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元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

仕事着

2014-09-21 | 仕事について

ずっとインクのハネに悩まされてきました。

インクが飛んでも目立たないブルックスブラザーズのブルーのシャツを選んできたし、顔に飛んだインクはホクロだと言い張ってきた。

でもずっとその対策はしたいと思っていました。

テレビや雑誌などで職人さんが出てくるとどのような服装をしているか気にしてきたし、エプロンについても考えていました。

以前、イル・クアドリフォリオの久内さん夫妻がイベントの時、靴を磨く作業に取り掛かる前に薄いコートのようなものを着ているのを見ました。

聞いてみると、イタリアなどヨーロッパの職人さんたちは普通に着ている作業着で、白衣の色つきタイプのようなものだということでした。

とてもさりげなくて、プロフェッショナルな感じがしていいなあと思っていました。

インターネットで調べてみると、ショップコートという名前で、生地などを変えて普通に着る服としてもあるようでしたが、久内さんたちが着ているような、ものはなかなか見つかりませんでした。

先日、西宮のショッピングセンターをブラブラと歩いていて、新しくできたお店に入ってみると、職人の仕事着という名前で売られているショップコートを見つけました。

服に飛ぶインクも気になっていたけれど、今まで気にしてなかった普通の服でペン先調整に掛かる特別感のなさが気になってきたし、何か気持を切り換える儀式のようなものがあって欲しいと思っていましたので、この仕事着をはおることはそれにちょうどいいと思いました。

ペン先調整は、万年筆を販売するために必要なスキルだと考えていたけれど、最近この技術の探究心に取りつかれている。

もっと良い調整をしたい、自分でしか成し得ない書き味を提供したいと思うようになり、その気持がこの仕事着に表れているのかもしれません。


一番愛用している万年筆(原稿募集中) 9月末まで

2014-09-14 | 仕事について

来年初頭にお客様からの投稿をまとめた冊子「文集雑記から2」を発売します。
タイトルは「一番愛用している万年筆」で、一番愛用されている万年筆についての文章を1000文字程度にまとめてお寄せいただけたらと、思います。
締め切りが9月末になります。
原稿は、メール(penandmessage@goo.jp) 、郵送、FAX(078-360-1933)なんでも構いません。
ぜひ、ご参加下さい。

私もひとつ書いてみました。

 

「一番愛用してきた万年筆」

気持良い書き味が好きで使い始めた万年筆でしたが、柔らかさを追究したり、希少な限定品に惹かれたりということはありませんでした。

それよりも自分の精神性的な支えとなるもの、言い古された言葉かもしれないけれど、武士の刀のような存在のものが欲しいと思うようになりました。

書き味が良いと思えることは当然の条件として、こんなペンを持つような人になりたいというのが、選ぶ条件のようになっていたように思います。

そんなふうに思うようになった万年筆はと考えて、自分のコンプロット10を開いて、アウロラ88クラシックを選びました。

88クラシック自体は、この店を始めてしばらくしてからの、40歳以降に使うようになりましたので、それほど長い付き合いではないけれど、88クラシックのペン先はもともとアウロラオプティマについていたもので、それを金キャップの88クラシックに付替えたのでした。

30代までは金など有り得ないと思っていて、銀金具あるいは金がそれほど目立たないものばかりに惹かれていました。

金に何かオヤジ臭さのようなものを感じてしたのかもしれません。

でもそれなりの歳になって気付いたら、金に惹かれるようになっていて、金の全てを肯定するようになっていた。

万年筆は黒金のものばかりで面白くないと思っていたのが、黒金が一番飽きがこずに長く使うことができる組み合わせなのだと思うようになっていたし、オヤジ臭いと思っていたのは、そこに男臭さと見るようになっていた。

童顔が嫌でヒゲを生やしてみたりしたけれど、それと同じ理由で現行品で最も男臭い万年筆だと思っている88クラシックに惹かれたのだと思います。

アウロラはペン芯がエボナイトで、馴染むとよりインクを濃く、多く供給してくれるようになるし、鉛筆のような書き味だったペン先は長年の使用で鍛えられたかのように、粘りのある柔軟性を持ち始めています。

このペン先とは15,6年の付き合いになっていて、万年筆は使い込むととても良い書き味に変ってくれるということ、万年筆とインクとの相性というものがあるということを教えてくれた。

そして何よりも、こんな万年筆が似合う大人の男になりたいと思わせてくれた私にとって先生のような万年筆がアウロラ88クラシックです。

 


