梶哲日記

鉄鋼流通業会長の日々

山仲間の集い(その1)

2023年11月25日 06時51分39秒 | Weblog
10月下旬の土曜日、秋川渓谷の小道をゆっくり遡行する企画に参加しました。紅葉の時期には少し早かったものの、天気には恵まれ、山仲間の旧交を温めることができ、解放感が溢れ一日楽しく過ごせました。そのプランの概要(お誘い)には、以下こうありました。

“初秋の秋川渓谷エッセンスとの触れ合い。小魚の魚影を追いながら清流小路遡行、樹齢400年を超える市の天然記念物である五柱神社の杉との対面、苔生す岩肌に打ち付ける急流を楽しみながら摂るランチ、仕上げは瀬音の湯の足湯で疲れた足を解します。ここでは売店が有りますのでお土産や天候に合わせ温冷の飲み物等を購入して楽しむ事が出来ます。正味3時間程の散策を通し五感で渓谷の魅力を楽しむプランです”

秋川渓谷は、東京都多摩地域の西部に位置するあきる野市にあります。隣接する市としては八王子や青梅などです。公共交通機関を使うとすると、青梅線の拝島駅で五日市線に乗り換え、終点の武蔵五日市駅で降りて、そこから地元の西東京バスに乗ればこの秋川渓谷に着きます。

「東京都心から西へ1時間半ほど。そこには緑豊かな清流の秋川渓谷がある。多摩川の支流の中でも最大といわれる秋川。あきる野市から檜原村に及ぶ全長20kmほどを秋川渓谷と呼んでいる。新緑、紅葉など四季折々に表情を変える景色は見ごたえたっぷり。河原では、バーベキューや水遊びのアウトドアライフも楽しめる」。ネットで秋川渓谷を検索すると、そんな文言が並び興味をかき立たせます。

どのような人達とそこに行ったのかです。大学のクラブのOB・OGが参加する企画です。このブログ上で何回か書きましたが、私は大学時代ワンダーフォーゲル部に所属していました。その卒業生が春と秋に日帰りで登山や散策を楽しむ会があり、初めは複数のパーティに分かれて活動しますが、最後は参加者全員が一堂に会し、山仲間との親睦を深めます。

現在当部のOB・OGの会員は1000人を超えます。卒業年度でいうと昭和36年から昭和41年までが最も多く、各代40名を超えています。年齢でいうと85歳から79歳くらいです。昭和30年代後半は、登山やワンダーフォーゲルのブームを迎えました。戦後の高度成長時代と共にレクレーションの普及や登山の大衆化が進み、各地の大学でワンダーフォーゲル部の創設が急増します。しかし部員が多過ぎて軟弱な新入生はふるいに掛けるような、シゴキ事件も一時期問題視されました。

昭和50年卒の我々の代は、15名(毎年の会費を払って名簿に載っている人数)です。我々以降も部員は減り続け、各代10名を切ってしまう時代が長くあり、廃部に追い込まれる危機もありました。しかし、15年ほど前からの山ガール旋風の追い風もあり女性部員も多く入ってくるようになり、また近年のアウトドアライフの人気も相まって、最近の現役の総員数も50名前後と安定しています。

この春と秋の日帰りプランは、そのようなOB・OGが100名ほど毎回集まり、他行事がある中で年間でも一大イベントとなります。卒業生が組織する最大の委員会は親睦委員会で、このイベントはここで企画されます。毎回違う山域を選定して、リーダーとサブリーダーを選出して、その山域で行きたいところのプランを決め、参加者を募集します。

プラン内容は、体力に合わせて参加しやすいよう、①平地散策プラン、②登山プラン、③BCプランに分類されます。BCとはベースキャンプの意味です。現役の夏合宿は分散・集中方式で行ってきました。一年から四年生までの小パーティに別れ(分散)同じ山系で一週間ほど合宿登山して、最後は全員がBC地に集まり(集中)一泊しました。別れていた同期がBC地で再会し、合宿中の辛かったことや自慢話など花を咲かせます。OB・OGの日帰りプランもその現役時代の名残りです。体力に自信がない人は、③BCプランだけでも参加OKです。

リーダーとサブリーダーは同じ年度で協力し合って行います。現在リーダーとサブリーダーを担っているのは、年齢でいうと上は70歳前半から下は60歳前半です。年々このリード役は下の代にバトンが渡され、リタイアした代は、次からメンバーとして参加します。年下のリーダーだとしても、年上のメンバーであっても服従しなくてはなりません。

今回、①で3個②で11個(難易度:★2つから★5つまで)のプランが出されました。私は①の中の、冒頭のようなプランを選びました。次回はその参加した様子をお伝えします。この日帰りプランはいつも天候に恵まれます。その訳も説明いたします。    ~次回に続く~

