梶哲日記

鉄鋼流通業会長の日々

好奇心を持つ

2017年08月26日 06時21分17秒 | Weblog
私の好きな歴史学者で磯田道史さんと言う方がいます。NHK・BSプレミアムで放送されている“英雄たちの選択”で司会者を務めています。過去の英雄たちが崖っぷち立たされた時、現代の専門家の考証によりその脳内に深く分け入り、体験したであろう葛藤や様々な選択肢を描いている番組です。

私は欠かさずこの番組を観ています。歴史に名を残した人物や、世の中を変えていった出来事に興味を惹かれ、自分でも色々と調べてみようとの契機になっています。最近、その磯田さんのことが書かれている新聞の記事が目に留まりました。磯田道史の人となりが紹介されていました。

岡山市出身、小学生で石碑の拓本を採って「おじん」と呼ばれる。中学生の時、祖母に実家の文書を渡され、古文書解読にめざめる。京都府立大に入学するも大学院がないと知り、慶応大に入り直す。大学生の時、図書館で本を読み過ぎて倒れて病院に運ばれる。2003年の著作「武士の家計簿」がヒット、後に映画化される。

子供の頃から学校の授業は全く興味がなかったが、自分が知りたいことには没頭した。ストーブが危ないと言われると、触ってみてやはりやけどをし、好奇心が生存本能より勝っていたようです。朝から晩まで専門書に没頭した生活を二ヶ月続け、図書館で倒れたのも、正に寝食を忘れた結果。磯田さんの探求心の源は「発見の喜び」に尽きます。

話は変わりますが、幼少期のトーマス・エジソンは、現代で言うところの学習障害やアスペルガー症候群だったと考えられています。「何故なんだろう」との疑問を強く持っていた為、学校の授業を阻害することがしばしばあり、学校から追放されます。学校の先生であった母が教師役となり、その疑問に対し懇切丁寧に理解できるまで対応したと言います。

エジソンは母親の教育を受ける中で、科学への関心を深めていきます。母親が教えることが出来ない化学や物理学の知識は、図書館に通って専門書を読み漁ることで身に付けていきました。学校から見放された子は、自分で調べることの出来る子に変身します。

ガチョウの卵を自分で孵化させようと、卵を抱いてガチョウ小屋の中に何時間も座り込んだり、「なぜ物は燃えるのか」を知りたいと思い立ち藁を燃やしていたところ、自宅の納屋を全焼させるなどの事件を起こしたりしたのも、エジソンの旺盛な好奇心がさせたことです。

そうなのです、エジソンと磯田さんがとても重なります。歴史に残る科学者の子供の頃を調べてみると、レオナルド・ダ・ヴィンチ、アインシュタイン、スティーブ・ジョブズなどの名前が出てきて、それぞれ発達障害の傾向があったと言われます。

偉業を成し遂げた人達の功績をみれば、障害とよんでいいのか、もはや分かりません。溢れる好奇心や、思い立ったら我を忘れ即実行する偉人たちは、普通の人から見たら障害的な性質を、世界を変えるまでの素晴らしい能力に昇華させました。

年齢に関係なく、何事にも興味を持ち続けることはできます。むしろ歳を取らない方法は、好奇心を持つことかもしれません。その好奇心や探究心が、発見する喜びを与えてくれる。あの磯田さんの源が、「発見の喜び」であったことに納得しています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オフからオンへ

2017年08月19日 09時56分41秒 | Weblog
お盆期間わが社の休みは、「山の日」の祝日11日から15日までとしました。帰省した人は遠くの実家を大切に、小さな子供がいる家庭は子供を中心に、5日間の休みを社員それぞれ有意義に過ごしたことと思います。

私は10日仕事が終わり自宅に戻って、自動車で一路山形の酒田市に向かいました。家内の実家は酒田で、四日ほど前に先に行っていたからです。家内の両親は既に亡くなりましたが、酒田に家とお墓があり、遺品の整理も残っているので、お盆のこの時期に行くことが恒例となっています。

10日の午後7時自宅を出発して、高速の常磐道から磐越道に入りました。夜中12時頃に会津若松のパーキングで仮眠。翌日は会津若松から一般道に降りて、米沢を通って酒田に向かいますが、深い山並みのドライブも楽しめて好きなコースです。酒田には午前中無事到着しました。

