北海道のラッコを追ったドキュメンタリーを見た。これまでは見ることのなかった新しい居住者の存在が、話題になっている様子だった。おそらくラッコにとって豊富な食べ物があって、どこからかやってきたのだろうと思う。もっと寒い北の国から、新天地を探してやってきたのだろうか。
ラッコというのはオスの個体が、それなりに広いテリトリーを持っているようで、それらの陣地を守りながら生活している。それらとは別の場所でメスが子育てをする。どうも一匹のメスが一匹の子供を順に育てるようで、一匹が独り立ちするまでの期間を考えると、効率はあまり良くない。ということは、爆発的にすぐに増えるとは考えにくいが、雌の個体がそれなりに同時に子育てを成功させうるなら、たしかに増えないことはない。個体数に対し領域は広そうで、まさに、ラッコにとって楽園のような場所が、あらたに生まれたのかもしれない。
ところで気になったのは、この場所では漁師さんたちは、主に昆布を取っているらしい人が多かったのだが、しかしラッコの存在が全く気にならないわけじゃないようだ。ラッコは大食漢のようで、魚介類やその他の収穫に影響があるかもしれないと、心配はしているようだった。今のところは傍観していられる程度なのかもしれないが、産業として商品価値のある魚介類の取れ具合によっては、将来的にはそのような心配があるのだというレポートだったかもしれない。
しかしながら更に思うのは、元々はラッコが見られなくなった原因は、人間が毛皮をとるために乱獲したためだと聞いたことがある。そうしてついには、これらの地区では絶滅してしまった。その後ラッコの居なくなった海では、ウニなどがたくさん増えだし、肝心の昆布の根っこをたくさん食べてしまう。そうすると昆布の漁場としては、必ずしも良い場所ではなくなってしまう。そういう話は聞いたことのあるものだ。もっともこの土地が、そうなのかどうかは定かではない。ある場所では、そのような昆布のなくなる磯焼きの状態を防ぐために、何とかラッコを移住させて増えすぎたウニの数を減らせないか、という取り組みをしているということも聞いたことがある。そうだとすると、そもそも 人間と共存するラッコというのは、理想郷のような感じでは無いのだろうか。
ラッコは可愛いので、そうあって欲しいと思ったりするのかもしれない。生活をしている人たちにとって、いったいほんとうにそのような共存状態であるのかまでは、僕には分かり得ない。理想郷というのは案外難しいのである。