梶哲日記

鉄鋼流通業会長の日々

企業統合とM&A(その9)

2024年03月09日 06時02分30秒 | Weblog
⑸ マーケット開拓
厚板の流通を簡単に示すと、鉄鋼メーカー→商社→問屋→溶断加工業者→アッセンブリメーカー→ユーザー、となります。素材を造る川上から加工品を使用する川下へ流れる中で、我々中間流通業(店売り市場)は大事な存在となります。川下の中小の最終ユーザーから、日々発注される小ロット・短納期の物件に対応するのが我々の役目となります。
鉄鋼メーカーに素材を発注(先物契約)しても、出来上がるのは一カ月以上先。従って市中の溶断加工業者からきょう・あす、一枚・二枚の材料が欲しいと言われれば、問屋は現物を持たなくてはなりません。鉄鋼メーカーに先物契約し、市中の溶断加工業者向けに、現物を提供することによってビジネスチャンスが生まれます。
近年国内鉄鋼需要が減る中で、問屋の販売先である溶断加工業者も減り、問屋がマーケットの占有率を争う時代ではなくなりました。勿論溶断加工業者も、取り巻く厳しさは変わりませんが、川下を相手にしている加工業者は、やり方によってはまだ手の打ちようがあるように思われます。問屋業であった梶哲商店にとってみると、S社と合併したことは、結果的に新たなマーケットを開拓したことになります。よりユーザーに接近することで最終需要家に近い情報が入ってくることになりました(選択肢がある)。鋼板販売の最盛期が過ぎ去り、現在この事業はわが社の大黒柱となっています。

~M&A上の解釈~
業界紙に最近、次のような記事が掲載さました。『中部地区の鋼材流通加工業、オーナー系でM&A・提携広がる。コスト高、需要環境変化、物流問題、人手不足などがある。単独で対応が難しい課題、解決の手段にも』『中部地区は自動車関連産業など需要家に近い位置で、それぞれ独自の特徴や機能を持ったオーナー系鋼材流通加工業が多いといわれるが、それでも外部環境が激変している中、一社単体では対応が難し課題解決のためM&Aを含めたさまざまな連携・協業体制を検討する動きが増えてくる』と、新聞は伝えています。他地区に比べ末端のマーケットを押さえている中部地区業者でも、ユーザーニーズの変化の中で、扱い鋼種を拡大したり付加価値のある加工に挑んだり、その対応は一社では限界があるとのことを物語っています。大企業に限られていた昔のイメージから脱却して、今や我々クラスの鉄鋼流通企業同士を提携・統合するために、M&Aはその一端を担う時代になったようです。
M&Aの利点は、ある程度時間をかけて相手先を選べるところにあります。それは売り手も買い手も同じです。仲介会社が間に入りますので、当事者が直に会って交渉する必要もありません。梶哲商店のケースは突発的に相手の会社と統合することになったので、M&Aと違って相手を選べなかったことです。しかしそれが、新たなマーケットを開拓する結果となり、選ばなかったことが大正解だったと、今は考えています。
現在M&A仲介事業者は全国に600社あると言われていますが、近い将来1000社を超す勢いのようです。当然その事業者の良し悪しも、今後問われることとなります。最近わが社にも仲介事業者からM&Aの打診の問い合わせが増えてきました。わが社にまでどうしてと思いますが、不特定で多くの一般企業に接触しているのでしょう。事業継承においても事業変革においても、M&Aは売り手と買い手の積極的なニーズを結び付ける、たしかな役割を担ってきたのだと捉えています。

次回は~総論として~と題して、私見を述べ、今回のテーマを終えます。今まで実際に起こったわが社の事象を、⑴金銭収支、⑵資産取得・処分、⑶人材確保、⑷技術取得、⑸マーケット開拓、の項目に分け、次にそれぞれの項目ごとに~M&A上の解釈~として、比較検討してきました。二つの会社が一緒になったのは結果的にM&Aだったのかの懸案の見解も含め、現在のわが社がどのような方向性をもってきたのかもここで再認識して、最終回でまとめたいと思います。    ~次回に続く~

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