カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

マリリンとロンドンの出来事   マリリン7日間の恋

2021-02-11 | 映画

マリリン7日間の恋/サイモン・カーティス監督

 上流階級出身のコリンは、銀幕の世界にあこがれて家を飛び出し、何とか第三監督という事実上雑用係の職を得る。それはちょうど映画の撮影が始まるからで、そこではアメリカから人気絶頂のマリリン・モンローが出演者としてやって来るのだった。ところがマリリンは精神に不安定なところがあり、情緒が安定せず撮影所には遅刻ばかりしている。さらに演技もままならないことが続き、監督兼主演のローレンス・オリビエは、イライラを爆発させる。たびたびマリリンの様子を探るように言われていたコリンは、不安定さのあるマリリンを心配し支えながら信頼されるようになり、そのまま恋に落ちていくのだった……。
 もともとこの作品は、コリン自身が後にこの映画の撮影やマリリン・モンローとのことを回想した本を、もとにしているらしい。要するに事実を、ということなのかもしれないが、見終わった今、いろいろ考えてみると、ちょっと怪しさも感じないではない。まあ、それはいいが、短い恋の物語だとしても、やはりそれがマリリンだったからこそ、輝ける物語である。それがマリリンであり、それを演じたお話であっても、その輝きは衰えることが無い。それって素直に凄いことなのではないか。
 この映画でマリリンを演じたミシェル・ウィリアムズの評価が高いわけだが、確かにマリリンらしい怪しさと不安定さが見事なのだが、いわゆるそっくりさんすぎるわけではない。マリリンとして人は彼女を見ているうちに、マリリンのその幻影を投影できるようになるのだ。それこそが素晴らしい演技という訳だ。
 僕はよく考えずに吹き替え版(いわゆるアマゾン・プライムで無料だったので。しかしながらこれも表示をちゃんと確認しなかったというのはあるが、字幕版は何故か、有料か地域によっては見られない処置がとられている。不可思議だが、頭に来るので深くは考えたくない)を観たのだが、これがなんだか残念なくらい声優さんたちのレベルが低かった。日本の吹き替えで、ここまでひどいのは久しぶりである。何か事故でもあったのだろうか。
 さて、この映画が評判を呼んでいたのはずいぶん前から知っていたが、地元にロードショーがやって来るわけではないし、DVD化もされないし、なかなかハードルの高い作品になってしまっている。マリリン・モンローに関するものは、バッタもんがものすごく多いし、彼女そのものに関する情報も、それなりに怪しいものが多い。僕自身は同世代ではないし、特にファンでもないが、日本人を含め彼女に熱狂する世相のようなものに関して、このような個人を苦しめる要因があろうことには関心がある。セックス・シンボルとして名を馳せ富を得たかもしれないが、それ以上に病気にならねばならぬほど、社会的な圧力を受け続けた人だったのではないか。数多くの男性と浮名を流した彼女だが、それほど魅力的だったということは言えるとしても、それほど幸福だったこととは同義ではない。求められるからそうしたというか、何か自分の弱さや自分の確認のために、そうなってしまったのではないのか。もちろん僕にはわかりえないことだが……。
 楽しくも悲しい映画だが、普通なら主役級のエマ・ワトソンが、端役で使われている。これもお話として効果的だ。コリンという青年は、自立のために裕福な家庭を飛び出すが、その出自のためにマリリンのために一種の魔法を使うことができる。彼本人の魅力と使われ方は、そのようなマリリンのための癒しである。そうしてそういう一コマだからこそ、価値のあるお話ということなのであろう。
コメント
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