美しい島のために

2006-12-23 | 【断想】ETC
 「天国に一番ちかい島」とも宣伝されるバリ島。そのバリ島のことが、先般読んだ安田喜憲著「一神教の闇」に記されてあった。
 道脇に石や木の彫刻が、これでもかというくらい並んでいる通りがあるそうだ。それらの彫刻は売り物である。「こんなに作って売れるのですか?」と問うと、「それこそ市場経済に毒された考えだ」と応えられたということである。
 農民が、農作業の暇な時に作ったもので、作ること自体に喜びを見いだしており、売れれば売れたでいいが、本来収入は、農作物で得ているのだ、ということであったそうだ。美しいものを作ることにこそ価値を見いだしているということである。
 作ったから、必ず売らなければというけちくさい発想から生まれたものではないと。
バリ島農民のゆたかな心根を感じるとてもいい話である。しかし一方、街中では、ゴミが増えているということである。かつては、街中でも、通りはいつも掃き清められていていたのに、最近はゴミが目立つようになってきているとも聞く。観光がバリ島民の生活習慣をスポイルしているのでないかと。美しさを大切にする気持ちに変化を生じさせているのでないかと。土産物の木彫などにしても丹誠込めたものが減り、安っぽいものが増えてきていると聞く。
 自分の目で見たわけでも、かつてのバリを知っているわけでもないので、何とも言えないが、大いに想像できることであり、残念なことである。
 このようなことは、バリ島だけのことではない。
美は、いろんな要素・条件があって成り立つ。人の心の脆さをもしらなくてはならない。

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