カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

隣人は選べるのだろうか   クリーピー偽りの隣人

2021-02-25 | 映画

クリーピー偽りの隣人/黒沢清監督

 元警官で、犯罪心理学者として教鞭をとっている高倉は、妻とともに新居に引っ越す。近所にあいさつに回るが、その隣人が何だか風変わりでなんとなく不快なのである。一方、元同僚の後輩刑事から頼まれて、過去のサイコパスの殺人事件を調べている。それで一人だけ生き残った娘の証言を聞いているのだが、もう少しで核心に触れられる感じがありながら、なかなか上手くいかないのだった。そうするうちに隣人の行動がエスカレートしてゆき、妻に魔の手が伸びてきて……。
 最初から怪しいのは分かっているが、しかしこんな感じに気持ち悪いとは思っていなかった。重層的な話のはずだが、しかしだからちゃんと関連しているのだかどうだか。香川照之さんの演技が、上手いとか下手とかいう次元を超えて、気持ちが悪い。今となっては明らかすぎることであるけれど、やっぱり改めて凄い人なんだな、ということが確認できた。しかしながら警察をはじめとする人々が、結局はあんまり慎重に行動をしていなくて、だから簡単にやられてしまうにしろ、ちょっと設定として惜しいと思う。ガツンとやられるにせよ、やはりサイコパスだからこその仕組みがもっと必要な気もする。実は陥れるために複数の罠があるとか……。まあ、気持ちの悪さは伝わるのだから、それでいいのかもしれないが。
 捕まらないで殺人を続けているサイコパスはいるのかもしれないが、殺しをずっとやめないのであれば、やはりいづれは終わりが来るのだろうと思う。それまで犠牲者は増え続けるが、やはり事件を追う人もいるし、それにいつかはミスのようなことをするだろう。この作品では、家族というのを上手く使うわけだが、なるほど、そういうアイディアは、確かに使えるものかもしれない。また、そう考えるサイコパスがいるとしたら、この映画を参考にすることがあるのだろうか。いや、たぶんないだろう。やはりこの仕掛けのためには、偶然の成功も必要そうだからだ。それがミステリとしては惜しいところだが、まあ黒沢作品である。そういうことも許されるのかもしれない。
 それにしても、いくら隣人だからと言って、そうまでして仲よくしたいものだろうか。家を買ったりして住むという行為には、何か抗えない恐ろしさを含んでいるようにも感じる。そういう運のようなものから逃げられない人々は、きっと他にもいるに違いない。
コメント
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