梶哲日記

鉄鋼流通業会長の日々

営業との同行(その2)

2015年06月27日 06時42分06秒 | Weblog
私は以前、一人でお客様に定期訪問をしていました。勿論わが社には、得意先にはそれぞれ営業の担当者がいます。しかしその当時、営業の担当者と一緒に行くことはありませんでした。それには、一つの訳がありました。

今から20年前、経営者だけを対象とした勉強会に、私は数年間参加していました。会社経営はお客様第一主義がベースであり、三種の神器を持って実行し収益を上げることが最大の課題であると、その先生から指導を受けました。

その三種の神器は何かと言いますと、「お客様訪問」「経営計画書」「環境整備」でした。今回はこのお客様訪問に説明を絞りますが、経営とは外部に対応するものであって企業の内部管理ではないとの理論で、社内で指示・命令する穴熊社長を脱して、お客様に自社のサービスや商品の至らない点を伺い市場を見て来なさいとの主旨でした。

何年間はそれを実行すべく、私一人でお客様には定期訪問してきました。お客様を訪問してそれなりに得るものもありましたし、また他の神器を用いていれば、会社は回って行くものと信じていました。

しかしある時期から、それに対して疑問を持つようになりました。どのような疑問を持ったのか。簡単に言いますと、社員の目から見た視点を考えていなかったと気付いたからです。社長の思いや考えに対して社員はそう取っていない、社員の受け止め方は真反対かもしれない、との見方です。

社長からしてみると、お客様に一人で訪問して至らない点を伺うというのは、営業担当の至らない点を、得意先の社長から直に聞くことも視野に入れます。それで営業社員が心地良いか、むしろ信用をされていないと取るのが順当です。

そして私も、後継者を考えなくてはならない年齢になりました。社員に先ず任せない限り、自主性や責任感は生まれて来るものではありません。社長の仕事は、判断・決断であり、最後は社員の行ったことに最終責任を取ることです。今はそのように変化しました。

しかし、お客様訪問を放棄したものではありません。今回営業と同行して、お客様から頂くヒントの多さや営業とのコミュニケーションの大事さを再確認しています。
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営業との同行

2015年06月20日 10時21分21秒 | Weblog
わが社には肩書はそれぞれ違いますが、営業を担う社員が3名います。ここ一ヶ月半以上、私はその営業一人一人について行き得意先を回っています。営業力を強固なものにする為に、販売量が目標値を上回るまで、私もこの任務を最優先しています。

訪問する先は営業の方で選択し優先順位をつけてもらって、私はそれに従っています。私自身のスケジュールは最低限にして、後は空いたところへ予定を組んでもらうように営業には頼んでいます。

得意先に行くのは、車なり電車なり交通手段はまちまちですが、当然営業と様々な会話をしながら回ることになります。その得意先の動向や、営業の方針や、仕事を離れたこと等、会話は尽きません。

むしろ会社内での会議では出て来ない内容のものが多くあります。環境が替ることで、長時間会話することで、視点が変化しているのかもしれません。杓子定規の会議などより、自然さを私は感じます。

得意先を訪問して何を話すかは、事前におおよそ打合せはします。しかし得意先からの投げかけもありますので、一概にシナリオ通りには行きません。お客様の話しもしっかりと聴き、受け止めることも大事です。我々の阿吽の呼吸も必要とされます。

我々側の、漫才でいうボケとツッコミの役割が、お客様との会話を盛り上げるには有効のようで、回を重ねるごとにそのような学習もしています。

未だ取引がない新規先に行く時は、私はセールストークをしません。わが社のPRや扱い商品説明は、営業に全て任せます。日頃は営業一人で行っているのですから、社長の前でのセールストークはしづらいことと思います。

しかしこれも、訓練と取ってもらいたいと思います。普段これを営業は必死に行なっている訳ですので、自分が見えていないこともあります。他人の目から見た、客観性がなかなか持てないのも事実です。一番敏感に反応し、その良し悪しを分かるのはお客様です。

営業から聞かれれば言うことにしますが、私からダメ出しはしません。しかしよほど相手に不快感を与えているようでしたらポイントだけは言うようにしています。相手がどう感じているか、営業は常に意識する気持ちを大切にしてもらいたいです。
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不甲斐無さ

2015年06月13日 06時20分04秒 | Weblog
経過は省略しますが、観光で行ったのではない大阪で、4時間半ほどの時間が空きました。そこで、奈良の東大寺に行くことにしました。天王寺駅からJR大和路線の快速に乗れば、40分もかからず奈良駅に到着します。

