今から36~37年前のことです。家内と結婚して四年後にして、長女が産まれました。父親の懇意にしている方が、ご夫婦でお見えになり、その奥様が作られた毛糸の手編みの“おくるみ”を頂戴いたしました。私はその際に「何着あっても重宝します。有難うございます」と、そんな言葉がつい口から出てしまいました。
実は既に“おくるみ”を、他の方から出産祝いとして頂いていたのです。同席していた父親から、後でこっぴどく叱られました。「相手の立場に立ってみなさい」と。確かにそう言われればそうでした。余計なことを言わずに、その方に対してのみのお礼の言葉でよかったのです。
私の父親もそのご夫婦も、だいぶ昔に亡くなっています。しかし、大失敗した記憶はいまだに無くなりません。『覆水盆に返らず』とか『綸言汗のごとし』とか言います。これらの故事のように、一度してしまった失敗は取り返しがつかないし、一度口から出てしまった言葉は取り消すことができないのです。何気なく使う言葉には、問題を引き起こす種が隠れています。言葉の使い方について、少し考えてみました。
社内会議で、各部門の責任者が毎回報告をしているとします。「何かありましたら、報告して下さい」と、司会進行役が言ったとします。これから報告をしようとした者が、「特別な事でなければ、報告をしなくてもいいのですか」と、取ってしまう危険性があります。例えば「お伝えしたいことを、是非報告をお願いします」と誘導すれば、発言者の気をそらすことはないでしょう。
コンビニに入ってきたお客さんがマスクをしていないとします。店員さんが「お客さん、マスクをして下さい!」と言ったとします。マスクは持っていて、つい着けるのを忘れたのかもしれません。面倒くさいのでしなかったのかもしれません。例えば「お客さん、マスクをお持ちですか?」と問い掛ければ、気を害することはありません。
会社の業績がコロナで悪化して、改善を目指して頑張ろうとしているとします。トップが社員を前に「せめて収支トントンまでは何とか持っていきたい」と伝えると、収支トントンでいいんだと、社員の中には自分には関係ないと捉える人もいます。例えば「絶対赤字だけは出さないように、一人ひとりの力を結集しましょう!」と表現すれば、皆の気を前に向けさすことができるはずです。
これらで共通しているのは意味として同じようなものでも、発した側のその表現によって、その言葉を受けた側の気持ちは違ってきます。言葉は話し手と聞き手と対(つい)をなす、切り離すことはできない、二つで一つの対だと私は考えます。切り離すことができないとは、聞き手の反応(良い悪い)が必ず対をなしているとのことです。
言葉の使い方は、失言して恥をかいたり誰かから教わったりして、年齢が増せば大きな失敗は収斂されることでしょう。その前提に立てば、歳を取ればとるほど、他人は注意してくれません。受け手は非常識と思っても、嫌われ者になりたくないから余計なお節介をしない、そのようことも考えられます。
ちょっと話題は変わるかもしれませんが、先日観ていたテレビで“アンガーマネジメント”を取り上げていました。初めからその番組を観ていなかったので、導入部分はよく分かりませんが、母親が子供の教育で悩んでいることに応用できるとの想定のようでした。
“アンガーマネジメント”の存在は、以前から知っていました。その意味は簡単に言えば、「怒り」を上手にコントロールすることです。怒ることが絶対にだめだという教えではなく、ちょっとしたことでイライラせず、怒りを上手く扱う方法を教えてくれるものです。
アンガーマネジメントは、1970年代にアメリカで生まれたとされています。当時は、DV(家庭内暴力)や、軽犯罪者の矯正プログラムのために作成されたようですが、現在ではそれが一般化して、企業研修など様々な分野で取り入れられています。言葉の使い方において、このアンガーマネジメントにヒントがあるのではないか、と思うようになりました。 ~次回に続く~
実は既に“おくるみ”を、他の方から出産祝いとして頂いていたのです。同席していた父親から、後でこっぴどく叱られました。「相手の立場に立ってみなさい」と。確かにそう言われればそうでした。余計なことを言わずに、その方に対してのみのお礼の言葉でよかったのです。
私の父親もそのご夫婦も、だいぶ昔に亡くなっています。しかし、大失敗した記憶はいまだに無くなりません。『覆水盆に返らず』とか『綸言汗のごとし』とか言います。これらの故事のように、一度してしまった失敗は取り返しがつかないし、一度口から出てしまった言葉は取り消すことができないのです。何気なく使う言葉には、問題を引き起こす種が隠れています。言葉の使い方について、少し考えてみました。
社内会議で、各部門の責任者が毎回報告をしているとします。「何かありましたら、報告して下さい」と、司会進行役が言ったとします。これから報告をしようとした者が、「特別な事でなければ、報告をしなくてもいいのですか」と、取ってしまう危険性があります。例えば「お伝えしたいことを、是非報告をお願いします」と誘導すれば、発言者の気をそらすことはないでしょう。
コンビニに入ってきたお客さんがマスクをしていないとします。店員さんが「お客さん、マスクをして下さい!」と言ったとします。マスクは持っていて、つい着けるのを忘れたのかもしれません。面倒くさいのでしなかったのかもしれません。例えば「お客さん、マスクをお持ちですか?」と問い掛ければ、気を害することはありません。
会社の業績がコロナで悪化して、改善を目指して頑張ろうとしているとします。トップが社員を前に「せめて収支トントンまでは何とか持っていきたい」と伝えると、収支トントンでいいんだと、社員の中には自分には関係ないと捉える人もいます。例えば「絶対赤字だけは出さないように、一人ひとりの力を結集しましょう!」と表現すれば、皆の気を前に向けさすことができるはずです。
これらで共通しているのは意味として同じようなものでも、発した側のその表現によって、その言葉を受けた側の気持ちは違ってきます。言葉は話し手と聞き手と対(つい)をなす、切り離すことはできない、二つで一つの対だと私は考えます。切り離すことができないとは、聞き手の反応(良い悪い)が必ず対をなしているとのことです。
言葉の使い方は、失言して恥をかいたり誰かから教わったりして、年齢が増せば大きな失敗は収斂されることでしょう。その前提に立てば、歳を取ればとるほど、他人は注意してくれません。受け手は非常識と思っても、嫌われ者になりたくないから余計なお節介をしない、そのようことも考えられます。
ちょっと話題は変わるかもしれませんが、先日観ていたテレビで“アンガーマネジメント”を取り上げていました。初めからその番組を観ていなかったので、導入部分はよく分かりませんが、母親が子供の教育で悩んでいることに応用できるとの想定のようでした。
“アンガーマネジメント”の存在は、以前から知っていました。その意味は簡単に言えば、「怒り」を上手にコントロールすることです。怒ることが絶対にだめだという教えではなく、ちょっとしたことでイライラせず、怒りを上手く扱う方法を教えてくれるものです。
アンガーマネジメントは、1970年代にアメリカで生まれたとされています。当時は、DV(家庭内暴力)や、軽犯罪者の矯正プログラムのために作成されたようですが、現在ではそれが一般化して、企業研修など様々な分野で取り入れられています。言葉の使い方において、このアンガーマネジメントにヒントがあるのではないか、と思うようになりました。 ~次回に続く~