移ろいゆくモノ

2014-09-07 | 仕事について

普段東京でなくても商売はできると思っていますし、憧れも抱いていないけれど、1年以上訪れていないと気になってきます。

仕事をするようになって、東京は私にとってたまに訪れて、何らかの刺激を受けて帰ってくる場所でした。

夏休みを利用して、久し振りに東京を訪ねてきました。

遠く離れた神戸にも情報はだけは入ってきますので、気になる、見ておきたいお店はありました。

そういうお店を見て、お手本にするのではなく、そういった新しい動き、強い力や時流に対して、自分はどのような方針をとって、どの方向に進んだらいいのかを考えることに意味があるし、だからこそ仕事は楽しいと思える。

少し前から肌で感じていることだし、雑誌などでもよく特集が組まれているので、そうなのだと思いますが、文房具が地味でマニアックな存在から、少し華やかな、より多くの人が目を向けるものになっている。

あまり言いたくない、認めたくないことだけど、何かブームのような感じになっています。

今ブームだと言われているものの中でも、変わらないものをつかんだところは残っていくだろうし、でもほとんどが消えていくのかもしれません。

今まで文房具、万年筆など、自分の身の周りにブームが訪れたことがありましたが、それらを前にした時、直感が警告音を鳴らしていて、それに従ってきました。

その直感が正しいのか、ただ単に天邪鬼な性格なのか、分らないけれど、自分の人生のほぼ全てである仕事がブームの中にあるとか、ブームが過ぎ去ったとか言われたくないし、そんな軽いものであって欲しくないと思っています。

毎回、自分の得ている情報の中で旬だと思える場所を毎回訪れています。

行くたびに旬な場所は、それを担当するいくつかの場所の間でキャッチボールされていて、流行に敏感な、こだわりのない人がそのたびに行き来しているという印象を受けて、物事の移ろい行くスピードの早さ、厳しさを感じますが、その中で変わらないものを見つけることができたら、それはとても勉強になる。

 本当に良いものとか、良いお店というのは長く続くものだという考えが根底にありますので、自分の店も早く20年でも30年でも、時代の移ろいに関係なく経って欲しいといつも思っています。

久々に揃ったメンツ

2014-08-26 | 仕事について

店を始めた頃、気にしていたのは自分がやろうとしていること、やっていることが、世の中の定説のようなものから、大きく外れていて、みんなその間違いに気付いていて、遠巻きに見ているのではないだろうかということでした。

私は自分の仕事について、とてもシンプルにとらえていたけれど、何かとても大きな仕組みのようなものを自分の無知によって無視しているから、自分の前にお手本とするべき人や店がないのではないかと少し心細くなっていました。

前例がないということで、やり方が間違っているのだろうかと真剣に思ったことは、今から考えるととても可笑しくて、前例があるかないかとか、セオリー通りではないとか全く気にしなくてもいいことだと、今だったらすごくよく分かるけれど。

当時教科書に載っていなければ正解でないのではないかと心配になったりしていたけれど、本当は教科書に載っていないことが一番大切で、誰もがそれを見つけたいと思っている。

ル・ボナー松本さんが万年筆の魅力に目覚めて1本差しと3本差しのペンケースを作り、それを大和出版印刷の武部社長に伝染させて、万年筆で書きやすい紙を使った上製本ノートを作るきっかけになり、最近グラフィーロという万年筆で書くということを究極まで突詰めた紙と紙製品を発売するに至っている。

 

二人が万年筆の関連する物を作り出したのが、ちょうど当店が創業した7年前で、その時からことあるごとに連るんで何かをしてきた。

その活動や関係は教科書ではとても習えないもので、当然二人は自分たちがしていることが前例にないことだからと心配になったりはしない。

すでに大きな力を持っている松本さんと武部社長に助けられて、引っ張られてここまで来た感覚は強いけれど、きっと誰でも創業時は非力で、誰か力のある人の助けが必要でそれがないとなかなか難しかったのではないかと、今も有難い気持は持ち続けています。

 

大和出版印刷の武部社長が取材を受けて、その流れで編集者の人たちとの親睦会ということになり、生田神社前のオコゼのお店で久々に3人揃いました。

本当に、ただ好きなモノの話や、あの時はああだった、こうだったと面白、可笑しく話して、とても楽しんで、結束を改めて強くできたと思うけれど、濃いキャラクターである二人とともに、お互い影響を与え合っての共同作業が、それぞれ個別の活動にも反映されてきた経過のようなものも思い出しました。

