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元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

突っ張ることの意義

2007-07-08 | 万年筆
自費で万年筆の雑誌「スティロ」を発行されているKさんが、貴重な休日を岡山から出てきて下さり、三宮でお会いすることができました。
温厚で思いやりに溢れたKさんが、「スティロ」では辛口の発言をされていることに、その文章を書いている人は本当に同じKさんだろうかと、私も不思議に思っていました。
普通あまり敵を作りたくないと思って、無難な発言に終始してしまうことが多いと思いますが、それをあえて発言し、行動されている貴重な方です。
波風を立てずに、穏やかに過ごすことの方が遥かに楽で、臆病心から言いたいことを言わず、自分の気持ちや意見に蓋をしてしまうものです。
しかし、それでは何も変わらないし、道は開けていきません。
間違っていることを間違っていると言う、至らないものに辛口の意見を言う。
誰も言わなかったことをKさんは読者たちに、問いかけています。
あえて突っ張って生きていくことは大変で、勇気のいることですが、とても魅力的でかっこいい生き方だと思えました。
尖がった発言をするには、強くなければいけませんし、知識も必要です。自分自身を律する力も必要になってきます。そんなKさんの強さが「スティロ」での発言に表れています。
その発言は、あまりにもちゃんと万年筆をお客様に薦めていない万年筆業界への怒りも込められていて、そんな売り方をしているから万年筆を使う人が減ってしまったというもっともな指摘に、万年筆の仕事に携わる人間として耳の痛い内容もたくさんあります。
しかし、私がKさんとのお付き合いをずっと続けてくることができたのは、今までの私の発言が聞きかじりなどではなく、自分で感じたことを発信してきたという私自信の自負とそれをKさんが理解してくれているからだと勝手に思っています。
「50代になると体のあちこちが痛くなってくる。」と言われていましたが、非常に頑丈な手を感じながら握手して別れました。
貴重な時間を私との会談に割いてくださったことに心から感謝しました。
シヤープで辛口な文章をいつまでも書き続けていただきたいと思いましたし、Kさんの何十分の一でも突っ張って生きていきたいと思いました。



若い頃の文章

2007-07-08 | 万年筆
以前から私のことを気に掛けてくれている、ある方の働き掛けで私が今まで書いたものを読み返し、校正する機会をいただき、ほぼ全て読み返してみました。
今まで自分が書いたものを読み返すことをしていませんでしたが、今こうして5年以上前に自分が書いたものを読んでみると、情熱だけが先走っていたことが恥ずかしくも、少し懐かしくも感じました。
そして、少し齢をとってしまった自分が、若かった頃の自分に教えられることもたくさんあり、本当にいい機会でしたし、タイミングも完璧だと思いました。
あの時は今の自分の状況を思いもしませんでしたが、歩き出した道は今の自分の方向に確かに向かっていたと思いました。
そして、未熟で恥を晒してもいい、情熱を持ち続けようと思いました。

デルタブルース

2007-04-27 | 万年筆
学生の頃、戦前のデルタブルースに学院坂のローソンの四辻で出会い、私の血になっています。
ノイズだらけの録音の中から聞こえる、アコースティックギターの荒っぽい演奏とうめき声。未知の世界ですが、悪魔に魂を売ってブルースマンとして一人前になったという話も何人ものアーティストたちの伝説として伝えられていて、本気にしたくなるような鬼気迫る演奏を聞くことができます。
そんな伝説のブルースマンの一人、サン・ハウスが戦後再発見されて1965年に最後の力を振り絞って吹き込んだCDをデルタブルースの名盤として『ファーザー オブ ザ デルタ ブルース』をご紹介します。
万年筆とデルタブルース、全く異質で時代の中でも重なることのなかったものかもしれませんが、シンプルなものの中にこそ、本当に良いものがある。
私の感性は一貫してそのように働いてきました。

退職の理由

2007-04-24 | 万年筆
今回の私の決断がすごく急だったと周りの人たちは思っているようですが、入社した時からイメージしていたことだったので、私自身それほど不自然なことではないと思っていますし、お客様方もそうするような気がしていたとおっしゃって下さっていますので、それほど自然に反したものではないと考えています。
ただ、多くの人たちに言ってきたことですが、社長になりたいとか、店を持ちたいという欲はなく、ただ自分自身をもっと世の中の役に立たせることができる方法があるのではないかと思っていました。
それが転職など他の組織に入ることによって実現するのでしたら、そうしたでしょうし、雇ってくださる会社があるのでしたら、喜んでそうしたと思います。
しかし、お世話になったナガサワ文具センターは会社としてはすごくたくさんのことを私にさせてくれたと思っていて、ここまで一人の社員に任せてくれる会社も他にないと思いましたので、独立という厳しい道を選択しました。
15年の会社員生活の中で感じ続けて、最後まで馴染むことができず、退職のひとつの理由になったことがあります。
それはそれぞれの会社によって文化があるということでした。
同じ100万円という金額の稼ぎ方が違うという問題は日常の仕事の仕方も違ってきますし、仕事の価値も違ってきますので、それは非常に根深いものだと思っていますし、理解されなかったらなかなか肩身の狭いものです。
私は会社文化を決して否定しませんし、会社のスピリットとして尊重していましたが、私にはできないということと、正解ではないと思っていたことが、最後まで馴染めず、自分を適応させなかった理由です。
しかし、それでも15年間もい続けた理由は、組織の中にいるという安心感を手放せなかったと言う他はありませんが、その組織にい続けながら反対だけしているのはただのへそ曲がりだと思いましたし、何も生み出さないただの評論家なのではないかと思い出した果ての決断でした。

