夢や夢現や夢とわかぬかな いかなる世にか覚めむとすらむ
平安時代の赤染衛門の和歌である。
赤染衛門の和歌は、人生哲学風である。
知的な女性という感じである。
さて、おもむき変えて、ジェリー・マリガンのこの世の夢のひとつは、バラード集をまとめることだったのか。
好漢ジェリー・マリガンの“私の夢も見てほしい”である。
「ジェリー・マリガン・プレイズ・バラッズ ドリーム・ア・リトル・ドリーム・オブ・ミー」(1994 TELARC)。
わたしが入手したアルバムでは、名前は「マイ・ファニー・バレンタイン」となっている。
14曲、収録されている。
はじめに聞いたのは、「わが心のジョージア」「マイ・ファニー・バレンタイン」「ソング・フォー・ストレイホーン」の3曲。
これに続けて、20年前になるか、チェット・ベイカーと演奏した「カーネギーホール・コンサート」所収の「マイ・ファニー・バレンタイン」を聞いた。
トランペットの音が、曲に色合いをつける。
とてもいいなと記憶に残る演奏のひとつ。
ベイカーのトランペットが、そうさせているのだが、それは、マリガンのバリトンサックスあってのこと、さらに、マリガンという人間が存在してのものと強く感じさせる演奏なのだ、
そこに、マリガンの兄貴分としてのやさしさが感じられるのだ。
さて、「ジェリー・マリガン・プレイズ・バラッズ」の3曲目となっている「ドリーム・ア・リトル・ドリーム・オブ・ミー」。
懐かしい、ウエストコーストのムードいっぱいだ。
◇
俺は、俺らしくやろう。
それで、孤独を感じることがあっても、あたりまえ。
俺が俺である証明のようなものだ。
◇
4曲目「アイル・ビー・アラウンド」は、「ナイト・ライツ」を彷彿とさせる。
6曲目の「ザ・リアル・シング」もそうである。
夜、余計な刺激がない、穏やかな、これらがいい。
このムードが続く。
9曲目が、「わが心のジョージア」。
10曲目が、「マイ・ファニー・バレンタイン」である。
◇
夜、黒い木立を見ると、亡くなった友だちのことが思い出される。
友だちの霊が、そこに来ているように感じる。
俺は、諸事に煩わしさを感じながら生きている。
生きていると言うことは、そんなものかと思いながら。
◇
12曲目は、「マイ・シャイニング・アワー」。
いくらか元気な曲だ。
13曲目は、「ウォーキング・シューズ」。
はれやかな気持ちで、青い空のもと、白い道を歩いている。
ラストの14曲目が、「ソング・フォー・ストレイホーン」。
亡きチェット・ベイカーと演った曲だね。
そこに、チェット・ベイカーがいて、声をかけているような。