マクダ・ゲッペルズはナチスの良妻賢母の象徴として有名な人だ。建築家と家政婦の間に生まれた私生児で(のちに両親は結婚するがすぐに離婚したようだ)、後に母はユダヤの男性と再婚しマクダも当初はユダヤ系の性を名乗っていた。貧困などもあり実父とも交流はあった(養育問題など)とされる。
年頃になり20上の実業家と結婚。その後離婚はするが、莫大な慰謝料などで裕福だった。そういう中でナチスのゲッペルスの演説を聞いて興味を持ち、ナチスの集会などに顔を出すようになる。美しい人だったことと、ナチスといえば極左政党でもあり、財界との橋渡しの出来る人物という事で、すぐに党と馴染んでいくことになる。ゲッペルスも夢中になったようで、二人で共にすることも多くなる。そうしてヒトラーとも出会う。
ヒトラーに対しても愛があったとされるが、ヒトラーは政治のために結婚は拒んだようだ(のちに有名な愛人はいるが)。ヒトラーが取り持って、マグダはゲッペルスと結婚する。その後6人の子を産む。前の夫との子も養子縁組にしたようだ。
マクダには結婚前にも愛人がいたようだが射殺されており、結婚後も以前付き合ったことのあるイスラエルの建国に関わった活動家(ハイム・アルロゾロフ)とも連絡を取っていた。後にイスラエルで暗殺されるが、ゲッペルスが裏で糸を引いていたと言われている。
ゲッペルスは結婚後浮気をし、そういう事でもマグダは苦しんだ。ヒトラーが仲介し、ゲッペルスは愛人と別れさせられた。二度と会わないという誓約書も書かされた。
ヒトラーも自殺しその後夫のゲッペルスは首相になるが、無条件降伏を拒否。マクダは6人のわが子を殺し、恐らくゲッペルスと共に自死した。ナチスの妻や子供まで罪に問われないだろうという忠告もあったようだが、生き残ってもゲッペルスの子として生きることは辛いだろうし、復讐を恐れてのことだったともいう。
マクダの心情というものは計りかねないが、何か急激に坂を上ったり下ったりしたような人生のようにも思える。歴史には名前が残ったが、生きているときにそのことを考えたことは有ったろうか。ひとの一生はワンウェイであることは間違いない。しかし引き返せない人生というのは、選択として恐ろしさのあるものと思う。