当初酒田に三泊して14日早朝に戻る予定でした。高速の上りの渋滞を避ける為、13日昼間仮眠して、結局酒田を後にしたのはその日の午後8時、市川の自宅に着いたのは翌日明け方3時でした。お陰で全く渋滞に遭うことも無く行き帰り順調でしたが、夜間運転が続き、疲れがでました。14日は一日自宅で、ゆっくり過ごすこととしました。

15日、私は休み中の会社に出ました。会社でやることもあり、溜まっている新聞も読んでしまいたいと思ったからです。会社の休み明けの16日に、休み中の新聞を一括配達して欲しいと、事前に新聞販売店に頼んでいましたので、販売店まで取りに行きました。かなりの量です、休み明けの新聞配達員も大変です。

会社に戻ってみると、一人、二人と事務所に出社する社員がいます。幹部社員の二人です。直前に少しでも仕事を片付けておこう、余裕を持って翌日に望みたいとのことなのでしょう。私と同じです、その気持はよく分かります。

溜まっていた新聞を読んでいると、“働き方改革”を進める企業の記事がありました。ある研究所の調べで、「長時間労働になりがちな仕事は、本来業務以外の、客待ちや待機などの『手待ち時間』や周辺雑務の割合が高い」と書かれていました。本来業務以外の軽減や、業務プロセスを見直す企業が広がっていると、伝えています。

例えばある製薬会社のMR(医薬情報担当者)は、朝子供を営業用の社用車で保育所に送り、そのまま仕事に向かうことを認めている。多忙な医師と向き合うMRは長時間労働になりがち。空き時間を無駄にせず、導入した営業サポートツールで、営業車内で仕事をこなす。こんな内容でした。

会社に出勤しなくてはならない、出勤しなくても大丈夫は、職種や役職によっても異なります。以前にもブログで書きましたが、働き方の見直しや多様化は、我々企業単位で真剣に取り組んでいくことが課題となってきました。

少々遠回りをしても、ドライブでは爽快な道を走りたい。私は、自宅で仕事をすると気が散る、会社に来た方が仕事は捗るが、長年の癖となっています。仕事をする環境を選ぶ、自分のコンディションも考える、このようなことも含め自由度がある、仕事の生産性を上げる働き方の改革が迫っています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

業界の危機感

2017年08月12日 06時31分37秒 | Weblog
英・仏政府が2040年までにガソリン車やディーゼル車の国内販売を禁じる方針を決めました。その背景には環境規制などのルール変更があります。そして、トヨタ自動車とマツダは電気自動車(EV)の共同開発を視野に資本提携をしました。

EVへのシフトや自動運転など、大きな変化の中でトヨタですら逆風が吹き、生き残りを模索しています。『車、110年目の大転換』と新聞には書かれています。つまり大量生産車T型フォードの誕生から約110年、大転換期に直面している従来の自動車業界の危機感があります。

車の本質まで変えてしまうEV化や自動運転は、自動車業界にとって前例なき闘いと言われているのは、ITやAIを駆使して車の産業構造を一変させ技術革新を仕掛けてくる、グーグルやアップル等異業種との対抗になるからです。

このEV化の波が鉄鋼業界及ぼす影響について、特に我々店売り流通にとっては、まだ対岸の火事のような捉え方が大半です。しかし鉄鋼メーカーにとると、リチウムイオン電池を大量に搭載するEVは、ガソリン車に比べ重くなり、自動車の主要部材を重い鉄から軽い素材に置き換える動きが、加速する可能性があります。

更に、従来のエンジン車の部品点数は約3万個、EVではその部品の約4割が不要になるとの試算があります。全て鉄の部品とは限りませんが、他の産業より裾野が広い自動車産業であれば、我々の鉄鋼加工流通まで近い将来影響がでると、考えた方が今から備えができます。

私の知人で、自動車解体業の社長がいます。先代が起こした会社を、自動車部品リサイクル業に発展させ、加えて、自社で再生部品を組み合わせ一台のあらたな車を造りレンタルまでしている、二代目経営者です。

私が長年乗っていたプリウスのエンジンに、去年異常が発生しました。正規のディーラーへ修理に出すか、中古エンジンを載せ換えるかの選択をしました。結局、その会社から提供された中古のエンジンを載せ換え、現在車は順調に走っています。

