転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
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HN「転勤族の妻よしこ」、筆名「山田亜葵」。家族は、転夫まーくん(またの名を「ツアコンころもん」)、転娘みーちゃん(1995年生まれ。首都圏在住。会社員)。
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70年代にあった、「死んでもイイ」という至福
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2011年01月20日 11時23分31秒
以前、友人某氏と話していて、つくづく意見の一致を見たことなのだが、
私たちが中学生の頃というと、インターネットをやるどころか、
テレビをビデオ録画するということさえ、あり得なかったので、
海外のアーティストに実際に触れることができる機会は、
本当に本当に、一生に何度あるかというくらいに、限られたものだったと思う。
ゆえに、うっかりそんなことが実現しようものなら、その感激はただごとでなかった。
1970年代の中学生の情報源は、雑誌くらいしかなかったから、
例えば私が77年にQUEENのファンになり、彼らの情報を得たいと思ったときでも、
窓口になってくれるのは、本屋にあったMUSIC LIFEとRockShowだけだった。
海外の雑誌などそんなに輸入されていなかったし、田舎で買えるものではなかった。
日本で発売されるレコードと、ラジオで放送される番組を除けば、
国内の洋楽雑誌記事とその掲載写真しか、私たちの手に入るものがなかったのだ。
当然、「動いている」彼らを見る機会など、普通、なかった。
私自身が、映像で初めて「動いている」QUEENを見たのは、
何かテレビの深夜番組で洋楽を紹介するコーナーがあったときで、
どうしてそんな、「
11PM
」より遅い時間にテレビを見るのかと父親に呆れられた。
そこでQUEENが観られる、という情報だって、ネットで検索する時代ではないから、
新聞のテレビ番組欄を見ていて、偶然に気がついたことだった。
同様に、「動いている」KISSを初めて見たのは、
初来日武道館公演がNHK「ヤング・ミュージック・ショー」で放映されたときだった。
家の和室にあった14型テレビの前で、正座して観た。
そのような状況だから、地上波(しかなかった)の映像でも、
私たち世代は、ファンともなれば息をするのも忘れるくらい懸命に見入った。
録画も出来ない時代だったので、放映中に観られるものがすべてだった。
テレビの前にテープレコーダーを置いて録音していたら、家族が入ってきて台無しに、
……という経験を持つ人も少なくないと思う。
こんなことでも本気で泣いて抗議するほどの、取り返しのつかない損害だった。
雑誌記事は穴があくほど熟読し、これぞという写真は切り抜き、
透明の下敷きに丁寧に挟んで、学校に持っていったものだった。
街中では、レコードコンサートやフィルムコンサートが行われることがあった。
アーティスト本人たちが来るのでは勿論なくて、
広い会場で大音量のレコードが聴けるとか、映像が上映されるとかいう催しだ。
こういうものにも、我々は血道をあげた。
映像に向かって本気で歓声をあげたり、拍手をしたりした。
アホか、と今の若い人には思われるかもしれない。
しかしあの頃の、些細なひとつひとつが「一期一会」だった、切実な感動は、
もしかしたら、今時の人たちには決して味わえない、
非常に純度の高い「至福」ともいえるものだったのではないか、
と、私はときどき思うことがある。
21世紀ともなった今は、アーティスト本人が多くの場合簡単に来日でき、
彼らがテレビ出演するなら、ファンは当然のごとく自宅で録画可能で、
ものによったら海外の番組でも日本に居ながらにして見られ、
DVDも各種販売され、ネットではYouTubeなどで今の新曲も過去のライブも見放題だ。
そんな恵まれた環境と較べると、70年代のファンの手に入ったものは
あまりにも不十分だった筈なのだが、
そのぶんファンの一瞬一瞬に対する思い入れは、今とは全く違った。
断片のような瞬間の中にさえ、貴重な貴重な、輝くばかりの至福があった。
あのような時代、何であれ映像を所有することすら難しかったのだから、
ましてや、来日した本物のアーティストに会えるとか、
彼らの演奏を直接に聴けるなどというのは、
大袈裟だが「死んでもイイ」くらいの感動だったのだ。
特に私のように田舎に住んでいた中学生にとっては、
「一生に一度でいいから、本物のQUEENが、生のフレディの歌が、聴きたい」
というのが、「死ぬ前に一度は叶えたい、究極の夢」だった
(これは1985年5月に、本当にただ一度だけ、叶った)。
もう一世代前、1966年のビートルズ初来日の武道館に居合わせた人たちが、
その後、申し合わせたように、
「カーっとなって、何を聴いたか全く覚えてない」
と言っていたのを、何かのラジオ番組で聞いたことがあるのだが、
それはもう、感激のあまり、その場でイってしまいそうな
或いは気が変になりそうなくらいの、陶酔の時間だったに違いないのだ。
私が今でも70年代までのロックを特別なものとして記憶しているのは、
自分が多感な中学生だったという時期的な要素もあるかもしれないが、
それ以上に、あの時代背景が理由となっているのではないかと思う。
特に、QUEENやJAPANのように、あの時代を超えることなく、
自分の中で終結してしまったバンドに対する思いは永遠だ。
息詰まるような幸福感とともに、彼らの姿は今も、私の中で特別な位置を占めている。
彼らへの思いは、その後に出会ったバンドに対するものとは、決定的に違う。
余談だが、CDが登場しネットが普及し楽曲ダウンロードの時代になっても、
あのときと全然変わらないで、ヘーキでビジネスの波に乗っているKISS、
というのも、けったいな、じゃない、恐ろしいバンドだなと思ったりする(苦笑)。
彼らが利用した媒体や、ビジネス戦略の内容を省みると、それはそのまま、
70年代後半から現在までの、この業界の変遷を知るための、
有益な資料となるのではないだろうか。
35年間彼らとともにあり続けているファンは、
その意味では実に貴重な歴史を共有したのだと思う。
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