魯生のパクパク

占いという もう一つの眼

手塚作品

2010年05月15日 | 日記・エッセイ・コラム

子供の頃は手塚治虫の作品で育った。
何をどう読んだか忘れるぐらい、手塚漬けだった。
手塚作品の中で、最も影響を受けたのは、鉄腕アトムでも火の鳥でもない。
もちろん、どの作品にも影響を受けたことは事実だが、短い作品に、凝縮された文明観という点で、子供には大変なショックだったし、今でもやっぱり、最高の手塚作品だと思うのは「ロック冒険記」だ。
世界中の子供に読んでもらいたい。

芥川の「河童」や、モーロワの「デブの国ノッポの国」、後の「猿の惑星」など、異文化について、どの作品にも劣らない鋭い視点を持っている。

かいつまんで・・・(多少記憶違いはあるかも)
天体の異変で地球に近づいた、未知の惑星ディモン星は地球の第2の月になる。その探査に行ったロックの物語。
ディモン星には、鳥人や粘土人など奇妙な生態と文化がある。
ロックは鳥人の子供の名付け親になり、鳥人に文明指導をする。
ディモン星の石油に目を付けた連中が、ディモン星を植民地化し、鳥人を家畜奴隷にする。
やがて、鳥人の逆襲が始まる。

今日にも生きている「カルチャーショックと文明の野蛮」を、戦争体験と占領下の日本で、手塚が鋭く書き上げたと思える。
手塚の優しさと怒りを感じる。

最後の、鳥人の逆襲では、ディモン星攻撃に向かった地球軍の戦艦を乗っ取った鳥人は操る知識を持ち、なおかつ地球人に操縦させている。
自分の技術に溺れて、蛮行を働いていると、やがて逆襲される・・・
それは、現在の先進国と新興国の関係でもある。

そうした大きな視点の中で、「形はすぐマネできても実体がない粘土人」とか、至る所にエスプリが効いている。

是非アニメにして欲しい作品だ。