梶哲日記

鉄鋼流通業会長の日々

相手と向かい合う

2018年08月25日 06時36分36秒 | Weblog
昔親しい方から、「梶社長は、人の目を見て話していない」との言葉をいただきました。言われるまで気が付きませんでした。そう言われれば、相手の方が話される時はその方の顔を見ていましたが、自分が話している時は相手の目を逸らしていました。

その理由を自分なりに考えてみると、次のようなことでした。話す内容に自信が持てない。あるいは一方的に自分の主張を言っている。考えながら話しているので相手の人を見る余裕がない。それ以来、話す時も相手の方の顔を意識するようになりました。

“dyad:ダイアド”という用語があります。社会学の専門用語で、「二者関係」または「相互関係」との意味です。複雑な関係も基本的には二者関係から成り立っていて、その相互間には、接近、適応、同化があるが、一方では競争、対立、闘争もある。ダイアドとは2個1組、一つが欠けると存在しないとの解釈でもあります。

以前私が参加した講習会で、ダイアドを組む実習をしました。2人1組になって向かい合い、様々なテーマについて話し合ったり、パーソナル・エリア(心地よく感じる人との距離)を破る至近距離で黙って目線を合わせ続けたりしました。この際に目線を逸らしてしまう人や不快を感じる人は、相手と一体になるのが苦手な人とのことです。

「飼い主と犬が触れ合うことで、互いに“オキシトシン”が分泌される」のタイトルで、二年前にサイエンス誌に掲載されて世界中で話題になったと、ある方が書いた文章で知りました。サイエンス誌に発表したのは、筑波大学の研究チームだそうです。

オキシトシンとは、別名「幸福ホルモン」「抱擁ホルモン」とも呼ばれ、我々に幸福感を与えてくれる脳内伝達物質です。叱って叩いて躾をするペット型としての犬ではなく、心から愛情をそそいで同志型と思えるほどの犬であれば、その犬には多くオキシトシンが出ていると判明したのです。これは犬と人とのダイアドに他なりません。

そんな経験や知識などがありましたので、試しに孫とダイアドを組んでみました。孫といってもまだ生後一ヵ月と、四ヶ月です。一ヵ月は私の次女の長女、四ヶ月は私の長男の長男です。群馬の高崎に嫁いだ次女が里帰り出産をし、私共の自宅に暫く居ました。

これ位の赤ちゃんは、視力の未発達により、人や物を見てもハッキリ認識出来ないと言う説もあります。結果二人とも、私がじっと見つめることを繰り返し続けると、私をしっかり見てくるようになりました。四ヶ月の孫は、笑顔を見せてくれるようになりました。

話は一転します。“ネット言論を見つめる”とのテーマの新聞記事を読みました。ネットの進化は言論の世界も大きく変えたが、ウェブ上を連日膨大な「論」が流れ、時に激しいも意見も飛び交う。転換期の言論空間はどうあるべきか、3人の見識者が意見を書かれていました。ネット言論は匿名であるがゆえに、流言、デマ、罵倒や誹謗中傷がエスカレートするとの認識は3人一緒でした。

相手が分かっていているSNSの利用にしても、その利便性から、仕事や私生活のあらゆる分野で活用されています。しかし問題は、その相手と直に向き合っていないことであり、本人を前に目と目で見つめ合っていないことです。

匿名のネット論争にしても、相手が分かっているSNSの利用にしても、自己満足の世界に陥りやすく、そこにオキシトシンなどは分泌していないことは事実です。五感を使って、相手と向かい合うことをベースにしたいと思います。
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想いが残る土地処分

2018年08月18日 09時49分43秒 | Weblog
「“迷子の土地”増殖続く」とのタイトルで、新聞に記事が載っていました。国土の約2割の面積の持ち主が分からない、「所有者不明土地問題」がある。都道府県が土地に利用権を設定し事業に使いやすくする特別措置法が成立し、不明化した土地の利用で一定の策を講じたにもかかわらず、迷子の土地は増え続けている。とのことです。

問題が顕在化したのは東日本大震災の復興事業の過程で、多くの土地は所有者が分からないため、土地買収が進まず、被災地の復興の妨げになっている。しかしこの問題はそれだけではなく、相続の課程や価値を生まない土地による原因も指摘されています。

