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元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

Kの買物

2008-02-08 | 万年筆
定休日の水曜日、六甲アイランドにある神戸合同会計の大原先生を訪ねる前に、届け物やペンケースの仕入れがあり、ル・ボナーさんを訪ねました。
サンプル製作中のブリーフケースがブログを見ていて、気になっていましたのでぜひ見せていただきたいと思っていました。
ブッテーロという非常にしっかりした、発色の美しい革を使っていて、カッチリした感じの鞄ですが、取っ手の延長線が本体から独立して回りこむ独特の構造、デザインを持っていて、オーソドックスなブリーフケースのデザインですが、センスのいい抑えた個性の鞄でした。
すでに予約が入り始めているということで、その鞄は女性でも男性でもおしゃれに使えそうでしたので、必ずヒットする商品だと思います。
来店されるお客様に見てもらって、改善点を修正しているということで、そういったオープンさが松本さんの強味だと思いました。
仕事の話をしたり、多少真剣な話をして、話に熱を帯びて集中していましたので、同行しているスタッフKの存在を忘れていました。
何もしゃべらず大人しくしていると思っていたら、ハミさん作の鞄を肩から下げて、鏡に映していました。
11月末に来た時に、タクヤさんのペンケースを買ったばかりでしたが、ル・ボナーさんの鞄はずっと欲しかったとのことで、今日はどうやら狙っているようでした。
オレンジとブルーで迷っているようでしたが、私たちのアドバイスもあり、思い切ってオレンジのミセスを「これください。」と買ってしまいました。
ル・ボナーさんの鞄は神戸に住むセレブの象徴だと勝手に思っていますが、Kもついにそれを手に入れてしまいました。
それにしてもKのお金の使いっぷりには感動すら覚えます。
私だけで、ペンが7本、鞄が2つ、ペンケースが3つ買うところに居合わせています。
欲しいと言っていた物は必ず手に入れるK、恐るべし。

W先生登場

2008-01-29 | 万年筆
私はすごく恵まれていて、様々な分野に先生と呼べるお手本となる人がいますが、その中の一人で、デザインや物の考え方について強い影響を私に与えた人がオープン直後に激励の電話はいただいていましたが、オープン4ヶ月にして、初めて来ました。
企業のブランディングや意匠などを手掛けていて、その道では有名な人で、名前を言えば知っている人もたくさんいると思います。
聞くと何度か来たけれど、お客さんがいたので入らなかったとのことでした。
なぜかずっと私のことを気にしてくれていて、6,7年前、先生の家に遊びに行った時、シンプルで素材感のある物のあり方について強烈な印象を受けましたし、その後もいろんなことを教えてくれました。
とても型破りな人で、会社にいた頃昼休みに連れ出されて、お構いなしにビールを飲まされたこともありました。
私がよく行くビアレストランに行ったときには、こんな場所に来たのは初めてだと、とても喜ぶような仙人のような人です。
私のシンプルで素材感のあるもの、伝統工芸への傾倒も先生からの影響に他ならず、とても懐かしく再会しました。

えべっさんと鳥鍋の宴会

2008-01-11 | 万年筆

定休日の昨日、商売人の端くれなので兵庫区の柳原えびす神社にお参りに行きました。

夜は大騒ぎになる兵庫駅前の通りも、昼は比較的静かで穏やかな気分で神社に入りました。境内では人形浄瑠璃を演っていて、なかなか熱気溢れる雰囲気でした。そんな中、お参りをして、お札を手に入れて、駅に戻る途中の屋台を堪能しました。

大学時代の彼女から夜店を楽しむにはひたすら食べることだと教えられてから、それを守り続けている情の厚い私は、ポテト、たこ焼き、とうもろこし、たい焼きなどを食べ、屋台で豪遊しました。

 夕方からは、ル・ボナーの松本さんからお誘いいただいた「やたら美味い」という鳥鍋を食べることになっていて、店に行き、灯りを点けて待っていました。すぐに松本さんと著名なライターNさんが入って来られるました。お二人とも、分度器ドットコムの加藤製作所製の鉛筆エクステンダーに食いついていて、絶対に必要ではないけれど使っていて可笑しいというその物の魅力を理解してくれました。