いずれEVが出回れば、エンジン関係の部品のリサイクルは限りなく減少していきます。少子高齢化に伴って車の保有台数が減り続ければ、使用済自動車自体も減ってきます。これまで業態を変え事業を伸ばしてきたその社長も、何か手を打たなければと、今までには無かった危機感を募らせています。

テレビで放映された“リーダーズ”は、世界一の国産乗用車を作るという夢に邁進した、トヨタ自動車の史実に基づいたドラマです。今年創業80年となるトヨタは、世界の自動車業界で名実共にリーダー企業となりました。

そのトヨタの起源は自動織機のメーカーです。因みにマツダの前身は、ビンに使用されるコルクのメーカーだったそうです。その業界で現在はリーダー企業でも、歴史を遡れば、過去において大変革期があったと言うことです。

より豊かな営みを求める人間の進歩は、留まるところをしりません。世の中に合わせ、変化させるところは躊躇わず、しかし変化させないところも見極め、わが社は行動を優先していきたく思います。

高速道路のパーキングにあるEV充電スタンド
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

働き方を考え直す

2017年08月05日 09時41分17秒 | Weblog
『長時間会社にはいるものの目立った成果を上げていないAさんと、夕方になるとさっと引き揚げるがいつも成果を出すBさん。この2人のうち、Aさんの給料が多いと言われると多くの人が違和感を持つのはないだろうか。働いた時間ではなく、成果に着目して給料を支払う「脱時間給制度」が実現すれば、この違和感は払拭されるかもしれない』。

政府は秋の臨時国会に、残業時間の上限規制などを含めた働き方改革関連法案を提出する方針で、中でもこの脱時間給制度の成否がカギを握ると言われています。しかし労働界(連合)には、この制度を残業代が支払われない制度として、反対する意見が根強いとされます。

冒頭の文面は、新聞による脱時間給制度を解説した記事の引用です。しかしこの制度は年収1075万円以上の制約が付く高度専門職で、総労働者の3%でしかなく、制度の対象者は極わずかです。対象者がもっと多く、似たような制度が裁量労働制です。

トヨタ自動車は、自由な働き方を認める裁量労働の対象を広げる方針を明らかにしました。法律上の裁量労働制は、脱時間給制のような年収の制約は無く、あらかじめ想定した残業労働時間に賃金を払う制度で、トヨタはこれをもっと弾力的に運用しようとしています。また同社は、子育てや介護をしている一般職にも在宅勤務を始めるとしました。

ライフ・ワーク・バランスとは、仕事と生活の調和の意味で、仕事の責任を果たし家庭や地域も大切にしていくことです。テレワークとは、遠く離れたところで(テレ)で仕事(ワーク)を、の造語だそうですが、色々な人材の能力が発揮できる取り組みのことです。この二つを最近耳にしますが、これも政府が推進している働き方改革の一部です。 

これ等に共通しているポイントは、「日本はもっと労働生産性を高めるべく、やった時間ではなく、仕事の質を高めることで成果を出す」となります。しかし働く側からすると、やった時間で稼ぎたい、時間で評価してもらいたい、との心情も払拭できないようです。残業代が生活給となっている、実態もあるかもしれません。

実際、製造業と非製造業では違います。例えれば、工場で共同作業していて時間内にさばき切れない仕事があって一時間残業したら成果が出るのと、商品開発や研究職は一時間残業したからその分の成果が出るとは限りらない、との違いです。

前々回のブログで“集中力を高める”と題し、ある医師の本を紹介しました。アメリカ人は5時に退社して、夕食を家族と一緒に食べるために、必死に時間内で仕事を終わらせる、との話をお伝えしました。それらが総じて、アメリカは日本の1.6倍も労働制生産性が高い統計に出ていると。
  
私の仕事は大よそ自分で管理できますので、その本の書かれている時間術を実践して三週間経ちます。一日の人間の生体リズムを自覚して、時間帯によって仕事にも緩急をつけ、心身を時折リフレッシュし、集中力を高め生産性を上げることを心掛けています。

心身不調のまま勤務することが生産性低下に繋がり、損失も大きくなることに注目し、また残業時間の上限法制化もにらみ、従業員の健康増進を通じて生産性や業績を高める「健康経営」の導入が、中小企業にも広がっているようです。少なくとも働き方の見直し・多様化は、企業単位でこれから真剣に取り組んでいく課題になることは確かです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする