カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

グロだけど美しい愛   シェイプ・ウォーター

2019-04-10 | 映画

シェイプ・ウォーター/ギレルモ・デル・トロ監督

 アマゾンの半漁人をつかまえて来て研究している施設があって、そこで働く耳の不自由な女性と、その不思議な能力も兼ね備える半漁人との恋のようなものを描いた作品。なんか変な感じではあるが、閉鎖社会におけるどろどろの人間ドラマが展開されて、なかなかの力作という感じである。
 実験のためだとは言え、かなりの知性と意思疎通の可能な半漁人を、実質上ほとんど意味なく連日拷問にかける研究機関という設定がかなり怪しい。ここは本当に地球上のお話なのか、という感じかもしれない。冷戦の時代背景があり、半漁人が、そのような兵器として利用できるものではないかと考えているのかもしれない。意思疎通ができるので、そういうのはまず本人に聞いてみたほうが早いのではあるまいか。また、半漁人にも社会があるはずで、そういう調査も同時に進めるべきだろう。たまたまこの個体しか捕まらない何らかの理由のほうが、もっと重大なような気もする。
 もっとも耳が不自由でそもそも意思疎通が簡単でない女性だからこそ、半漁人と通じ合う、または共感しあえる立場にいたという話である。そうしたところが物語のキモだというのは分かる。性描写がリアルだったりして、そういうところが話題でもあったようだが、映画として異形のものと人間の交わりを描くうえで、監督が必要だと思っていたのだろう。そういうところが確かに映画的には良くできていて、何か単純そうな設定にありながら、それなりに感動的な展開になっている。いわゆる美男美女の愛の物語でないけれど、夢のような深い愛を描くことに成功しているのだ。この映画がそれなりの共感を持って受け入れられたのは、そのような一種のグロテスクさに、正面から向き合ったためではなかろうか。
コメント
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