こんな例があるそうです。地方の役所から廃屋を撤去してほしいと、都内に住む会社員に連絡が入り、そんな土地は所有してないと照会してみると、大叔母の相続人だと告げられた。大叔母には法定相続人も物故、知らないうちに相続人になっていた。固定資産税や廃屋撤去だけで、多額のお金が必要で相続を放棄した。この土地は所有者が不在となる。また相続人の中には、相続した土地が買い手も借り手も無く、価値が無いので相続登記をせず、放置される。日本の土地はそのような課題を抱えているようです。

今年5月家内の実家がある酒田に行って、その実家を売却すべく地元の不動産会社と打ち合わせしたことを、このブログ上でお伝えしました。義父が先に逝き続いて義母が亡くなって以来14年間、家内は実家をずっと残すつもりで、毎年5月の連休かお盆の時期に酒田に帰り、遺品などを整理してきました。

築50年を経過した家は老朽化が進み、4年ほど前から宿泊は近くのホテルとなりました。家の中にはまだ多くの物が残っていますが、「私が処分をしなければ、子供たちはもっと出来ない」。そのような頭に切り替わり、家内はようやく実家を処分する決心をしました。古い家なので解体して、更地にするしかありません。

とはいうものの、すぐ買い手が見つかるものでもありません。実家の近くに、長く「売物件」の看板が掲げてある家が二軒もあり、長期戦も覚悟しました。酒田市も住民の高齢化が進み、子供たちは大都会に出て行き、その親が亡くなって、空き家になってしまう。人口減少が進んでいるどの地方都市においても、同じような問題を抱えます。

ところが6月下旬不動産会社から、買い手がほぼ見つかったとの連絡が入りました。その買主は銀行にローンを申請するので、その決済が下りれば、話は更に進みますとのこと。そして一週間前、買主のローンの決済が下りたと不動産会社から報告をもらいました。

実家の土地の売却代金から、自前の解体費用や不動産会社への手数料を計上すると、手元に残るのは売却代金の約半分です。しかし中々売れなくて、いつまでも気に掛け、すっきりしないことを思えば、本当に運がよかったと感謝するしかありません。

若かった夫婦や小さかった子供たち。かつての家族が生活を共にした家は、誰もが愛着はあるはずです。その家に次の世代が生活をしてくれれば、家や土地は活かされ価値があります。そうでない場合、誰かがどこかのタイミングで、処分を決心しなくてはなりません。

家内の実家はまだ金銭的価値があったから幸いですが、先の記事のように、金銭的価値が無くなったりそれ以上の費用が発生したりするケースでは、土地の所有自体を放棄するのが、今日の現状のようです。家内の実家の売却話は、これから大詰めを迎えます。
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会社の方向性

2018年08月11日 10時22分41秒 | Weblog
わが社の決算期は6月です。それまでの1年間の業績が判明したところで、前期の結果分析をして、新たな当期の事業計画を立て、社員全員に発表します。その社員全体会を、8月4日の土曜日の午後に行いました。

この全体会は毎年行ってきましたが、今回は例年と異なりました。例年であれば当期の事業計画は確定していて、その目標に対して各部門でグループ討議をし、最終的に個人目標が設定できるようにしていました。今回は、今後目指すべき会社の方向性を幹部で策定しましたので、それを理解してもらうだけに時間を費やしました。

2年前に中期3年計画を策定して、当期が最終年度でした。実は、その事業計画が殆ど達成されなかったのです。理由は、全社員を巻き込んでの、実践する努力を怠り、計画倒れになっていました。目標利益は達していないが黒字で終わっている、その侮りもあります。それは幹部社員の責任であり、勿論幹部に執行を委ねた私の責任です。

PDCAという手法があります。事業活動における生産や品質管理を円滑に進めるため、または定められた目標を達成するため、 Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)の4段階を繰り返すことによって、やると決めたことを継続的に実行して改善するものです。わが社の場合、C以降に大いなる問題がありました。

その反省を踏まえた上で、運営される組織も抜本的に見直し、製造部に新たな要職者を選任して、収益の柱である加工事業に集中する体制を整えました。そしてその製造部の要職者を交えて、従来の幹部らと、当期の事業計画を先月徹底して話し合いました。

新たな会社の方向性としては、“他社が行わない加工や技術力でオンリーワンを目指す” です。その加工とは主に開先(鉄同士を溶接で繋ぎ合わせるために、角の部分を斜めにそぎ落とす加工)です。ナンバーワンとは同業他社が存在する中で一番に秀でること、オンリーワンとは同業他社がいない分野を極めることです。