地理的にも、関係的にも、こういう人たちが傍にいる自分は、とても恵まれていると思っています。

 


変わること、変わらないこと

2014-08-24 | 仕事について

就職したばかりの頃、仕事の連絡はFAXでした。

長いアナログの通信音を聞きながらFAXを送っていましたが、気がついたら電子メールが連絡の主な手段になっていたし、インターネットも普通のことになっていました。

特に時代についていかなければいけないと意識していなくても、それは自然に私たちの生活に定着していて、仕事の道具になっていた。

テレビやラジオが普及したのと同じように、そういった道具は移り変わっていくのかもしれません。

でもいくらスマートフォンとパソコンの連携機能が良くなったり、クラウドにデータを置けて、閲覧して共有することがやりやすくなって普及していたとして、手帳に万年筆で書くということを私は止めないし、それを勧め続けることは変わらない。

それは仕事の原点のように思うし、今もそれが楽しくて万年筆を使っているし、それが仕事や生活を楽しくする正解だと思っているので、世の中が変わって行っても当店は変えたらいけないものだと思っています。
 

商売もインターネット通販が普通になっていて、これは20年前にはなかったものだけど、そこに介在する人の心は変わらない。

店はお客様への思いやりを商品とともに送り出し、お客様がその思いやりを感じて受け取ってくれれば完成し、それが伝わらなければ、未完成という、商売の基本のようなものは変えようのないものです。

その思いやりが、会社によっては価格のこともあるし、スピードのこともあるし、その他のことでもあるという違いだけなのだと思います。


世の中の変化に対しては、逆らっても仕方ないもの、逆らうべきもの、そして変わらないものを見極めたいといつも思っています。

 


一番愛用している万年筆(原稿募集中)

2014-08-19 | 仕事について

「文集雑記から」第2弾として「一番愛用している万年筆」というタイトルの作文を募集しています。1000文字程度で、一番愛用している万年筆について、どんな使用感か、どんな思い出があるか、どんなインクを入れているかなどについて語っていただきたいと思います。
締め切りは9月末になります。手書き(手渡し、郵送など)、メール(penandmessage@goo.jp)形式は問いません。 

たくさんある万年筆の中から1本を絞るのは非常に難しいという声が聞かれ、まだまだ投稿が少ない状況なので、ぜひご投稿いただきたいと思っています。

自分がとても良いと思って気に入って使っている万年筆の良いところを伝えて、その万年筆を使う人が増えたら、とても嬉しいと思います。

私はその快感を知っていますので、今回の作文で皆様が書かれた原稿によって、同じ万年筆の愛用者の方が増えたら楽しいと思っていただけるのではないかという想いもありました。

もちろん私も作文を書くつもりでいて、今どの万年筆にしようか思案しているとこです。

一番使用頻度が高く、ブログの下書きなど立って書く原稿のほとんどは、ペリカンM450を使っています。

アウロラ88のヌルヌルの書き味も気に入っていて、途中ボディがオプティマから88クラシックに代わっているけれど、一緒にいる期間は長く、よくぞここまで成長してくれたという感じで手紙によく使っています。

オマスパラゴンも手紙用だけど、オマスが言うように某有名万年筆を超える万年筆だというのも本当だと思い始めています。書き味がとても良く、使っていていつも嬉しくさせられる、その良さをもっと伝えたい万年筆です。

ペリカンM1000、M800は、誰もがその良さを認める、完璧な万年筆で、そして手紙としてよく使っているけれど、きっと誰かが書くと思う。

パイロットシルバーンは毎日使う日常の万年筆。店用の記録に使っているシステム手帳に、保証書に、仕事の時間中はほぼシルバーンを使っています。ペン習字にもこれを使っていて、なぜか一番きれいな文字が書ける万年筆です。
一番愛用している万年筆というテーマに合っています。

最近、ファーバカステルクラシックエボニーの出番が増えています。
日記、本を読んで感じたこと、考えたことなど、私の使用で一番華やかな勉強用に使っているシステム手帳に書く時に使っています。
けっこうな文字数を書いても楽に書けるコツのようなものが分ってきて、書くのがとても楽しくなっています。

