カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

確実に面白く、そして世の中を憂う   ノーモア・立川明日香

2014-04-18 | 読書

ノーモア・立川明日香/小川善照著(三空出版)

 そういえば美しすぎる市議というのは聞いたことあるな、とは思っていた。その後失職していたとは知らなかったが。小谷野敦のブログで紹介されていて読んだのだが、確かにこれは面白いし、いろいろと考えさせられた。本として売れる工夫で半裸写真などもあるわけだが、しかし、読後感としては、その写真も含めてやはり面白い。そうしてやはり、かなりの名著といっていいとも思う。立川明日香というキャラクターの面白い魅力と、しかし日本の社会というものの歪みをあぶりだすことにも成功しており、おそらく著者も気付いていない社会問題啓発本ということもいえるような気がする。
 いろいろな問題はある。まず子育てが出来なくなった親が悪いが、そのための施設も、悪気は無いが、結果的に問題がある。そうして社会適応を失った子供たちが育ち、巣立った後にもその問題が連鎖する。むしろ立川はそのことに気付かないまま、その美貌と性格も手伝って、自然に社会問題化してしまった存在という気がする。今がどうなっているかは知らないのだけれど、その問題を抱えたまま、タレントとしても上手くやっていける可能性があるのではないか。いや、もう協力してくれる人はいなくなったのだろうか。せめてこの本が少しでも売れて、子育ての支援が出来ればいいのに、と思う。
 東京近辺の町の市議選で、綺麗なだけでも当選する、という事実を作ったことも大きいと思う。居住実態が無いということで失職するわけだが、そのルール自体が(ルールだから仕方ないにせよ)おかしいということもあるので、有権者を裏切っているわけでもない。裏切らされた被害者という感じすらする。本人の認識不足だから自業自得だけれど、そういうことが実際に出来てしまうという証明がなされても、やはり美人が選挙に出ようというのは、そんなに多くは無いのだろう。もちろん綺麗じゃない人ばかり選挙にでているわけではないけれど、人気投票に美貌が有利なのは間違いなさそうで、そういう社会が選挙に反映されることは、ごく正当なことだというのが凄いと思う。理屈を超えた事実である。
 そのような根本的に不思議な選挙社会を持つ日本のおかしさもあぶりだされるわけだが、もっとも問題視すべきは、施設の子供の人格形成問題だろう。この本の題名どおり、同じような立川明日香を生み出す病理こそ、もっと周知され、改善されるべきことなのだ。立川個人の性格ということはもちろんその通りだけれど、その思考の背景にあるのは、間違いなくその生い立ちに受けた、施設での生活という問題がありそうなのだ。そうして、そのことは、実は周囲の大人たちも、確実に分かっているのである。
 どうしたらいいのか、どう改善すべきかというのは、現在も地道に実践している人もいるだろうことは分かる。しかし、社会認知としては皆無に近い状態ではないか。結局は、残念な状態を目の当たりにしながら、立川明日香は現在も育っているのではないか。
 興味本位で手にとってもらうだけでもいいと思う。そして、その妙な歯切れの悪い内容を読んでもらって、考えてくれればいいのだと思う。正直に言うと立川明日香のような面倒な女性に関わるのはごめんなのだが、由々しき社会問題が平然と眠っている社会に僕らが生きていることは実感できるだろう。その気持ち悪さを知らないままにいることで、本当にいいのだろうか。まずは知ることから。そういうゴシップ本のお勧めである。
コメント
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