カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

キャラが重要とはこのことだ   キャラクター

2022-07-31 | 映画

キャラクター/永井聡監督

 漫画家として独り立ちを目指してアシスタントをしている山城は、スケッチ中に一家惨殺現場を目撃してしまう。警察には犯人を見ていないと言ってしまうが、この犯人を主人公にして漫画を作品化したところ大ヒットする。ところがこの漫画に描かれる殺人を模倣した殺人が実際に行われるようになり、警察の捜査は、何故作品と殺人がリンクするのかということに及んでいくことになるのだった。
 途中で確かに殺人鬼がいることが分かってくるのだが、何かこの作家との境界があいまいになるようなところがあり、幻惑される。そうした演出もなかなかに上手く撮られていて、観ている人間はいい意味で振り回されることになるだろう。漫画を描くという狂気があって、しかし人々に受ける漫画を描くためには、そのような狂気に浸らなければならないようなところがある。もともと画力はあったものの、悪を描けない人間の悪の発見に大きな転機がみられ、そうしてそこに殺人鬼や警察が重層的に絡んでくるようになる。
 殺人のやり方はかなりえぐいものがあるが、そういうあたりはあまりホラーに偏りすぎない撮られ方をしている。殺しそのものより、惨殺された結果を描くことにより、内容が分かるような感じだ。しかし殺人鬼はそのような殺人そのものを楽しんでおり、漫画家とのいわばコラボ作品として、世の中に挑戦状を送り続けているということなのだろうか。実際にこのようなことが起こると、日本の社会は大混乱になることだろうが、しかし殺人鬼の混ざっているこの社会を、人々はどうすることもできないだろう。そのような潜在的な恐怖というものも考えさせられ、作品の深みのようなものも感じさせられるのである。
 出演しているタレント性なども話題なのかもしれないが、映画として、そうしてエンタティメント作品として、なかなかにいいところまで来ているのではあるまいか。日本映画は韓国映画などに娯楽作品としては少し水をあけられている印象を持っていたが、このような作品が撮られることで、また状況が変わるような期待も持つことができた。原作などがあるのかは知らないが、脚本がいいと、やはり作品自体が引き締まっていく、ということなのかもしれない。素直に面白さに引き込まれて観ることができました。
コメント
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