本当に決めかねているけれど、必ずどれか選んで1000文字の作文にしたいと思っています。
でもとても楽しいことだと思っています。 


借り入れ

2014-07-29 | 仕事について

店を始めた時に金融機関から借りたお金の返済が終った。

事業を始めるには、少ない方だったかもしれないけれど、貸してもいいと言われた金額いっぱいまで借りて、その数百万という金額は私には気が遠くなるような金額で、7年と設定された期間もとても先のことのように思えました。

70歳手前まである家のローンもあることを思うとなかなか恐くて借りることができないと思うけれど、借りないと何も始まらなかった。

この7年で、新型インフルエンザ、リーマンショック、東日本大震災などがあって、その都度グラグラ揺れる日本の経済の状況を肌で感じました。

幸い返済が滞るということはなかったけれど、その経済の揺れ動きがもっと激しいものだったらきっと身動きできなかった。

瞬発力をともなって事業を拡大していく資金として、融資を積極的に受けてやっていく会社もたくさんあって、それはそれぞれの会社の考え方だけど、ウチの考え方はそちらではないし、順調な時はいいけれど、揺れがあった時に当店の規模ではどうしようもなくなってしまう。

お金に関して考えると7年という期間はとても長く、逃げ切れたというのが実感だけど、ただ借金がなくなったというだけで、これからもいろんなものとバランスを取りながらやっていくことには変わりない。

感慨はあるけれど、表面的には何も変わらず店の仕事に向かうのだと思います。

 


生きる本能

2014-07-15 | 仕事について

4月に自分の事務所を開いて仕事している同級生から様子を伺う電話がかかってきました。

まだ始めたばかりなので、ただ忙しいだけでお金にならないと言っていたけれど、元気そうでよかったと思いました。

忙しく動けることは幸せなことだと思うし、良くなっていくことにきっとつながることだと思います。

そういう話をよく聞くようになったのは、やはり40代という年代が、独立して自分の店や会社を始めるということになりやすいタイミングだからなのかもしれません。

人生の計画を立てて、自分の予定していた時に自分の店を始めることができたと言えればとてもかっこいいけれど、私の場合、全くそんなことはなくて、どうしてもそうしなければならないと自分で思って、生きる場所を求めた結果そうなっただけで、それは人間として生きる本能だったとしか思えません。

お客様のM先生とも話していてそうだと思いましたが、人間余程嫌なことや、承服できないことがないと、わざわざ借金を抱えて、大きなリスクをとるようなことはできないような気がします。

冷静に、硬い頭で考えたらどんな確率が小さくてもリスクが気になると思いますので、それしか道がないというところまで追いつめられて、やっとそういう行動に出られるのではないだろうかと思います。

それではただ逃げただけではないかと思う人もいるかもしれないけれど、逃げる気持ではそのような行動に出ることはできなくて、むしろそれは攻めの気持ちからだと思っています。

リスクが気になるのは当然で、私も考えなくはなかったけれど、最後はアホになって飛ぶしかないのではないかと思っていました。


ヒントを探して

2014-06-22 | 仕事について

最近、手帳作りの目的のためにフランクリン・コヴィーの「7つの習慣」を読みました。

読んだといっても、いくつかあるものの中から迷わず漫画版を選びましたので、読んだという感覚とは少し違うけれど。

分厚いフランクリン・コヴィーの言葉で書かれたハードカバーを読む方が味わい深く「7つの習慣」の世界を感じることができるのかもしれませんが、そんな時間的な余裕がなく、すぐに理解して、吸収したいと思いました。

でもこういう時にカッコつけずに漫画を選ぶことができるようになった自分は、もしかしたら成長したのかも?と何となく思ったりします。
やはり漫画で描かれたものの方が私には理解しやすいことが多いようで、この辺りのこだわりがなくなってきました。

「7つの習慣」はずっと以前から、おそらく10年以上前からその存在は知っていて、これまでも読んでみようかと思ったことが何度かありましたが、変な思い込みの先入観があって避けてきました。

読み始めるとなかなか面白く、ノートに書きとめておきたい言葉、考えばかりでノートが充実しました。

以前ある人から読んでおくように言われて、継続的に読んでいる論語と共通する考え方も多く、大変共感できました。

こういった古くから読み継がれてきた考えをベースに、ご本人の経験を踏まえて繰り返し考えられて、よく練られた考えを習慣にして、身につけるにはやはり手帳のフォーマットにして、繰り返し書かせることが一番伝わりやすく、習慣になりやすいのかもしれません。

でも、やっていて一番楽しいのは、自分が共感した考え方に基づいて、手帳のオリジナルの使い方ができて、それが仕事や生活に反映できた時かもしれません。