角田光代 著 『方舟を燃やす』(新潮社)読了しました。
角田さんの長編を読むのは2年前の
『タラント』以来、じっくり深く読ませる作品で、
さすがと思いました!
この作品は『週刊新潮』に1年にわたって連載された小説です。
主人公は1967年鳥取生まれの柳原飛馬と、1950年代東京生まれの望月不三子の二人、
作品に描かれるのは1967年から2022年まで昭和・平成・令和の時代で、
年代も生まれた場所も違う二つの人生を交互に追う人間ドラマです。
年齢も性別も生まれも異なる二人が、後に偶然同じ場所で活動することになります。
この半世紀、様々な「不確かなもの」が日本には登場しました。
コックリさん、口さけ女、ノストラダムスの大予言、UFO、地震予知、新宗教、
カルト、自然食品、添加物、母原病、共助生活サークル、パンデミック、自粛、
ワクチン、コロナ、炎上、などに翻弄される子どもたちや大人たち。
そういういろいろなもの、あったなぁ~と思いながら一気に読み進めました。
戦時中のように生きていくのが困難なほどではないけれど、
何が正しいのか、どんな振る舞いが正しいのか、いつも探っている時代でした。
この時代を同じように生きてきた私には、とても興味深い作品でした。
子どものために、あるいはみんなのために良かれと思ってやったことが、
ちゃんと「方舟」の役割を果たして助けてくれるのか?
その方舟に間違いはないのか?
後になって初めてわかることもたくさんあります。
だとしたら何を信じるのか?
読了後もたくさんの思いが溢れてくる作品でした。