Nさんは20数年間いろんな雑誌にいろんなジャンルの記事を書いてこられた有名なライターで、その話題の豊富さと面白さに引き込まれてしまいました。モンブランピックスを買い集めた話などを聞いているうちに時間になりましたので、もう一人の参加者鞄職人のバゲラさんhttp://www.bagera.jp/と落ち合うため、三宮に出ました。

松本さんのブログで何度かお名前は拝見していましたが、バゲラさんとお会いするのは初めてでした。職人らしい個性的な風貌でしたが、腰が低く、話していてとても楽しい人でした。

何と四人ともお酒が飲めないということで、ノンアルコールの鳥鍋の宴会が始まりました。絶品の鳥しゃぶとつくね、底に沈んでいる鶏肉が特に美味しく、お腹いっぱいになりましたが、「ものすごく美味い」最後のラーメンまで何とかがんんばらないといけません。Nさんと松本さんのスケールの大きな道楽話(Nさんは趣味が仕事でもありますが)にもお腹がいっぱいになりました。自分たちのビジネスに関するシリアスな話もしながら、中身の充実した宴会は、鳥のダシがたっぷり出た、鍋に入れられたラーメンで仕上がりました。

2軒目はすぐ隣のバーヘミングウェイでした。そこではシガーも吸うことができて、バゲラさんと私が試してみることになりました。手に慣れない太い葉巻をぎこちない手付きで、二人で燻らしていましたが、何かリッチな気分で口元がほころんでしまいます。バゲラさんは私より5つ年下ですが自分の工房を持ち、職人さんが4人もいるそうです。とても素直で心の大きな人で、本当は耳が痛いであろう松本さんの率直な意見にも真摯に聞いていました。

Nさんは知らないことはないのではないかと思えるほどの博識な人でしたが、その話の上手さはとても勉強になりました。これだけおもしろい話をする人の文章はきっとものすごくおもしろいと思いましたし(恥ずかしながら、まだNさんの文章をご本人のものだと意識して読んだことがありませんでした)本当の大人の道楽人に初めて会って、それは周りの人をも幸せな気分にするものだと初めて知りました。大阪行きの終電間近、車で帰る松本さんとバゲラさんと別れた後、三宮駅でNさんと握手をして別れました。


再会

2008-01-05 | 万年筆

今日、人と人とのつながりが懐かしい再会をさせてくれました。

震災直後、私の下でアルバイトとして働いてくれていたSくんが店に来てくれました。

アーケードが落ちている青空の下、私とSくんたちアルバイトは店頭販売をしていました。晴れるとビル解体の粉塵が舞い、雨が降ると逃げ場所に困る最悪の環境の中、私たちは冬を乗り越え、Sくんたちは自分たちの生活に戻っていきました。当時大学の合格発表前だったSくんは18才でしたが、今は小学校の先生をしているとのことで、お互いのあまりの変わり振りに時の流れを感じました。

Sくんがなぜ私の店を知ったかというと、Sくんの家の近所にサイクルショップトマト(http://www.cstomato.co.jp/)というとてもこだわりの強い、誠実で本格的な自転車屋さんがあり、Sくんはそこのお客さんで、トマトのご主人から私のことを聞いたとのことでした。トマトのご主人は当店のお客様で、ご商売のことなどいろんないい話を聞かせていただいていましたので、強いつながりを感じていました。Sくんはトマトのご主人から聞いて、わざわざ姫路から来てくれたのですが、人と人とのつながりは時には思わぬ出会いをさせてくれるのだと思い、嬉しくなりました。