 BC地で

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新たな仕事(その11)

2023年11月18日 00時56分57秒 | Weblog
障害者を預かる施設で、職員が利用者(入所者)を虐待し、暴行を加える傷害事件が後を絶ちません。今年9月大阪高槻市の障害者支援施設で、39歳の職員が50歳代の入所者の頭を殴ったり腹を蹴ったりする暴力を加え、肋骨を折る怪我を負わせる。容疑者は夜勤明けの勤務中であった。そんな新聞記事を最近目にしました。
  
その記事の中では、障害者施設やグループホームで似たような事件を採り上げていました。宇都宮市で2017年、元職員が障害で逮捕され、公判で「利用者が言うことを聞かなかったので罰を与えた」と証言した。愛知県東浦町では2019年、元職員による虐待事件が起き、公判で「一人で宿泊中に物音で起こされ、睡眠を妨害され立腹した」と話した。などなどです。

厚生労働省によると、こうした虐待は年々増加しており、21年度は13年度の2.66倍にあたる699件が確認され過去最多だった。原因は「職員の教育・知識・介護技術等に関する問題」が最多で、「職員のストレスや感情のコントロールの問題」が続いた。と記事にはありました。専門家による見解で、「密室の施設で虐待が起こりやすく、職員のブレーキがかかりにくい」、ともありました。

老人の介護の施設でも、同じような事件が多発しています。このような痛ましい事件に対して、志を持たず介護を理解していないと職員を責める一方で、SNSでは次のようなコメントがあります。「介護士の暴力は大問題になるのに、お年寄りから受けてる暴力は、分からないから仕方ない、理性を保って我慢しろ。なぜ、叩かれたり蹴られたり暴言をはかれても我慢し続けないといけないのか。介助する側がケガをしてもそこまで大きな問題にもならない」「要介護者を守る制度・法があるのに介護士を守る同等のものはない。介護士側を守る制度がなくて給料水準も低い。そんな仕事に人材が増える訳がない。背景や内実も知ろうとせず、介護もした事がない人間がニュースを見て簡単に批判するのを見聞きすると虫唾が走る」。

事件報道で顕在化していないのは、介護士は肉体的にも精神的にも大変な仕事に従事している生身の人間性です。当然のこと、傷害や殺傷に及ぶ行為はもってのほかですが、介護士側だけの問題として切り捨てるのは片手落ちです。介護される老人の介護者への加害性の実態も、我々は把握しておくべきです。話しは、老人介護施設の問題点まで広がってしまいました。しかしながら障害者施設も含め、介護者は「弱い立場の人に寄り添って声なき声を聴くこと」が、最も大事な仕事だと私は考えます。私のいる施設は過酷な職場ではありませんが、利用者に「寄り添い声なき声を聴く」そのような介護者になりたいと思っています。

前回登場した、私を「センパイ、センパイ!」と呼んでくれる彼の話しです。施設で悩みを抱え行き詰まり、辞めようかと思ったことがあったそうです。しかしギリギリで留まったのは訳があります。利用者の一人で彼をとても慕ってくれる女性(50歳代)がいて、話すことの障害はありますが、50音表を指で示してくれれば彼女の言葉は聞けます。彼が冗談を言えば、彼女は全身全霊で反応しくれます。辞めたら、その女性が悲しみ落胆するだろうとのことで、離職を留まった。と、彼は飲みにケーションの場で話してくれました。彼は利用者に寄り添い声なき声を聴いている一人です。

そのような彼も私も高齢就業者です。過去のキャリアを生かしながら働ける、高齢再就職者に夢を与えてくれる映画を観ました。題名は『マイ・インターン』。ロバート・デ・ニーロ演じる70歳の新人:ベンが豊富な経験と人柄をもとに、若き女性経営者を支える様子を描きます。以下映画のあらすじです。

ベンは仕事を辞めて趣味中心の生活を楽しんでいました。ただ「何か満たされない日々」が続くと感じ、そのぽっかりした穴を埋めたいと思ってシニア世代を対象にした採用に応募します。ベンは若き女性経営者がマネジメントするファッション通販の会社にシニア・インターンとしてやってきます。若者ばかりの社内で当初は浮いた存在でしたが、その誠実で穏やかな人柄で周囲の人に接していきました。過去に電話帳会社に40年間務めた経験も活かしながら、仕事に追われる社長の秘書に適切な助言を与えます。秘書は9カ月間「必死で業務をこなしているのに社長から何も任されていない」と嘆いていました。ベンは、作成した顧客動向を示す購買パターンの分析表を秘書のお陰で出来上がったと社長に渡します。同時に、ベンは秘書を「ボス」と呼び、彼女の満足げな笑顔を引き出す。自分を使って業務過多を解消すれば、ストレスも減り、友人と過ごす時間もつくれるといったアドバイスもします。若き女性経営者も初めこそはベンとぎくしゃくしますが、40歳年上の彼といると「なぜか心が落ち着く」といい始めます。ベンの人生経験から来る様々なアドバイスや気遣いに触れて信頼を寄せるようになっていきます。

