「蜻蛉日記」三

2010-05-25 | 読書
 ・蜻蛉日記/上村悦子全訳注/講談社学術文庫
 ・三/秋/兼家と結婚
 兼家から、頻繁に歌が届くようになる。
 はじめは、代筆での返歌で応じる。
 そのうち、自筆で応じるようになる。それでも、内容は、兼家の思いをからかうようなものである。それが、当時のやり方であった。
 そして、結婚となる。
 日記には、婿入りの儀式のことなどは、記されていない。
 いきなり、「いかなるあしたにかありけむ」として、兼家の後朝(きぬぎぬ)の歌が出てくる。「いかなるあした」とは、兼家と初めての交わりがあった翌朝のことである。
 以降、妻としては、夫の訪れを待つ切ない立場となる。
 兼家の後朝の歌とその返歌。
 ゆふくれのながれくるまを待つほどに涙おほゐの川とこそなれ
 思ふことおほゐの川のゆふくれはこころにもあらずなかれこそすれ
 兼家が、あなたのところを訪ねる夕暮れが待ち遠しいと言えば、あれこれ思ってあなたに会える夕暮れまで泣いています、と応じている。
 この段に、植物は出てこない。