カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

猟奇殺人鬼の家に生まれて   QJKJQ

2022-07-04 | 読書

QJKJQ/佐藤究著(講談社文庫)

 女子高生・亜李亜の家はちょっと変わっていて、家族がそれぞれ殺人鬼である。父親は血を抜いて殺し、母親は鉄柱を使って撲殺する。兄は首にかみついて殺す。亜李亜はナイフを使う。そういうやり方はあるにせよ、殺すときには安全のために、亜李亜以外は自宅で殺す。おそらく死体の処理の問題などがあるせいだろう。亜李亜はナンパされるままに車に乗って、相手が行為に及ぼうとするところを刺し殺す。証拠を残さないために歩いて帰らなければならないが……。
 ある日家に帰ってくると父は既に帰宅していたが、兄の部屋で兄が惨殺されている。切り口からパン切りナイフが用いられていたのではないかと推察するが、父親を呼んで再度部屋に戻ると、兄の死体は血も含めきれいに無くなっている。母も帰ってこなくなり、亜李亜は父親を疑うようになるのだったが……。
 何かとても尋常でないことが次々に起こり、この世界に憑りつかれる頃に、さらに大きな謎にぶち当たってしまう。まったく別の展開に世界は様変わりして、そうしてまた反転する。これは倫理や哲学なのか? よくわからないが、説教を受けているわけではない。現実のことにも何か疑問のようなものが浮かぶような、妙な錯覚に読者はいざなわれるのではないか。いったいこれは何を読んでいるのだろう。かなり混乱させられるが、もちろん一定の謎解きは進んでいる。現実問題ともちゃんとつながっている話だったのだ。
 確かに妙なものを読んでしまった。読みにくいわけではないが、混乱はさせられる。そうしてネタバレになるので、詳しく書けないではないか。困ったものだ。
 そういう内容自体、読書体験自体を楽しむ作品になっている。妙なものに憑りつかれたものだ、とあきらめるよりない。しかしながら面白いので、多くの人は一気に読み進めてしまうだろうが、読み終わっても変だったなあ、という心情に変わりないだろう。僕がそうであるように。
 もちろん直木賞がきっかけで買ったのだろう思う。誰かが面白いと書いていたような気もする。確かにこれは尋常ではない。面白さのために何かに挑んでいる。作者のそういう意気込みのようなものを感じる。おそらくそれはこれからも続く。同時代に生まれてよかったというしかないではないか。
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