以上が映画の内容です。主人公のベンは自らのモットーを語っています。「正しいことは迷わず行え」「行動あるのみ」。これはシニアにとって必要な心構です。しかし再就職の前の「何か満たされない日々」、その鬱屈もありました。ベンが気付いたのは、充実した生活を継続するためには、現役時代の仕事に代わる、毎日のルーティン活動が基本となる大切さ。

老後の漠然とした不安の正体は、お金ではなく生きがいなのではないでしょうか。仕事をリタイアして、悠々自適に趣味や娯楽そして地域活動などに専念するのは、勿論個人の自由です。今の職場の私は、映画の主人公のようにドラマチックで華やかさはありませんが(主人公にはとても憧れますが)、一旦素になって、この仕事をこれからも続けていこうと思っています。

 映画『マイ・インターン』
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新たな仕事(その10)

2023年11月11日 06時16分01秒 | Weblog
私が働くようになった障害者介護施設の職員は現在12名で、正社員4名、後8名はパート社員です。入所してから分かりましたが、私より年上のパートの方が二人(約10歳と5歳上)もいました。その方達がしっかりと戦力になって下さっているので、代表も高齢者の入所選考についてはマイナスの先入観がなかのったのだと思い、二人の方に感謝しています。

この仕事をする上では資格が必要です。その資格については詳しく後述しますが、しかし資格がなくとも補助スタッフとして働けます。資格がなくても長くこの仕事に従事し、この施設にはベテランの域に達している職員もいます。新米の私としては、年齢に関係なく全ての方が先輩です。職場全体の雰囲気はいいので、職員同士の人間関係においての多少の苦手意識は払拭できています。

「センパイ、センパイ!」と近寄ってきてくれて、親しく話せる人ができました。男性職員で入所2年目、私より5歳年下です。前職はアパレル関係の会社を経営していたそうです。いつしか仕事の後に、飲みにケーションをするような仲になりました。施設内では話せない問題や、私の愚痴も聴いてくれます。本音で話してくれて、彼の悩みも打ち明けてくれます。

二人には感情もあり生身の人間ですので、例えば施設の方針や運営について、全く異論がない訳ではありません。とは言え互いに腹を割って話せるので、それだけでも不平・不満はある程度解消します。彼と話す時は、介護業界の私の知らない世界があり頭がフル回転して、また感じ方・考え方も似通っていて価値観の共有ができます。

その彼は、介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)を受講して認定証を取得しています。前職を辞めてから、介護職に興味を持ち出し、務める前にその資格を取ったといいます。介護職員初任者研修とは、厚生労働省認定の公的資格ですが、国家資格ではありません。介護を行う上で必要な知識・技術を身につけて、介護をより高いクオリティで行えるようになるための資格です。指定されたカリキュラムに従い、合計130時間の講義と実技演習を履修する必要があります。

厚生労働省が示す介護職キャリアパスのスタート資格でもあるため、キャリアアップを目指している人や、これから介護の仕事に携わる未経験の人が最初に取得することが望ましいとされています。この上級資格に実務者研修、更にその上に国家資格である介護福祉士があります。

介護福祉士の資格を取得するには条件があります。養成施設や福祉系高校に通ったり、実務経験を積んだりすることで、受験資格を得られます。実務経験は3年以上が要件です。つまりこの資格は、介護職員初任者研修と違って、しっかりと基礎を学ぶか現場実務を経験しない限り資格が取れないのです。このようなことも初めて知ります。

我々の施設には、介護福祉士が数名在職しています。私は働き出して見よう見まねで介護の仕事をすることに、ある段階から限界を感じていました。また資格が無いベテランの職員の方の介護も、一旦検証してみたいと思うようなりました。後付けだとしても、私は介護の基礎や基本を学ぶ必要性を感じるようになりました。

そのような経緯から、専門学校で介護職員初任者研修を受けることを決めました。130時間の講義と実技演習の履修となりますので、朝から夕方までの授業で15日間になります。私は仕事で平日は行けませんので、日曜日限定のコースで、12月中旬からスタートし来年4月上旬で終了するものを選びました。その教育機関の校舎は千葉県には三か所あり、千葉駅近くにある校舎(雑居オフィスビル内)に通うことになります。

