葉が2度も使われていたり、“笑いながら人殺しを出来るぐらいでないと奴らのようにはなれないぜ” とか、とにかく切っ先鋭い言葉の刃による波状攻撃だ。メロディーだけでも超一流の名曲だと思うが、歌詞カードを見ながら聴けば、ジョンの感情の込め方etc を含め、この曲を更に深く味わえるだろう。
 穏やかなピアノのイントロで始まる⑤「アイソレイション」は “孤独” を歌った内容がこれまた生々しい(>_<) 曲のメロディー的には②同様やや薄味なのだが、ジョンとしてはとにかく歌詞を聴かせたかったのではないか。ダブル・トラッキングを効果的に使ったジョンのヴォーカルは説得力に溢れている。(つづく)

Working Class Hero - John Lennon