shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

John Lennon / Plastic Ono Band (Pt. 2)

2009-12-03 | John Lennon
 この「ジョンの魂」というアルバムは「マザー」や「ゴッド」etc、聴く者の耳に突き刺さるようなジョンの赤裸々な心の叫びを表現した曲を多く含んでいるため、どうしても歌詞に目が行きがちだが、もう一つ忘れてはならないのがプロデューサー、フィル・スペクターの存在である。60年代前半のフィレス・レーベル黄金時代に彼がプロデュースしたドリーミーなポップ・ソングの数々は全人類の宝物と言ってもいいくらい素晴らしいものだったが、ロックの音がしないアルバム「レット・イット・ビー」に対する世間の風当たりは強かった。私が思うに人一倍プライドが高いフィルのこと、きっとリベンジの機会を狙っていたのだろう。重い反響音を巧く使った彼のレコーディング・テクニックがこのアルバムのシンプルなサウンドの良さを見事に引き出している。同時期の「インスタント・カーマ」や「パワー・トゥ・ザ・ピープル」、ジョージの「マイ・スウィート・ロード」なんかもスペクターの “ウォール・オブ・サウンド” がなければあれほど強烈なインパクトは与えられなかっただろう。
 そんなスペクター流の見事なサウンド処理が活かされた曲がB面トップの⑥「リメンバー」だ。へヴィーなピアノの連打(←フォリナーの「ブルー・モーニング・ブルー・デイ」はこの曲の影響をモロに受けているように思う...)とそれに付かず離れず追従するベースとドラムス、そして絶妙な間を生み出すエコー処理が印象的なこの曲は私の愛聴曲。シンプルなバンド編成でありながらこれだけの切迫感、緊張感を出せるのが凄い。爆発音で唐突に終わるエンディングも衝撃的だが、その余韻の向こうから⑦「ラヴ」のイントロのピアノの音が徐々に近づいてきて、おもむろに“ラヴ イズ リアル~♪” とジョンがかすれた声で歌い出す瞬間なんかもう鳥肌モノ(≧▽≦) ジョン・レノンのヴォーカリストとしての魅力を活かしきった実に見事な演出だと思う。ジョンの歌声は説得力に溢れ、アコギとピアノのマッチングも絶妙な “シンプル・イズ・ベスト” を地で行くような歌と演奏で、聴いていると心が優しくなれるような気がする名バラッドだ。
 ⑧「ウェル・ウェル・ウェル」は初めて聴いた時はジョンの絶叫に圧倒されてインパクトも強かったが、今の耳で聴くと何となく “作り物” 的に響く。要はそういう時代だったということだろうが、そういった作品ほど風化の度合いは激しいように思う。それでも思わず引き込まれてしまうあたりはさすがジョン・レノン。そしてそれに輪をかけて凄いのがリンゴのドラミングで、それと感じさせないハイ・テクニックの連発は圧巻だ。⑨「ルック・アット・ミー」は何となく「ホワイト・アルバム」的な匂いが濃厚に立ち込めるバラッドで、「ジュリア」を「ディア・プルーデンス」で包んでチンして一丁上がり、みたいな感じの1曲だ。
 ⑩「ゴッド」はこのアルバムの、いやジョンの全ソロ作品中のベストと言えるナンバーで、何と言ってもその歌詞のインパクトは測り知れないものがあった。リリースから5年経って後追いで聴いた私があれほどの衝撃を受けたのだから、この曲をリアルタイムで聴いたビートルズ・ファンの心境は察するに余りある。ポピュラー音楽の歴史を変え、ポールと共にビートルズを引っ張ってきたあのジョンが “信じないモノ” を延々と羅列し、そのラストに “ビートルズを信じない!” と言い切ったのだ。今から考えれば迫真の演技だが、当時はこの歌詞がめっちゃリアルに響き、エンディングの “夢は終わった...” というジョンの歌声が胸に突き刺さった。この表現力、この説得力、この吸引力... 天才ヴォーカリスト、ジョン・レノンの真骨頂といえる屈指の名曲名演だと思う。
 ⑪「マイ・マミーズ・デッド」はまるで小さなラジカセから流れてくるようなサウンド処理を施され、ジョンが子供のような歌い方で “僕の母さん死んじゃった...” と淡々と綴っていく。超大作「ゴッド」の後にさりげなく置かれたこの小曲を聴いて、私は何となく「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」の後の「インナー・グルーヴ」や「アビー・ロードB面大メドレー」の後の「ハー・マジェスティー」を思い出してしまった。“ビートルズを信じない!” と叫んだ直後のこの展開、ジョンが思いっ切りビートルズを引きずっているように感じたのは私だけだろうか?

GOD- john Lennon

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