ミッドサマー/アリ・アスター監督
主人公の女性は、事故か何かで家族を失った過去があるらしい。そのために少し神経症のような感じになっており、付き合っている彼氏もそのことを分かっておりながら、対応に戸惑いを感じていた。彼氏の方は友人グループとスウェーデン旅行を計画しており、もともと彼女まで連れていくつもりはなかったが、流れ的に一緒に旅することになる。そこでのコミュニティでの夏至の祭りに参加すると、何かどんどん奇妙な祭典が執り行われていき……。
改めて断っておくべきことは、この映画は普通の映画の文法で撮られたものではなく、とにかく見る人々を混乱させるために工夫を凝らしたカルト的な作品なのである。とにかく変な映画が好きだとか、時間を浪費することをいとわない人くらいしか、この作品は好きになれないだろう。僕の母はなんとなく僕の後ろでこの作品をみせられて、裸でウロウロしてさせられた男が可哀そうだった、という感想を言っていた。まあ、事実そうなのだが、それだけの映画ではない。
他でもなく僕自身も、この監督の前の作品である「ヘレディタリー継承」見て、今作品に期待したクチである。今となっては観て後悔してしまったけれど、まあ、前作の変な感じはそれなりに堪能出来て良かった。そこらあたりが現段階でのこの監督の限界なのかもしれないし、面白さなのかもしれない。それというのも、日本人の一部の者にとっては、このような儀式への受け入れは、もともとできていると思われるのだ。異常ではあるけれど、それはあくまで現在の自分の置かれている立場や世界が言わせているものであって、世界が違うとそういうものがあってもいいのかもしれない。ただしこちらだってそちらの世界には立ち入らない。少なくとも意見も言わないし、ましてや正否を問うべきものではない。
結局のところ、イスラムやキリストでこの物語を描くとややこしくなるので北欧にしたのではないか。もちろん北欧をこそモチーフにすることでの意味はあったとは思うが、東洋やアマゾンみたいになると、なんだか当たり前すぎて面白くない。もちろん彼らにとっての話だけれど……。
ということを、つい考えてしまうのだ。要するに日本人である僕には、この異常さは、あんがい了解済みだったのかもしれない。でもまあ強烈なので、興味ある方は、幻滅感も含めてお楽しみください。