プロパガンダ、フェークニュース、ステルスマーケティング、コンテンツ、データ、ファクト、エビデンス、バイアス、メディアリテラシー・・・
日本は韓国のように漢字を止めたわけではないが、こんな単語を見続けていると、中国からの「認知戦」に、易々と洗脳されそうな気がする。
認知戦、撹乱、洗脳は中国からだけでもない。何一つ嘘のないニュースも、捉え方一つ、語り方一つで真逆の認識になる。
ネット世界の喧しい情報の中で考えていると、いつか、「われを失う」
近頃は、陰謀論にハマる人が問題になっているが、これに顔をしかめる人も、遠目で見れば、両者とも大して変わりない。
格差、分断と、世界は対立する情況ばかりだ。
中国の核汚染水と日本の処理水はどちらが正しいか。アメリカのトランプ嫌いとトランプ信者はどちらが正しいか。ゼレンスキーの政治とプーチンの政治はどちらが正しいか・・・こんなことを、
「解りきっているじゃないか」と即答する人は、かなり危険な世界にいる。
そして、世の中の多くの著名人や評論家も同じ船に乗っている。
日本が戦争に敗れた後、「一億総懺悔」と言われるほど、多くの知識人が反省した。
みな日本の中で考えていたからだ。一方的な情報に善意が加わると、自分や周りを「悪者」の立場、相手の目で客観視することができなくなる。
相当な知識人であっても無意識に、他人に非難されない考えを選び、楽な判断をする。戦争に敗れ「王様は裸だ」と言われて、初めて眠っていた別の選択肢を思い出し「懺悔」となったが、これもまた他人の船だ。
今また、全てを反対する野党も、与党は間違っている前提で、正誤は関係ない。立場だけで判断し、反対側の意見なら全て誤りと攻撃する。それが「野党の一つ覚え」であり、戦時下の国民と同じオカルト信者のような思考だから説得力がない。
人を説得する営業トークは、「おっしゃる通り!」「そうですねえ」と、先ず相手を肯定することから始めるのが定石だ。相手を安心させ、相手の認識に合わせて、違う話に持って行く。
他人の認識を変えるには、相手のルール、相手の視野から、景色の見方を変えていかなければ、話そのものが成り立たない。
分断のワケ
なぜ、現代世界はいわゆる「分断」社会になったのか。一言で言えば、学校教育の弊害だろう。
識字率が上がり、本や先生、文字に書かれていることを疑わない習慣が身につき、先生のように語りかけてくる画面を信じる脳になっている。
学校以前は、生活の皮膚感、それを集約した長老・古老の意見に頼って生きていたが、個々が情報を理解するための学校教育で、皮膚感や経験知によらない認識、判断を持つようになった。
知識と合理性で理解する能力は、仕事や社会への適合力に優れるが、曖昧なものや、答の無いものを認識できない。昔のSFのコンピュータのように、矛盾するデータを受け付けない。
高学歴化した現代人は、情報を合理的に説明されると疑わない。
不可解な情報には、先ず「ファクトは、エビデンスは」と、データの確かさを求める。それしか理解方法を知らないからだ。しかし、情報が確かでも隠れた情報もあり、視点が変われば異なる事実もある。
真実を求める研究者は、不明な事実を認識しているが、一般人は学校で習ったように情報を利用し、信じる。見識を自負する慎重な人も、確かと「言われる」情報源のファクトやエビデンスなら間単に信じる。
経験知と合理性
昔の人間と、高学歴社会の現代人の何が違うかと言えば、経験知か合理性かで、昔の人間は自分で積み上げた「思考軸」に照らして判断したが、現代人はそれを不合理で情緒的と排除し、正確な知識に基づく合理的な答こそ正しいと信じている。
確かに、個人の経験知はバラバラで科学的普遍性が無い。だから、皆の経験知から賢人を選び出しその人に従った。
一方、現代人は、科学的な「知識」を合理的に組み合わせて、個々が判断する。それを最も上手く出来るのが受験選抜のエリートで、コンピュータのように優秀な処理能力を発揮するが、ほとんどが経験知による「思考軸」を持っていない。
それでも、優秀な人たちだから、智の経験知を持つ人も少なくないが、多くの教化された現代人は、合理的に見える「受付可能な情報」なら、何でも受入れて処理してしまう。それが、一つの論理にハマる、オカルトや陰謀論、様々な運動や個人崇拝を生み、分断の原因になっている。
NHKによると陰謀論にハマる世代は40代以上に多く、20代は少ない。この違いは受験戦争世代と、ゆとり世代に当たるから、教化度合いに比例する。学力に問題があると言われるゆとり世代は、より「経験知」が育まれているのではなかろうか。
P.S.
丁度これを上げた翌9月9日。現代ビジネスで、後藤宗明という人が「日本人に圧倒的に足りない能力」として、ほぼ同じ事を上げていた。
「勉強の得意なアカデミックスマートと、生きるための経験の知恵=ストリートスマート」で、
ストリートスマートとは、次のようなこととしていたが、案の定、ネット読者には「低く評価」されていた。
・人に溶け込む力
・周囲に対する観察力
・状況を理解する判断力
・トラブルを回避する力
・生きていくための知恵