新たな仕事に就いて半年経ちました。たまたま採用してくれた職場の職種は介護。その職種の資格に挑戦するとは思いもよませんでした。新たな事を学ぶことは今の自分にとっては活性となり、いずれにしてもこの仕事を続ける上でプラスの資産になると思っています。   ~次回に続く~ 

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新たな仕事(その9)

2023年11月04日 06時08分44秒 | Weblog
「新たな仕事」のテーマで書き始めて、9回目となります。後2~3回で、その施設の利用者や職員、この仕事をする上での資格、そして自分の今の心境、などを書いてこのテーマを終わりにしたいと思います。

前回も書きましたが、私が働いている施設は24時間の入所式の重度障害者用ではなく、自宅やグループホームから利用者さんが通ってくるデイ介護施設です。映画『月』のような人里離れた場所で個室(密室)があるような施設ではなく、ここは街中にあり利用者が一同に介する明るいフロアがある施設です。

利用者は、身体、知能、精神に障害がある方達です。ハンディによって、ひとり一人行動力も表現力も違ってきます。自力で歩ける、杖を使えば歩ける、常に車椅子を利用する、方々。普通に話せる、話せるけれど支障がある、全く話せない、方々。生まれつきではなく、ある年齢で突然障害を負った方もいます。医者の指示で精神安定剤を常用されている方もいます。従って職員も、個々の利用者さんへの対応は異なってきます。

ある利用者さんの話しです。その方は「O」さん、男性で40歳前後です。毎月施設では誕生会を開きます。利用者と職員の誕生月を祝う会です。そのOさんの誕生会の最後、司会役の職員から「Oさん、写真を撮るのでマスクを外して笑って下さい!」と声が掛かると、Oさんは満面の笑いを作り出したのです。私はOさんの笑顔を初めて見ました。

Oさんは表情が硬く、話す言葉も早口で何回も繰り返すので聞き取れませんでした。話そうとすることを紙に書いてもらうと、しっかりと書いてくれます。しかし書く内容が消極的です。例えば、「酒やタバコをやるとサタンがつきまとう」とか「ストーカー行為をすると地獄に行く」。彼は、酒やタバコはやらないそうですが、好きな女性タレントはいるとのこと。能力

施設の代表に尋ねると、Oさんのお母さんが厳しい人のようです。夜間家を抜け出して警察に補導されたり、長いこと精神科の病院に入院させられたり、そんなこともあったようです。そんな彼をお母さんは心配して、時に強く彼を威圧・抑制するようです。私は誕生会の翌日、Oさんに提案しました。「会った時マスクを外して、お互いに笑顔を作りましょう!」。Oさんは、毎回応えてくれるようになりました。

それから暫く経って、レクリエーションの準備の作業中、Oさんは突然笑い出しました。今までにないことです。利用者さんを車で送って行く時、彼は盛んに私に話しかけてきました。早口で理解出来ませんので、「指を一本一本折るようして、一語一語話してみて」と話すと、実行してくれて、聞き取れるようになりました。しかしそれも束の間、また機関銃のような早口に戻ります。その繰り返しが続きます。

もう一人の利用者、女性で50歳半ば「K」さんとのやり取りです。Kさんは立って歩けますが、大人になって発病して、軽い記憶や身体障害が残ります。会話は普通にでき、むしろ積極的に私には話をしてくれます。新米の私としては、利用者さんの言うことに極力応えようとします。

やはりリクレーションの準備の作業中、Kさんから「梶さん、この色鉛筆を削ってきてくれますか」と、声が掛かりました。私は「はい分かりました、今取りに行きます」と答えかけた途端、ベテランの職員さんから「Kさん、あなたは自分で歩けるのですから、自分で削りに行って下さい!」と、たしなめられてしまいました。

私に対しての助言の言葉なのだと、はっと気付きました。自立できる人は余計な支援をしてはいけないのです。代表は言います、「親としては、自分たちが死んだ後のことを考えると、子供には少しでも自立・自活することを願っている」と。Oさんのお母さんは、このような憂いから、息子に厳しくいうのかもしれません。

しかしです、当の子供にとって威圧や抑制が過ぎると、マイナスイメージが刷り込まれ、萎縮してしまいます。家族(またはホーム)と介護者と場合によっては掛かりつけ医とが、個々の利用者の方を包括する支援が必要となります。ここの施設でもその努力は重ねています。月一回行われる職員による会議で、「利用者さんに対する気付き」をテーマに熱心に話し合われます。   ~次回に続く~

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