カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

痛みは生きている証   蛇にピアス

2022-07-13 | 映画

蛇にピアス/蜷川幸雄監督

 原作は金原ひとみの小説。当時かなり話題になっていたが、内容は知らなかった。こんな話だったんだ。驚きました。
 舌の先を切って蛇のようにし、全身に入れ墨を入れピアスをあちこちにしている謎の男アマと知り合い、肉体改造やその時の痛みに傾倒していく19歳のルイだったが、アマとの関係で知り合い、刺青の彫り師のシバとの相性もサドとマゾとしてはいいのだった。自分に対して純粋に愛を注いでくれるものの、時に軌道を逸して狂暴化するアマへの愛おしい思いは強いものの、アマはルイに絡んできた暴力団のチンピラの男に異常に暴力をし返して、結果的に殺してしまうのだった。
 水商売でしか生きていきようのないような女だが、男にモテないわけではないし、若いし適当で十分楽しいはずだったが、痛みを伴う肉体改造の世界の何とも言えない耽美さに惹かれ、自分のマゾ的な本能的な目覚めを自覚していく。しかしながら同時にそれは、現状とは折り合いのつかない苦しさとも隣り合わせだった。この特殊な世界を理解できる人間も限られていて、その見た目の迫力に誰も文句は言ってはこないものの、それは少し脆くも危うい、自分の強さだけが頼りの世界ともいえるのだった。
 少し前の映画だが、主演の吉高由里子を筆頭に、高良健吾や井浦新(このときはARATAを名乗っていたようだ)も堂々と脱いでいて熱演である。ピアスや入れ墨は本物ではないのだろうけれど、これもこの若いきれいな肉体に映えて見事というしかない。こんな人たちが近くに寄ってくると、怖くて委縮してしまう事だろう。
 お話は、特殊性はありながら、単なる見世物的な興味本位のものでもない。一定の緊張感を保ちながら、サスペンス的な謎解きとどんでん返し的な筋書きの面白さもある。はっきり言って痛みに弱い僕にはかなりつらい場面も多かったが、究極の愛というような表現方法も実に見事という感じがした。いや、見事であります。その後彼女や彼らはそれなりに清純な役柄も演じていくことを思うと、若い時に凄いパワーをちゃんと発揮できた作品を経ていたことに敬意を抱きたくなった。逆のパターンなら痛いことになりかねないが、今考えると、もうこういう作品を同じキャストで撮ることは、不可能に近いのではあるまいか。
 それでも気持ちの悪さと共感のしにくさもあるのは確かだろうから、人を選んでしまう作品かもしれない。こんな世界があるんだな、という事に、僕としては心を打たれてしまった。こういう女の人の考え方って、やっぱり凄いです。
コメント
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