今日も一期一会

「本が好き♪図書館ブログ」のタイトル変更
本好きholyの覚え書き的日常のあれこれ

「本が好き♪図書館ブログ」からタイトル変更

19年目のholyのブログをそのまま残します。 同じ時は二度とやって来ない。これからも毎日を「一期一会」の心で過ごします♪

石田衣良 『北斗』

2012-12-11 | 本の紹介
石田衣良著『北斗 ある殺人者の回心』を読了しました。
辛く重い作品でした。

文芸誌に3年にわたって連載されていた小説です。
総ページ512ページというその分厚さも、ストーリーの重さも「これが石田衣良?!」と思いました。
私は石田衣良さんのファンです♪
軽妙でお洒落で都会的な作品や、『約束』『再生』などの心に沁みる短篇集など、
ほとんどの作品を読んでいます。
ただ、最近の作品はちょっと軽すぎるし、メディアにたくさん出てくるようになって、
「何か違うなぁ~。」と思ったりもしていました。

この『北斗』は、「デビュー15周年の結論です。」というご本人の言葉通りの重厚な作品です。
表紙にもその気概が表れているかも!
生まれてからずっと虐待を受け続けた主人公「北斗」が殺人者となっていく心理に肉薄した作品で、
読み進めるのが辛くなるほどでした。
特に少年が虐待される残虐な場面は、それが目に浮かんで耐えられなくなることがありました。
両親から命の危機を感じるほどの虐待を受け続けた少年は凍死して自殺しようとしますが、
その時に「実の父や母よりも、山頂の広場に立つ自動販売機の方が温かい。」という事実に呆然とします。
なんと淋しいこと。。。

数々の不幸な偶然が重なって、20歳の主人公は2人の罪のない女性を殺めてしまいます。
そして、主人公北斗は「早く死刑になりたい。」との思いに駆られ、
裁判のための弁護士の接見が始まってもこれから生きていこうという気持ちを持てずにいます。
この殺人を犯してから裁判が終わるまでが作品の半分を占めています。
裁判員も登場します。
主人公「北斗」、彼を取り巻く人々の、自分でも気付かなかった心の奥底が次第に明らかにされていく、
それが裁判なのだと思いました。

「かいしんする」と言う時、普通は「改心」を使いますよね。
「回心」を使うのは「神に心を向ける」時で、この言葉も作品では重要な意味を持っています。

あまりに辛かったので、次に有川浩さんの『旅猫リポート』を読みました。



私の好きな猫の作品ですし、有川浩さんも『図書館戦争』以来ずっと読み続けています。
表紙も可愛らしいし、癒されるかも・・・
と思って読み始めたら、これまた違う種類の涙なしでは読めない作品でした。
猫好きな方にとっては、よくわかるだけにつらい!
我が家のチコをより愛しく思ったのでした。

コミック 『聖☆おにいさん』

2012-12-08 | 本の紹介
楽しみにしていたコミックが前巻から1年2カ月ぶりにやっと発売になりました。
『聖(セイント)☆おにいさん 第8巻』特装版を買ってしまいました♪
これは、なんとDVD付き!

原作は、2007年からコミック誌で連載されている異色のギャグ漫画、
2009年には手塚治虫文化賞短編賞も受賞しています。
無事に世紀末を迎えた聖人イエスとブッダが下界のバカンスを満喫しようと、
日本の東京都立川の安アパートの一室で「聖」(せい)という名字で暮らすという設定の日常コメディです。
目覚めた人・ブッダと神の子・イエス、この世界を救う「最聖コンビ」の神が、
風呂なしのアパートでシェアハウスしながら「人間的」に生活しています。

ブッダは家事全般を担当。
菜食主義者のため肉料理は基本的に作りません。
また修行時代の苦行経験などから、かなりの倹約家で、数百円使うのにも厳格。

イエスはブッダとは対照的にやや子供っぽくてかなりノリが良く、天然ボケ。
みんなに優しく誰でも受け入れる性格によって様々な人と打ち解けています。
浪費家でネットが大好きで自分に厳しいブッダを困らせることが多いですが、
2人はお互いの良さを認めてとっても仲良し。

ただのギャグ漫画ではなく、仏教やキリスト教の様々な逸話が面白可笑しくストーリーの中に入っていたり、
着ているTシャツにはそれぞれの宗教で意味のある言葉が書かれていたりしてそれが楽しいのです。
ブッダが悲しむと多くの動物が周りに集まってきたり、良い事を言うと後光がさしたり、
キリストがジャンプすると天使がやってきて両腕を持って天国に連れて行こうとしたり。
登場人物も、弟子のミカエルやアナンダなど天界の人たちが次々と登場します。
仏教とキリスト教をちょっと知っているとより楽しいと思います。

