坂口謹一郎氏の「愛酒樂酔」より一首。
とつくにの葡萄の酒はきらめきて切子のはりの盃にあふれし
若い頃、酒を飲まぬ夜はない頃、坂口謹一郎氏の「古酒新酒」という本を読んだ。
酒を愛する思いがあふれ、読むうちに、酒の香りをわがものとしたくさせる極上の書。
葡萄からつくった酒も好きだ。
シェリー、ワイン、ブランデー・・・それぞれに思い出もある。
カサンドラ・ウィルソンが歌う「オールド・デヴィル・ムーン」を聞く。
歌詞の内容は、「あなたの瞳には、“デヴィル・ムーン”があって、魔的な光に、わたしは恋に落ちてしまう」と言うようなもの。
アダムとイブのあいだにも悪魔がいる。
悪魔は人に知恵をもたらした。
ちえは、社会的感情ともいえるか。
知恵があるゆえに不幸・苦しみは増える。
人間社会に悲劇をもたらしもする。
昨日から、ボードレールの「悪の華」を読み出した。
堀口大學訳のものである。
本棚のものは古くて、活字が薄くなっていて、新しい文庫本を買った。
その読者向けの最初の詩にも悪魔が出てくる。
その悪魔によって、わたしたちは、木偶のように操られ、日ごと一歩づつ地獄に落ちるとある。
「オールド・デヴィル・ムーン」と言うとき、“オールド”には、どんな意味があるのかと思う。
いにしえからのと言うようなことであろうか。
そうも思うが、老いさらばえて魔力の衰えた悪魔を思い浮かべてしまう。
なんだか哀れで、おもしろい。
徒然なるままに。