最新鋭で開先機能が付いた、6kのレーザー機を導入して3年が経ちました。本来垂直稼動だけの火口が傾斜し、ワンカットで開先加工ができ、それも曲線の開先が可能です。今日まで色々な開先の依頼を受け、試行錯誤を重ね製品化への自信もつき、最近その受注は増加しています。

相まってガス溶断加工における開先も、それも他社がやらない加工も増えてきました。一般のNCガス溶断機ではできない開先でもあり、ポータブルや簡易機械を使っての、現場の作業員の技に頼るものです。熟練の蓄積された技術が、伝承されなければならない分野です。

2年間の失敗はありますが、本来のわが社の進む向性が、ようやく見えてきたと私は感じています。従来の幹部が吸収しきれなかった、製造部の新たな二人の要職者が感じ取ってきた、会社の進むべき道かもしれません。

他社が追随しない世界を目指すことは険しい道となります。これは、工場の仕事を埋めるだけの量産を求めず、安易な安売りで競争しない宣言でもあります。やらされる計画からやりたくなる計画を目指し、新たな事業計画が社員の夢と希望に繋がることを願います。
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健康は買えるもの?

2018年08月04日 10時01分44秒 | Weblog
何年も前から参加させてもらっている、歴史や日本文化を勉強する会があます。隔月に開催され、会員の中で、それぞれの得意な分野で研究をされている方が講話をされます。メンバーは10名ほどで、私はその会のお世話役(庶務・会計)をさせてもらっています。

その中の一人で85歳の方ですが、第一線をリタイアした後、ある健康食品(ドリンク)とそれを販売する会社と縁があり、以来その商品を知り合いの方達に勧めながら、販売会社からコミッションを受ける形で15年間その健康食品に携わっている人です。

商品は細胞の中の核酸に影響を与えて、効果があるとのことで、人間の身体や仕組みについて見識があり、宇宙の原理や科学なども熱心に勉強されている方です。会でそのテーマでたまに講話をされますが、話は理路整然としていて説得力があります。

今まで会では、その健康食品を勧められたことはありません。しかし、細胞を若返らせることで健康寿命を延ばすことが可能との主旨の、会合の案内は郵送されてきてはいました。先日その方がわが社に訪問をしたいとのことで、来社されました。目的は商品の勧めであり、契約して毎月一定量を購入して欲しいとのことでした。

自分も15年間愛飲し、この歳で健康で仕事も続けられているはこのお陰だとのこと。しかし二つの事で少し違和感を覚えました。テーブルに商品のカタログなどを広げるのですが、いきなり契約書とボールペンを置かれました。私が躊躇っていると、「社長さんだから、これ位の金額は負担にならないのではないですか」と、仰ったのです。

購買者の心理としては、商品の効果を十分に理解して納得する段階まで至らないと、購入の決断には至りません。そのようなこともお伝えして、私から今回の件は少し時間をもらいたいと切り出し、後は雑談となりました。後日その方からまた会合の案内が送られて来ましたので、電話でしたが、購入する意志が無いとはっきりお断り致しました。

私は昔の怪我の後遺症もあり、二年前から東洋医学の施術を受けていて、身体全体の仕組みを活かした生き方まで指導してくれます。また二ヶ月前から早朝の散歩を主体とした運動をしています。勧められる健康商品を新たに取り入れるとその効果なのか、それまでの成果なのかがあやふやになってしまう。このような理由でお断りしました。

実はその会で、別の方ですがその商品を愛用していた人がいました。癌になり西洋医療で回復したのですが、後にその商品と出合い、長年勤めていた会社を辞めてやはりその商品を販売することになりました。もともと感情の起伏が激しく、コントロールすることが苦手でした。その商品で健康になったと過信して、好きだったお酒を飲み始め60代半ばで亡くなったのです。

世間には、自身の不摂生を省みず薬やサプリメントに走る人がいますし、自分の病気としっかり向き合わずただ命を救ってもらいたいと名医を捜し続ける人もいます。健康を害している人は恐らく不健康なことをしていますし、癌に罹った人は癌になる原因がその人に存在します。

果たして、お金で健康が買えるのでしょうか。勿論、お金をどのように使うのかはその人の価値観です。お金で全てが解決できると考えるのは、人間の傲慢性の現れであると思えてなりません。

その健康食品は確かな効果があるものかもしれません。しかしその商品に携わっている人が、お金を儲けるビジネスとして捉えてしまうと、半ば押し付け販売をしたり、その健康食品を飲んでいるからとの過信に陥ったり、落とし穴があるかもしれません。
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