15年で得たもの

2007-04-22 | 万年筆
会社のホームページで私が退職することが公になり、たくさんの人たちからお気遣いの電話をいただいたり、様子を見に来ていただいたりとか、とても心強く思いました。
皆様はどこの部署で仕事をしているか分からない私を探し出して、私の説明を聞きます。もし私が捕まらなければ、上司から説明を聞くつもりで電話されていきていると聞いて、その思いやりに感動しています。
私が15年間の会社生活で得たもの、それは素晴らしい人たちとのつながりだと思っています。
今は思い出がたくさん詰まっている、センター街の店で明るいスタッフたちと一緒に仕事をしています。
これから、このページで近況、予定など様々な報告をさせていただきますので、これからもよろしくお願いいたします。

とてもいい会社

2007-04-11 | 万年筆
その女性は高校卒業後すぐにその会社に就職しました。
それから42年間働き、先日定年退職を迎えました。
在職中、結婚、出産、育児と会社から離れなければならないこともありましたが、会社は彼女の席を空けてくれていて、戻った時、気持ちよく迎え入れてくれました。
家庭を守りながら、会社で働くことは並大抵のことではありませんが、そんな彼女に理解を示してくれた会社と同僚たちに心から感謝していました。
「とてもいい会社です。」
もちろん大企業でしょうが、42年間勤めあげた彼女からそんなふうに言われる会社が本当にあります。
私たちは違う方向でもいい、定年まで働いてくれた人がそんなふうに言える会社を増やしていかないといけないのだと思いました。

朝型を宣言

2007-04-03 | 万年筆
店の営業時間が10時から21時になり、レジを締めたりして帰ると、23時過ぎの帰宅になってしまいます。
それから夜食を済ませ、風呂に入ると0時半とかかなり遅い時間になってしまい、その後のメールチェックや文章作りが眠気と戦いながらの作業になってしまいます。
何とか惰性で目的を果たすと3時とか4時ということも珍しくなく、翌朝7時には起きるので、ここ数年続いていた慢性的な寝不足状態もあり、この生活を続けるのが困難になってきました。
何とかしたいと思って出した結論が、笑われそうですが、朝型生活です。
ずっと宵っ張りの生活を続けてきた体にとっては、すごい結論なのです。

I Love Pen I Love Letter ~手書きの味わいに惹かれて~ に行って来ました

2007-03-22 | 万年筆
阪急百貨店で開催されている I Love Pen I Love Letter ~手書きの味わいに惹かれて~ に行って来ました。
毎年日本橋三越で開催されている万年筆祭関西版という振れこみで聞いていたイベントだったので、休日でしたがスケジュールが厳しかったのをかなり無理をして行って来ました。
阪急百貨店の1階で開催されているということで、すぐに見つかると思って行きましたが、横文字のイベントタイトルだったため見落としてしまい、少し探してしまいました。
会場の各メーカーのブースにいる人たちは知っている人ばかりで、取引のない大橋堂さんの方もお会いしてことのある人でした。
セーラーのインクブレンダーの石丸さんは前日テレビの取材を受けたとのことで、テレビを観たというお客さんが何人も来られていて、お忙しそうでした。
中屋万年筆のブースにお馴染みの二人、吉田さんと佐藤さんがおられしばらく話しをしました。
吉田さんに美しくストーリーのある蒔絵の新作を見せていただきました。
中屋万年筆はそろそろ発展の第3段階に入ったようで、かなり精巧で迫力のある蒔絵や加工品の作品がそろっていました。
タイトル通り、クレイン、アルパ、コンケラーなど各種レターも揃っていて、多くの女性のお客様が見ておられました。
全体的にスペース不足で、各メーカー窮屈そうなのが気の毒でしたが、関西でもこのようなイベントが開催されるのは本当に良い事だと思いました。
今後の発展に期待したいと思いました。

I Love Pen I Love Letter ~手書きの味わいに惹かれて~は阪急百貨店本店1階 ザ・メーンステージ で3月21日(水・祝)~3月27日(火)まで開催しています。

携帯電話

2007-03-08 | 万年筆
今まで携帯電話をもっていませんでした。
「携帯の番号を教えて欲しい」と言われて、「持っていないんですよ」と言うと変人のように思われていたと思います。
私の生活の中で携帯電話の必要性は感じられませんでしたし、それによる不利益の方が多いように思っていましたので、持っていませんでした。
しかし、私個人の連絡先が必要になり、持つことにしました。
それを持つことによって何も変わりませんが、人とのつながりをより強固にする、コミュニケーションを助ける道具として考えるのならいいのかもしれません。

子供っぽい文化を変えたい

2007-02-20 | 万年筆
ひとつの物が取り上げられ話題になると、皆がそれに飛びついてそれが主流になってしまい、皆がそれを使っている。
私はあまのじゃくなので、いつも流行とか主流のは違う方向に行きたいと思っています。
でも万年筆を道具として使う人にはそんな人が多いように思いますし、もしかしたら私はそんな人たちの影響でそうなってしまったのかもしれません。
本当に皆さんにはたくさんのことを教えてもらったと思っています。
自分の価値観をしっかり持っていて、流行に流されない。そんな大人の感性を持っている人のための仕事がしたいと思っていて、そんな人たちが集える空間、気に入って使えるものを提供するのが自分の役目だと思っています。