兄弟ゲンカと一人っ子
国を兄弟関係に見立て、朝鮮半島を末っ子と見たら、日本が上だと思っているのかと、批判する人がいたが、兄弟関係に上下はない。生い立ち環境の違いによる性格形成の違いを観ているのであって、格付けをしているわけではない。それぞれに長短がある。
上下を気にすること自体が、既に弟妹型の発想だろう。
長子は弟妹の悲哀を味わったことがないから、立場の上下を理解できない。皆同じだから、それぞれ自分の好きなことをやれば良いじゃないかと思っている。何があっても責任を問う相手がいないから、自己責任で解決するつもりでいる。
これに対し、既に兄姉がいる中で生まれた弟妹は、兄姉と同じことができないのは、兄姉が特別扱いされているからだと責任転嫁できるし、兄姉を手本に同じ事をしようとして、逆に兄姉が障害になり、克服する目標になる。一方で、多くは兄姉が責任を取る中で育つので、何かの問題は先ず、自分以外の誰かの責任だと思う。そして良くも悪くも他者の存在を意識し、他者を必要とする。
長子型の国は少ない。実際の兄弟でも長子は一人しかいないが、弟妹はいくらでも生まれる。長子型の国は中国で、イラン、インド、エジプトもその名残がある。長子の原型である一人っ子型は日本だ。古来からの大きな島国は皆一人っ子型になるが、どこにも支配されずに統一した島国は珍しい。
一人っ子の短所の多くは、親の過保護による甘えとワガママだが、国には保護する親などいない。
末っ子型の国は、大国の狭間で常に翻弄されてきた国だ。東アジアでは朝鮮半島がまさにそれに当たるが、他の大国の狭間にないベトナムは一人っ子に近く、他人に文句を言わない。一人っ子は文句を言う他者がいないからだ。西欧の末っ子は東欧の小国であり、ウクライナはその最たるものだろう。
末っ子型の国に共通する特徴は、鼻っ柱が強く、世界(周囲)に向かって大声で存在を主張しても最後まで貫かず、形勢の良い方につく。それまで属してきた国が弱体化すると被害者でしたと時の強者に訴え、味方にすると強気になって元の宗主を叩く。自分では手加減が解らないから、周囲が味方しなくなったり、大国に叱られて初めて止まる。情緒的な民族意識ばかりで、一貫した国家観が無い。
末っ子に巻き込まれる
国のタイプを、このように観ると、ウクライナ戦争を単純にウクライナ一辺倒で応援することの危険が見えてくる。
実際の兄弟では、川遊びで助けようとした長子が死んだりするように、末っ子の無軌道に長子が巻き込まれることが多い。小国の民族意識は世界大戦の引き金になる。
第一次大戦はバルカンで起こり、第二次大戦はチェコスロバキア、日清日露は朝鮮半島で起こった。いずれも直接の衝突ではないが、大国の狭間で揺れ動く民族意識、小国の自己主張が引き金になった。
攻め込んだ国は侵略者だが、正体の無い民族主義は常に大国を挑発する。
長子には親代わりの責任感覚があるが、親ではない。「子供のケンカに親が出る」はあり得ない話の例えだが、弟のケンカに兄が出るのは普通にある。
賢明な兄なら、本当に親代わりになって「話を付ける」。親がケンカに出ないのは、世間のルール、秩序に生きているからで、
「うちの子がご迷惑をおかけして申し訳ありません」、「いえいえ、親のしつけが行き届かないものですから」と、それぞれ家で子供に教育をすることになるが、
ルールの無い子供の世界で、相手の兄を大人のルールに引き込み説得するのは本当に賢明な兄だ。
ウクライナ戦争は、兄弟ゲンカの弟に武器を与えて加勢している無責任な近所のおじさんだ。何より先にすべきは、手を出した兄の説得だろう。
アメリカは末っ子型の大国だが、長子の中国は黙って様子を見ているし、中間児のトルコは、自分が怪我をしない程度に絡んでいる。
長子は進んでケンカを買わない、相談されて裁く。逆に言えばそれしかできない。6カ国協議も中国らしい発想だ。
漁夫の利を狙う中間児は、進んで動かない。今回はその中間児ロシアが張本人だから、トルコのような国が出てきた。
末っ子大国アメリカは、何時も正義の味方で威勢良く出て行って、自分では始末が付けられないトラブルメーカーだ。
兄弟との付き合い方を知らない一人っ子日本は、白村江の昔から、愛想の良い末っ子を信じて出て行き、結局、全てのスケープゴート、悪者にされる。
第二次世界大戦の大悪党にされたのも、もとはと言えば維新以来の朝鮮問題だ。
ウクライナ戦争は結局、米露戦争であり、アメリカは戦時交渉をする気はあっても、ロシアを説得する概念すらない。
日本はまたまた、末っ子の言うがままに踊らされている。日本は、その気になれば米露どちらも説得できる立場にあったが、早々に国を挙げてアメリカ側に立ってしまった。
アメリカ側に立つことによって、白黒ハッキリ、気持ちはスッキリしたが、立場が狭くなり、中露の信頼を失い、国の存亡をかけることになり、今や国論は軍事一色に傾いた。
一人っ子日本は、二枚腰三枚腰を備えた、生き馬の目を抜く世界を知らない。また、知ったところでそんな芸当はできない。やっぱり、永世中立の鎖国しかないのかも知れない。