カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

民主主義集団リカオン

2021-02-04 | culture


 アフリカにリカオンという野生の犬がいる。見た目はまだら模様であまり良くないのだが、大きさは大型犬並みで、成犬で30キロくらいだそうだ。リカオンというのは、現地語の意味で狼ということらしいのだが、それじゃ日本語でアフリカオオカミ、みたいにしてもよさそうなんだけど、まあ、オオカミにしてはちょっと貧弱というか、翻訳すると何か不都合でも感じられたのだろうか。僕は知らないけど。
 アフリカにはほかにハイエナとかジャッカルとかもいるし、近縁という話もあるし、区別するにはやっぱりそのままがいいんだろう。
 リカオンは群れで協調して狩りをする。そうして、その成功率は7割を誇るという。ライオンなんかは5割を切るという話もあるんで、そういう猛獣たちの中にあって、狩りが上手な部類ということらしい。その理由はいろいろあるようだけど、基本的は民主的な役割分担がしっかりしていて、いわゆるそういうコミュニケーション能力に長けていることで、狩りを上手に成功させていると考えられている。
 中でも特徴的で面白いことが分かってきた。何と意思決定に多数決を取るのだという。
 どうやって多数決を取るんだ? って普通に思うが、その方法がなんと、くしゃみ。
 まだまだどういうことかわかりませんね。要するにリカオンの中の誰かがくしゃみをすると、他の誰かがくしゃみで応じるということらしい。単発でくしゃみをして、誰も賛同者が無ければ、狩りのような行動に移らない、ということのようだ。一定の数の個体がくしゃみで応じると、さて、じゃあ狩りに出発しようか、ということになるらしい。狩りに行く理由までは知らないけど、近くに獲物がいるぞ、とか、もう腹が減ったぞ、とか、最初にそのように思った個体が、まずはくしゃみをする、のかもしれない。
 しかしながらこのくしゃみで賛同させるには経験値がモノを言うらしく、若い個体がくしゃみをしても、なかなか多くの賛同を得られる機会は少ないらしい。やはり大物のような奴がいて(グループ形成は、夫婦にそれぞれのきょうだいがくっついて大きなグループになるらしい)、そいつがくしゃみをすると、連動してくしゃみをする場合が多いらしい。その理由までははっきりしないものの、狩りをするタイミングに長けているとか、単純に皆が言うことを聞きやすいということなのかもしれない。リカオンなりの合理性で、くしゃみの民主主義が成り立っているのだろう。つまるところ、皆が合意したタイミングで狩りをするというところに、その成功率にも影響があるのかもしれない。
 また、群れにはランダムな分業制も成り立っているらしく、いくら狩りのタイミングであるといっても、子育ての時期には、子育て班が子供の保護のために残るのだ。面白いのは、残る班に決まりは無くて、母親だから残るということではなく、あくまでランダムに残るときと残らない時があるのだ。そうすることで経験値が平均化するわけだが、そういう考えがあってのことなのかどうかまでは分からない。分からないが、そのようにして、若い個体も狩りの腕を上げられるし、子育ての責任のようなものだって養われるかもしれない。
 そもそもリカオンは、皆で寄ってたかって子育てをするようで、雄がおっぱいをあげることはできないだろうけど、とにかく子供にかまって頻繁にペロペロやっている。皆の子育てに対する関心が高い、ということが言えるかもしれない。
 見た目で判断するのは間違いのもとだと思うのだが、見た目が悪いリカオンたちは、民主的な共同体としては、たいへんに見習うべきところが多い生き物のようだ。まあ、リカオンたちにしてみれば、人間にどう思われようと、どうだっていい話なんだろうけど……。
コメント
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