ちなみにSくんの近所にフラワーショップふじよしという花屋さんがありますが、そこの若旦那も私がよく知る当店のお客様でした。


切り抜き

2007-12-26 | 万年筆
定休日でしたので自宅の机まわりの大掃除をしました。
仕事環境に変化のあった今年は特に片付けないといけないものが多く、いっぱいのゴミ袋がいくつもできていきました。
以前の企画の資料(没になった企画が山ほどありますので)、メモ、イラスト、ファイルなど、いつか役立つ日が来ると思って、机の引き出しや本棚にしまっておいて、二度と目を通すことのなかったものがたくさんありました。
6年前に一度引越しをしていて、その時にきれいにしたはずでしたが、後の6年でたまったゴミでした。
そんなゴミの中に雑誌の切り抜きが詰まった厚いファイルがありました。
いつもきまって購読していた雑誌で、世界で何が起こりかけているのか、どんな動きがあるのかを教えられました。
そんな中で、特に気に入った記事を切り抜いて取っておいたものでした。
大きな仕事をしている人たちのクリエイティブな思考の源であるワークスペース、道具などについて集められたものが少しずつ変わっていき、デザイン中心のコレクションになっていきました。
それらは私の血になって、本人の思いもしないところで、いろんな形で現れてくれることがあります。
紙の資料は全て捨ててしまいましたが、切抜きのファイルだけは元の場所に戻しました。

六甲アイランド定期訪問

2007-12-19 | 万年筆
毎月第3水曜日に会計士の先生のところを訪ねることにしています。
小さなお店の帳簿くらいががんばれば自分でできると言ってくださる方もいますが、私はいろんな人と一緒に仕事ができることに価値があるように思っています。
会計士の先生もル・ボナーの松本さんから紹介してもらった、神戸合同会計の大原先生で、六甲アイランドに事務所を構えておられるので、毎月1度は必ずこの人工島に来ることになっています。
六甲アイランドはとても不思議なところだと思います。
三宮、大阪へ通勤される方のためのベットタウンという面と工場、事務所など会社が集まっているという面と二つの面が高い次元で両立されているからです。
この人工島の中で仕事も生活もすることが可能で、島内独特のコミュニティが存在しているように思います。
そんな六甲アイランドのコミュニティの中にも存在しているル・ボナーさんの人脈を紹介していただいて、大和出版印刷や神戸合同会計などの会社と縁ができました。

六甲アイランドに来た時に、勝手に足が向いてしまい、やはりル・ボナーさんは素通りすることができません。
松本さんの万年筆好きは今では有名ですが、ハミさんも負けてはいないことを薄々は気付いていましたが、今日確信しました。
お客様からのプレゼントなどで本数が増えていましたし、愛用の金魚柄の中屋万年筆はタクヤさんのとてもきれいなペンケースに納められていました。
そして、ル・ボナーさんからの荷物にはいつもハミさんのカラーインクでの手書きの、とても粋なお手紙添えられています。
松本さんは最近手に入れたスティピュラダヴィンチを首から下げていましたし、なかなか夫婦共通の趣味を持つことは難しく、理解されない人が多い中、とても幸せな環境にある珍しいご夫婦です。
松本さんもご自分のスタイルを持っていてかっこいいですが、ハミさんもとてもかっこいいと思います。
ここには万年筆に関するニュースがいつもあって面白いですよ。


素敵な出会い

2007-12-14 | 万年筆
お客様のつながりから、素敵な出会いをさせてもらいました。
三宮で和食の店をされているTさんは、万年筆で10数年続けられている日記を書こうと思い立って、当店でアウロラフォーコを買ってくださいました。
Tさんの紹介で、カフェ・ハルをされている同じくTさんが来られ、カフェ・ハルのTさんの紹介でカフェ・クリュのオーナーさんが来られました。
3人とも自分のスタイルをしっかりと持っている、とても素敵な女性たちで、とっても刺激を受けました。
カフェ・ハルが当店から、とても近い距離にあるということで、オープン前の時間を利用して遊びに行きました。
JR、阪急の高架の北側の道の山側、花隈駅西口のすぐ西にカフェ・ハルがありました。
小さな植え込みに緑があって、とてもかわいらしいお店で、内装もオーナーTさん自ら設計したこだわりの空間でした。
カウンターの正面にはアンティークもある、カップのコレクションが飾られていて、言えば好みのカップにコーヒーを淹れてくれるとのことでした。
私は今月のおすすめコーヒー「マサイ」をこげ茶色のどっしりとしたカップに淹れてもらいました。
もっと尖った味かと思っていましたが、ネルドリップで抽出されたマサイは、飲みやすくとてもさわやかな味。モーニングコーヒーにぴったりでした。
表は車が行き交い、駅に向かう人が通ったりしていますが、店内はおしゃれな曲が流れ、居心地の良い、ハルワールドでした。
Tさんとのおしゃべりも心地よく、あっという間に店を開けなければいけない時間になったのでおいとましましたが、時間が経つのを忘れてしまうお店のひと時を楽しみました。
また一人魅力的な人、お店にめぐり合うことができました。
(カフェ・ハル 神戸市中央区北長狭通7-1-8 TEL078-341-4620 平日8時~20時、土日祝10時~18時営業、水曜定休)

