カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

とにかく読まれるべき事実本だ   反省させると犯罪者になります

2014-04-19 | 読書

反省させると犯罪者になります/岡本茂樹著(新潮新書)

 衝撃的な書名だが、別段奇をてらったものではない。いや、狙っているということは無いではないだろうけれど、実際に内容もその通りの事が書いてある。問題はだから、なんでそんなことに! と感じてしまうだろう僕ら側にある。考え方が180度ひっくりかえる常識的なことの暴力の姿が明らかにされるわけで、実にショッキングなのはこの世の中ということになるのではないか。
 悪いことや失敗をしてしまったら、我々の社会ではまず反省を求められる。そうでないと、また同じような悪事が繰り返されたり、同じような失敗が繰り返されると考えられる。そうしてまた同じ悪事が繰り返されると、まだまだ反省が足りなかったからだと考える。もっと深くもっと長く反省すべきだと考える。犯罪の厳罰化も進んでいるが、再犯率は下がっていない。もともとの犯罪の発生率や凶悪犯罪は減少しているのに、一度犯罪を犯してしまった人の更生は、むしろ難しくなっているのだろうか。
 実はそのような社会の厳しい規範なり要望というのが、犯罪者を犯罪者として固定させている現実があるようなのだ。反省の色を見た目で分かるように要求する態度や、実際に素晴らしい反省文を書かせることを強いることで、まったく反省をさせないことを事実上強要させているだけだからである。それは結局うわべだけの嘘を強いているということであり、見た目だけの演技をさせているということになるからなのである。繰り返し反省させられた人ほど、その嘘のつき方は上手くなり、次はもっとうまく犯罪を犯すことに専念することになる。反省していないのだから、捕まったのは運が悪かったとか、実は被害者の方が悪かったとしか考えられなくなっている。そういうことを無理に助長させてしまったのは、いわゆる安易な反省のさせ方にあるかもしれないのである。
 書名に偽りがあるとしたらそういう部分で、事実としては、安易に反省をさせないで、じっくり原因を掘り下げて犯罪者をケアすることでしか、再犯を防いだり、更生させることは難しいというお話なのである。さらに、子供の教育においても、ちゃんとした教育を厳格に行うことで、子供に心の傷を負わせ、犯罪の道へと追い込んでいくことにしかなっていないことを、筋道を通して解説している。実に驚くべき事実で、ちゃんとした強い人間を育てることが、人に心を開かない、反省さえしない人間を作り上げていく作業なのである。
 この本は、もっと教育関係や組織の人事関係者に読んでもらうべきものだと痛感する。社会を変えるのは大変に難しいが、本当に理解できる人を増やすことは、とても重要なことだ。そうしてそのように実際にこの本の内容を十分理解した人がキーとなって組織内にいることで、救われる人間が確実に増えるだろう。学校のいじめ問題においても、この本の手法を用いることで、かなりの改善が図られると期待が持てる。固有名詞を出して申し訳ないが、いわゆる尾木ママのような人間がかかわるとろくでもないことになるという現実が、嫌というほど理解されていないのである。これは本当に危機的な状況で、さらに現在は悪化の道へと、せっせと社会が傾いているように思える。非常に地道で険しい道だが、真の人間の救済のために、本当に読まれるべき良書だろう。
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