社員からの提案を私は受け入れ、新規レーザー機の導入を実現する運びとなりました。去年の5月でした。ところがその後、営業幹部の顔色がいま一つさえないのです。会社の先行きを左右する提案がすんなりと通ってしまったからなのか、真剣に採算などを考え出して、むしろ彼等が不安を感じたのです。
私としてはそのようなことは想定していた訳ではありません。大きな投資を、トップから押しつけられるケースと、社員から上がって来たケースとでは、心理状態は真逆です。後者ですと、社員が採算責任をとても重く受け止めることを、今回強く感じました。
レーザー機の導入は決定したものの、別置型なのか従来の搭載型なのか、オプション機能はどうするか等については、それから1~2ヶ月は選択検討する時間を要しました。営業幹部と話す中で、私なりに、次のような確認をすることが出来ました。
わが社の歴史の半分以上は、鋼板素材の販売に特化して来ました。溶断加工に進出したのはここ12~3年のことです。かつては素材の販売用の在庫は、5000トンを超えた事がありました。現在、在庫はその半分以下ですが、これからも素材販売事業はわが社の柱であることに変わりありません。
しかし、限られた工場・倉庫のスペースと人員とその他のわが社の経営資源を考えれば、選択と集中は、更に押し進めなくてはなりません。今回のレーザー機の、更なる精度と切断速度向上は、今後お客様から要求される短納期に対応が可能で、切り板加工の営業の武器になることは間違いありません。
レーザー機二台体制は、将来の必然性を先取りするものかも知れません。そのような幹部の顕在化した意志を、去年は感じました。今年に入り3月稼働を前に、仮に二台体制になって当面仕事が少なくとも、全社を挙げて仕事を獲り込んでくる意欲も伝わります。
仕事量を十分確保してから機械を増設するのか、先取りして機械を導入して仕事を獲り込んでいくのかは、我々鉄鋼流通加工業でも永遠のテーマではあります。しかしどちらも絶対の保証はありません。社員がどんなことがあろうとも、困難を乗り越える意欲を持続出来るか、そこに主眼を置くことが大事であると私は考えます。