ミネルバボックス~ある定休日~

2007-11-14 | 万年筆
ミネルバボックスは牛脂油がたくさん染み込ませてあるので保革油は必要ありません。水で濡らした布で全体を軽く湿らせ、乾いたら乾いた布で磨き上げるようにこすると艶がでてきます。
自分の手でその革の表情を作り上げることができるのがこの革の特長です。

私が以前から一番好きな革だと思っていたミネルバボックスの革を使った、フラソリティー・バイ・ルボナーのバックを当店でも始めました。
取り扱い開始にあたり、定休日の昨日ルボナーさんを訪ね、ミネルバボックスの手入れの仕方などのレクチャーを松本さんから受けてきました。
月並み言い方で、それは松本さんの凄さを全く言い表せていないと思いますが、革の豊富な知識、深い愛情が松本さんにいくつもの名作鞄を作らせます。
写真の鞄は松本さんのブログでも紹介されていた、あるお客様からのオーダー品最上質のボックスカーフを使ったあまりにも美しいブリーフケースです。

ALWAYS~続3丁目の夕日~

2007-11-10 | 万年筆
ALWAYS~続3丁目の夕日~を観て来ました。
第1弾がヒットし、今作も大変話題になっていましたので期待していました。
ご存知の方も多いと思いますが、映画の舞台は昭和34年頃の東京都港区周辺。終戦後間もなくで、日本が高度経済成長で先進国の仲間入りをする直前のまだ人々がのんびりとしていた頃の話です。
家も車も行動範囲も小さく、裕福ではないけれど、皆自分に与えられたものに満足して、しかし、夢を持ち続けて正直に生きた人たちが出てきます。
なぜ、今昭和34年なのか?団塊の世代の人たちが少年時代を過ごした時代だから、興行収入が見込めるという理由もあるかもしれません。
しかし、それだけではないような気がしています。
現代の我々の暮らしは、たくさんの物質によって太ってしまいました。いるものも、いらないものも人が持っているという理由だけで持っているものがたくさんありますが、自分らしい暮しというものに、多くの人が気付き始めたのではないかと思っています。
それは物質よりも、真心を大切にするといった言い方しか思い付きませんが、そんな時代が来ています。
物がなくてもいい、金持ちでなくてもいい、人を思いやる優しい気持ちがあれば、幸せに暮らすことができると映画は思わせてくれますし、確かにそれは現代の多くの人たちが気付き始めた価値観に非常に合っているような気がします。
収入が多くなくてもいい、人より高い車に乗ってなくてもいい、豪華な家に住んでなくてもいい、数を誇る人は数の前に心が貧しくなります。数字で計れないものには永遠の価値があるような気がしませんか?

いつかは・・・。

2007-11-02 | 万年筆
皆さんはご自分が何か目標を達成した時に買おうと思っている万年筆はありますか?
昭和の時代のある車の宣伝の「いつかはク○○ン」みたいで少し照れくさい話ですが、私にはあります。
あまり人には言ったことはありませんし、自分の立場を考えるとあまり口外しない方がいいのかと思っていました。
会社を辞めて自由に使えるお金は増えましたが、買えるお金があるから買うのではなく、目標を達成した時に静かにその万年筆を買おうと思っています。
それが149です。
意外に思う人もいるでしょうし、私の知っているお客様のほとんどがお持ちです。私も何度も書いたことがあり、家にあったこともありましたが、まだ自分のものとして所有したことがありません。
149が全ての万年筆より優れているとは思いませんし、自分にとって必要なものなのかも分かりません。皆さんにとってはそれほどの存在のペンではないのかもしれません。
しかし、万年筆を仕事にするようになった時、自分がそのペンを手にできるタイミングが来るまで、心の隅に置いておこうと思いました。
それまでに何本かのペンを自分のものにすると思いますが、私が149を手にできるのはまだ先のことのように思っています。
それまで149が今のままでいてくれたら、と思っています。