アオラレ/デリック・ボルテ監督
原題はUnhinged 。蝶番が外れた、とか精神的に不安定なことを言うらしい。日本だとあおり運転が問題になっていることもあって、この邦題にしたのだろうと思われる。遅刻しそうでイライラしている朝に、前の車が信号が青になっても動かない、クラクション鳴らして抜き去ると、追っかけてきてさっきは悪かったがお互いに礼を尽くそうじゃないかという事を言われるが、頭に来てるので拒否すると、男は狂暴化するのだった。
男の暴走で多く人が巻き込まれて、おそらく死んでいく。女は逃げまどうが、給油しているときに携帯を奪われ、自分と関係する人も巻き込まれていく。クラクション鳴らしただけなのにこれほど執拗に追いまとわれるには、確かにさすがに軌道を逸している。それに不条理すぎる。しかし男は精神的に異常なのである。どれだけ手を尽くしても、女が心から謝罪をしないのであれば、殺してでもいうことを聞かせたいと考えているようだ。
だいぶ前の映画だが、スピルバーグ監督の名作「激突」という作品でも、大型トレーラーが執拗に追いかけてくるホラーがあったが、おそらくはそれもモチーフになっているはずだと思われる。行き過ぎていて恐ろしいのだが、ほんのちょっとだけこちらが先に敵意をむいたのがきっかけで、大きな代償を払わされることになる。これは何かの教訓なのだろうか。それにしても行き過ぎていて、その不条理な状況がさらに恐怖心をあおられるのである。
もともと主人公は寝坊の常習で、時間にもルーズなところがあるようだ。その上に最悪の朝を迎えてしまって、イライラは大膨張している状況だ。要するに彼女には改めるべきところがある。相手はさすがに行きすぎではあるものの、彼女の性格に落ち度があるように見えるのである。最終的にはアメリカ的にやり返さなければ気が済まない様だが、そんなんでは済まないような代償の大きすぎる後味の悪さになるだろう。かつての英雄的な男の中の男ラッセル・クロウが、ぶくぶく太った狂人を演じているからこそ復讐してもよいようなことになっているが、やっぱり少しは反省すべきではないでしょうか。