蘇鉄の精霊

2010-05-05 | 【樹木】ETC
 静岡県の久能山で樹齢650年という蘇鉄(ソテツ)を見た。
 幹の太さが2メートルもある大物である。
 蘇鉄は暖地に育つ樹木。
 野に自生というより、寺院の境内や駅のロータリー、広場に植えられたのを見ることが多い。
 大阪・堺の妙国寺の蘇鉄が有名である。
 天下の名木を集めようとした織田信長が、安土城にこの株を移し植えたとのこと。
 すると、夜な夜な、その蘇鉄が、「堺へ帰ろう」と奇怪な声を発したそうだ。
 怒った信長は伐りにかかったが、切り口から血をしたたらせたとのこと。
 それで、気味悪くなり、堺の寺に戻してやったと言う。
 そういうことで、樹勢が衰えたとき、貫主の夢に木の精霊が現れたそうだ。
 「鉄屑を与えてくれ」との訴えに従うと、蘇鉄は元気を取り戻したと言う。
 その名が示すように、鉄が好物とされている。
 衰えたとき、幹に鉄棒、鉄釘を打ち込むといいとの伝があるが、いかがか。
 妙国寺の蘇鉄の精霊は、蛇神だそうだ。
 樹形から、なるほどと思われる。
 久能山の蘇鉄も、蟠る大蛇を連想させるし、その幹は鎌首をもたげたようである。