梶哲日記

鉄鋼流通業会長の日々

顧客の困りごと(その3)

2019年05月04日 05時47分02秒 | Weblog
メタル便関東が2000年にスタートし、関西(2001年)と中部(2003年)とが設立されたことは前回お伝えしました。その後、北海道2013年、静岡2015年、九州2015年、中国・四国2015年、北陸2016年、新潟2016年と相次いで各社が誕生し、鋼材の小口を共同配送で日本全国を網羅する念願は達成されます。

全国九ヶ所に拠点が誕生することでグループが形成され、この九つの会社はそれぞれの地区の前にメタル便の社名が付けられています。メタル便の社名は冠していませんが、東北地方は福島県に在る運送会社が、デポとなり東北六県を網羅しています。

そもそもメタル便は、鋼材の「長尺品・重量物・異形材」配送をうたい文句に扱い量を増やしてきました。以前は、大手路線便がこれ等を請け負っていました。しかし他の雑貨品等に、キズが付いたり油が付着したり重ね積が出来なかったりして、敬遠されてきたのです。最近は鋼材に限らす、大手の路線便に断られた他の長尺商品の依頼がくるとのことです。

そこにはメタル便にとって大きな追い風が吹きました。近年のネット通販の急成長は目を見張るものがあり、この通販商品は物流を劇的に変えてしまいした。一般雑貨がトラック便に大挙して押し寄せることになり、ますます積載効率の悪い小口の「長尺品・重量物・異形材」は拒絶され、配送してくれる運送会社は希少となりました。そして今や社会現象になった、深刻なドライバー不足が拍車を掛けています。

その象徴ともいえる出来事が起こりました。これまで長く関東をはじめ本州から北海道向けに長尺鋼材や重量物の小ロット貨物を取り扱ってきた物流企業が、今年に入り「4月以降の配車ができない」「混載オーダーを断る」と、荷主に通達してきたのです。

この動きは複数の物流企業にも及んだ様子で、荷主にとっては北海道への混載手段がなくなり今後の対応に苦慮。この中にはメタル便の顧客も多く、メタル便に対し打開策を打診してきたのです。こうした声を受け、メタル便では北海道向けへの円滑な物流と安定供給を目指し、新サービス開始を決定しました。

鋼材を混載・運搬する海上トレーラーシャーシを確保して、週1便定期運行を開始し、今後の貨物扱い量の動向を見極め、必要に応じ週2便から3便に増やす計画です。海上輸送に対応できないオーダーは、既存の幹線輸送スペースを併用しカバーします。

今回の出来事は、長年頼ってきた荷主にしてみれば一方的な「サービスの完全停止」です。価格交渉などで時間を稼ぐ余地もなく、多くの荷主にしてみれば代替手段もみつからず心底困惑していたところです。運賃についていえば、メタル便は過去何回か値上げをしてきました。顧客に対しては勿論事前に周知した上ですが、荷主からは一切の抵抗がなかったそうです。

「長尺品・重量物・異形材」長距離配送については、メタル便のライバルは殆どいない状態です。それ以上に大手路線便や物流大手は、ますますこれ等の輸送から撤退していきます。そのような輸送手段がなければ、荷主はその製造や販売を中止せざるを得ません。

しかしその配送業務はメタル便にとっても、とても手間が掛かり効率は悪い仕事です。他社が敬遠・撤退するからこそ、工夫してグループで力を合わせ、挑戦する意義があるとメタル便関東の社長は明言します。

メタル便関東は、メタル便関西の社長との後に活かされる出逢いや、運送業界の追い風の運に恵まれたことも事実です。しかしながら、「顧客の困りごとを解決すること」に一貫して徹したからこそ、メタル便の今日があると私は思っています。


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