奈良駅に降りたつと、その日は初夏を通り越した暑さでした。平日でしたが、奈良はさすがに観光客が多く、外人の特に東南アジア系の人達が目立ちます。奈良駅から市内循環のバスに乗って、東大寺大仏殿のバス停で降りて、山門に向かいます。

山門の手前にはお土産の店が並び、その辺りから放し飼いの鹿が寄って来ます。鹿が人間に寄って来るのは、恐らく餌をもらいたいからでしょう。人懐っこいとはいえ、慣れないとあしらいに戸惑います。

山門を抜け、大仏がある東大寺の直前まで来ると、道の右手には池があり、左手にはベンチが幾つか並んでいます。その一つに腰掛けることにしました。行きかう人を観察するのも面白いものです。隣のベンチには中国人らしき親子が座りました。

そのような親子にも鹿が寄って来ます。お父さんは大きなゴミ袋を持っていました。ゴミ袋の中には、ハンバーグか飲物の残りが入っているようです。私はしばし休憩をした後、ベンチから離れ池の方に向かいました。

池を回って本来の道に戻ると、その親子がベンチから立ち去るところ。よく見るとお父さんがゴミ袋を置いていくではないですか。一瞬ためらいました。注意しようか、いや誰か掃除人が後で拾ってくれるのではないかと。結局、面倒くささもあり見過ごします。

近くにある公衆トイレに入って戻ってみると、鹿がそのゴミ袋を食い散らかしています。誰もそれを片付けません。そこで後悔が湧き起こりました。せめてそのゴミを拾って、綺麗にすることでしか、私には出来ません。

ゴミを拾ってトイレの前にあるゴミ箱に入れようとする直前、何とそのお父さんがトイレから出て来るではないですか。「ユー、ノー・グット」。お父さんお母さんや子供の手前でしょうか、苦笑いをして何も言えません。国民性もあるでしょうが、少なくともここ日本ではゴミを放置する行為は許されません。

勇気を出してその場で一喝出来なかった不甲斐無い私でしたが、後で注意するチャンスが到来しました。
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商売繁盛の極意

2015年06月06日 09時47分52秒 | Weblog
先日たまたま、NHKで“知恵泉”という番組を観ました。「先人たちの底力・商売繁盛の極意」というテーマで、財閥の始祖三井高利が52歳で開業しながらも、江戸で後発の呉服店が何故繁盛したのかを探っていく内容でした。

江戸時代初期、それまでは呉服等を売る方法としては屋敷売といって大名などの得意先を回って注文を取り、品物を届けて、代金はつけで正月と盆に回収というのが一般的でした。高利はそうした大名相手の商売をせず、町人や大衆向けに呉服を売り出したのです。

当時町人や大衆は古着を買うのが習慣でした。そんな中、町人達が行きかう店の前にずらりと反物を並べて、広告を出し、現金掛値なしの所謂定価販売を実施しました。そして従来売買単位は一反が当たり前であったのを切り売りし、例えば煙管(きせる)の袋に使うのであればそれも店内で作ってしまう。また一定期間売れない商品は見切る、バーゲンセールまで行ったのですから、何から何まで斬新な商法でした。

この知恵のルーツは、三重の松坂で家業を切り盛りしていた母親にあります。ともあれ顧客に現金払いを要求する一方で、つけの踏み倒しリスク分を価格に上乗せする必要性も無く、良質な商品を必要な分だけ安価で販売したのですから、顧客に便利がられ、買い物に革命を起こせたのです。

厚板の端板在庫販売をし出した、40年ほど年前のわが社です。発生品の商売自体はそれ以前から他社も行なっていました。新規に参入したわが社としては、端板を店頭に見やすく並べ、厚みと㎡によって社内で独自の基準を設けて、全ての板に定価をつけました。そして定価の入った在庫のリストを、毎週お客様に郵送を開始しました。また売れなくなってしまった端板は、適宜安値処分をしていました。その後、大板を扱うようになって、切り売りもしていたこともあります。

全てのお客様にこの商法は受け入れられた訳ではりませんでした。しかし、倉庫に来られたお客様からは、「誰でも同じ価格で出してくれるし、一々値段を交渉する必要もなく、安心して買える」との評価を頂いたのも事実です。

先代が編み出したこの商法のルーツはどこにあったのか、今となっては分かりませんが、後発であったからこそ差別化を目指したのだと思います。NHKの番組を観ていて、当時のわが社のスタイルがダブりました。
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