私が買った第8巻にはオリジナルアニメーションDVDが付いていて、面白ーい。
この人気コミックが来年5月に映画化されます。
楽しみです♪

図書館便り 「LIBRARY NEWS 12月号」

2012-12-04 | 司書室より
図書館便り「LIBRARY NEWS 12月号」(Google版 Yahoo版)を発行いたしました。
(学校のHP更新によりPDFファイルの置き場所が変わりました)
今月号の特集は、「本・読書のちから ~読み聞かせPart3を終えて~」
先月行った朗読の感想を、各クラス2枚ずつ計100人分ほどいただきました。
冒頭の写真はその一部です。

生徒たちの感想を読んで、今さらながら本・読書が持つ力の大きさを実感しました。
作品の本質をついた感想が多数寄せられたのです。
生徒たちの力を見くびっていたわけではありませんが、
日頃、あらゆる刺激的メディアからの情報過多な世界にいる彼ら彼女らにとって、
朗読というのはあまりにも地味で面白みに欠けるだろうと思っていたのです。
わずか30分、文字も映像もなく耳だけで聞いた、初見(聞?)の作品です。
でも、生徒たちは、
登場人物の名前も、その関係性も、舞台となっている地名も、きちんと把握していました。
作品の題名「嘘」については、「優しい嘘」「許せる嘘」「悲しい嘘」という感想も多く、
中年男性と女子高校生の持つ切ない気持ちにきちんと迫っていました。

本というものはわずか30分の作品でも、これだけ心を揺さぶるものなのです。
子供でもなく、かといって大人でもない多感な青春期こそ、
本の力を借りて感情の複雑さと知識に基づいた思考力を養うべきでしょう。
目の前の現実だけが世界のすべてではない、と広い視野を持つことも必要です。
語彙力を増やすにも、本を読んで外から頭に入れてあげれば自然と増えるでしょう。
これらのことが「大人になる」ひとつかもしれません。

そんなあれこれを書いてみました。
学校の国語の授業でよく「登場人物の気持ちを考えてみましょう。」と生徒たちに質問していましたが、
実はこれがとても大切であることに改めて思い至りました。
登場人物の気持ちに寄り添うことは、現実世界で他人の気持ちを想像することに他ならないのです。
勧善懲悪でもなく、大団円に終わるハッピーエンドでもなく、
人間というものの業の深さを表現した作品が私は好きです。



ロクシタンのアロマキャンドルに癒されながらの読書する夜長が好きです。
今、石田衣良の著作『北斗』にかかりきりになっています。

映画 「のぼうの城」

2012-12-02 | 映画
大学の同窓会から始まり公私ともに充実していた11月が終わり、
気が付くと12月です。
寒くなりました。

観たいと思っていた映画「のぼうの城」をやっと観てきました。
埼玉県が全国的に話題に上ることがあまりないので、地元民としては是非観なくては!
4年ほど前、和田竜さんによる小説を読んで、
歴史小説が苦手な私でも楽しく最後まで読み終えることが出来ました。
2008年直木賞候補作、本屋大賞第2位と評価も高かったです。

その映画化、楽しみにしていました♪
当初の予定では、昨年9月17日に公開予定でしたが、
映画の冒頭と後半の見せ場で水攻めのシーンが出てくるため、大震災後公開が延期されていました。
ただ・・・主人公のぼう様を演じるのが狂言師野村萬斎さんと知った時、違和感が。
作中の城主「のぼう様」は大柄で薄ぼんやりとした「でくのぼう」、
細身で鋭利で理知的なイメージのある野村萬斎さんではどうなんだろう?
しかも石田光成役は上地雄輔さん、どっちかというと逆なのでは?

でも、この映画は野村萬斎さんの素晴らしさが際立つものでした。
特に、城が水攻めにされた後、小舟に乗って敵陣の目の前で踊る田楽舞は本当に素晴らしい!
おどけた表情の中にちらりと見せる企み、声を張っての謡、不安定な小舟の上でぶれずに踊り続ける舞、
長年にわたる鍛錬のたまものなのでしょうね。
このシーンを観るためだけに行ってもいいくらいです!
実際に野村萬斎さんの狂言も観たことがありますが、その存在感やオーラにも圧倒されました。

その他のキャストもなかなか良かったです。
心配だった石田光成役も上地雄輔さんの持つイメージに引きずられずにいい感じでした。
問題になった水攻めのシーンはかなり変更され、特に人が流される場面はほとんどカットされたそうです。
それでもかなりの迫力で、TVで繰り返し見た大津波を否でも思い起こしました。
エンドロールにはお楽しみ画像がたくさん出てきますので、
特に埼玉県民は最後の最後までご覧ください。

豊臣方の忍城攻めの総大将石田三成が率いる2万の軍勢に、
のぼう様を城主とする家臣・農民ら3,000の兵が勝利したのです!
直実節でも歌われている「坂東武者の心意気」を誇らしく感じるいい映画でした♪