立て続けに、柴犬が飼い主をクマから救って話題になっている。
6月22日、秋田大館市の河原で5歳児を襲ったクマを、6歳のメス柴「めご」ちゃんが撃退した。
28日は、石川金沢市の山道を散歩していた夫婦に子連れの母クマが襲いかかり、10歳のメスの黒柴「ショコラ」が飛びかかって撃退した。
いずれも、日頃は吠えることもなく大人しく、臆病で人なつこい性格だったので、助けられた飼い主が、誰より驚いていた。
アメリカで子供を救った猫は映像証拠があったので英雄になったが、何よりも「猫」であったことが意外だった。
犬が、飼い主の災難を救った話は、いくらでもあるので、特別な話として記憶に残りにくいが、それぐらい犬は仲間意識が強い。
中でも、日本犬は、今回もそうであったように、日頃、無口で大人しいのに、イザと言う時、思いがけない豹変をする。
犬好きの間でも、洋犬派と日本犬派がいるが、初めから日本犬派なので、何度か、洋犬派と口論したことがあるぐらいだ。
小型洋犬を可愛いと言う人は、多にして、気分屋だ。確かに、ぬいぐるみのように可愛いく作ったのだから「可愛い」、とでも言える可愛さがある。
その点、柴犬は少しも可愛くない。どこにも特徴の無い、ただの動物だ。自然の野山にいるのがふさわしい、愛想のない顔をしている。
しかし、そこが良いのだ。お笑いタレントの笑いより、まじめ人間の天然の方が面白いことがある。
犬は民族の文化として生まれてくる。洋犬は、大作りな顔で喜怒哀楽の激しい欧米人に似ているし、日本犬は、醤油顔で何を考えているのか解らない、静かで無表情な日本人に似ている。
洋犬はかまってやらないと騒ぎ立てるが、日本犬は黙って我慢する。
纏足や宦官の国の中国犬には、何の目的か解らない奇形や愛想の良さがある。
外国人がどうにも理解できない日本人の特徴を、日本犬は全て体現している。
大人しくて、人見知りをするが、心を許した人には、トコトン愛想が良い。無駄に声を上げず、滅多なことで騒ぎだてしない。
今回の柴犬たちも、長年飼ってきた飼い主さえ、臆病で役立たずだから番犬失格だと思っていた。
ところが、イザ鎌倉、一朝事あれば、まるで大石内蔵助かスーパーマンの様に「変身」する。
様々な犬伝説の中にも、飼い主を守って命を落とした犬の話がある。
実際に自分も体験した。
日本犬は、愛くるしい犬ではないかも知れない。しかし、その心根を見詰めると。いじらしくて、いじらしくて、たまらない。
敷島の大和心を人問はば、朝日に映る柴犬の影 ワン