第一次世界大戦の末期、水兵の反乱を契機としドイツ革命が始まり、1918年ブルジョワ共和政国家が成立します。皇帝ヴィルヘルム二世はオランダに亡命、大戦の停戦協定が成立し、ドイル第二帝国(第一帝国は神聖ローマ帝国)は崩壊します。翌年ヴァイマルで開催された国民議会で憲法が制定され、ドイツはヴァイマル共和国となり、1933年のナチス政権成立まで続きます。
このヴァイマル共和国は1920年代には史上最も民主的といわれながら、政治と経済の混乱からみるみる全体主義国家に変わり14年間で滅びます。その国家を、ヒトラーは自ら第三帝国と称しました。そしてドイツは1939年ポーランド侵攻、それによって第二次世界大戦が始まり、1945年ソ連軍がベルリンに突入しヒトラーは自殺し、その後無条件降伏を受理して第三帝国も崩壊します。
「現在の世界は、二十世紀前半と似てきた。ここ数年、保護主義が広がり貿易戦争が続く。各地でポピュリズムに訴える指導者が現れ、自由や民主主義を脅かしている。突然のコロナ危機は大恐慌から戦争へと突き進んだ過去さえ思い起こさせる。独裁者ヒトラーに支配され、戦争の災禍を招いた過去がすぐ浮かぶ」。“ヴァイマルの教訓とは”のテーマで書かれた、最近の新聞のコラムです。
「ポピュリズムや民主主義が勢いづく、これは1920年代と似たヴァイマル状況ではないかと心配する。当時どこにスキがあったのか。民主制の弱みを突かれたのではないか。敗因から対策も見てくる。とにかく政治が不安定だった。棚ぼた式に出来た民主制で憲法に反対する政党も多く、20の内閣が出来ては潰れた。独裁者は民主主義の弱みにつけいり悪用して、合法的に政権を手に入れた」。コラムの主な内容でした。
“世界の無極化、危機で露呈”とは、別の記事のテーマです。「新型コロナのパンデミックを巡り、地政学的な勝者に値する国は存在しない。米国や中国でも欧州諸国でもない。従って、我々は無極化(覇権国が存在しない)世界にいる。この状況はしばらく続く可能性がある。こうした結果として生じる指導力の欠如は平時にはあまり意識しないが、危機が到来すると顕在化する」。このような事が記されています。
「この暫定的な状態は、支配的な権力が存在しないが故に不安に満ちている。そこで思い浮かぶのが、恐ろしい第二次世界大戦を招くことになった1930年代だ。パックス・ブリタニカ(大英帝国支配下で平和な時代)の終焉に近づく一方で、米国もソ連もまだ英国の地位を奪うほどの存在ではなかった時代だ。第二次世界大戦後、冷戦時代が到来するが、今回の感染危機は冷戦に近いというよりも1930年に近いとみた方がいい」。主旨はこのようなものでした。
二つの記事の共通は、今回の新型コロナ禍は、ドイツも激動の渦中にあった100年程前を思い起こさせるとのことです。その1930年代です。前年29年のニューヨーク株価の大暴落に端を発し、世界は大恐慌に巻き込まれます。永遠の繁栄が続くと思っていた米国も資本主義の幻滅を突き付けられ、各国で労働者・ファシズム・社会主義台頭の嵐も吹き荒れます。
独裁者といわれるヒトラーの評価は、今でも分かれるところです。世界恐慌が始まると、米国資本に依存していたドイツ経済は直ちに影響を受けます。600万人を超える失業者が街にあふれました。経済的困窮で絶望した大衆を、独裁者は巧みな演説と宣伝で味方につけます。雇用を生み出すことだけでなく、ドイツを強く大きくすると約束し、ナショナリズムに訴えました。そしてヒトラーは首相と大統領を兼ねた、総統という国家元首となります。
二つ目の記事にあった当時世界も無秩序になりかけた時代だからこそ、ドイツは国内に強いリーダーを求め、最後の希望をヒトラーに託したのです。その記事の一部をもう一度引用します。「この状況はしばらく続く可能性がある。こうした結果として生じる指導力の欠如は平時にはあまり意識しないが、危機が到来すると顕在化する」。ここでも、現在の新型コロナと過去のヒトラーがどこか繋がっていることを感じます。 ~次回に続く~
【ドイツ連邦共和国国旗の意味・由来 】
黒、赤、黄(金)の三色は、19世紀始めナポレオン軍との戦いに参戦した学生義勇軍の軍服の色を取り入れたもので、黒いマント、赤い肩章、金ボタンに由来し、自由と統一の象徴とされている。また同時に、黒・赤・黄の3色がそれぞれ勤勉・情熱・名誉を表わすとも言われている。1919年に制定されたヴァイマル憲法によってこの三色がドイツ国家を象徴する色とされ、ドイツ連邦共和国の憲法にあたる基本法(22条)で現在の色の配列が規定された。
このヴァイマル共和国は1920年代には史上最も民主的といわれながら、政治と経済の混乱からみるみる全体主義国家に変わり14年間で滅びます。その国家を、ヒトラーは自ら第三帝国と称しました。そしてドイツは1939年ポーランド侵攻、それによって第二次世界大戦が始まり、1945年ソ連軍がベルリンに突入しヒトラーは自殺し、その後無条件降伏を受理して第三帝国も崩壊します。
「現在の世界は、二十世紀前半と似てきた。ここ数年、保護主義が広がり貿易戦争が続く。各地でポピュリズムに訴える指導者が現れ、自由や民主主義を脅かしている。突然のコロナ危機は大恐慌から戦争へと突き進んだ過去さえ思い起こさせる。独裁者ヒトラーに支配され、戦争の災禍を招いた過去がすぐ浮かぶ」。“ヴァイマルの教訓とは”のテーマで書かれた、最近の新聞のコラムです。
「ポピュリズムや民主主義が勢いづく、これは1920年代と似たヴァイマル状況ではないかと心配する。当時どこにスキがあったのか。民主制の弱みを突かれたのではないか。敗因から対策も見てくる。とにかく政治が不安定だった。棚ぼた式に出来た民主制で憲法に反対する政党も多く、20の内閣が出来ては潰れた。独裁者は民主主義の弱みにつけいり悪用して、合法的に政権を手に入れた」。コラムの主な内容でした。
“世界の無極化、危機で露呈”とは、別の記事のテーマです。「新型コロナのパンデミックを巡り、地政学的な勝者に値する国は存在しない。米国や中国でも欧州諸国でもない。従って、我々は無極化(覇権国が存在しない)世界にいる。この状況はしばらく続く可能性がある。こうした結果として生じる指導力の欠如は平時にはあまり意識しないが、危機が到来すると顕在化する」。このような事が記されています。
「この暫定的な状態は、支配的な権力が存在しないが故に不安に満ちている。そこで思い浮かぶのが、恐ろしい第二次世界大戦を招くことになった1930年代だ。パックス・ブリタニカ(大英帝国支配下で平和な時代)の終焉に近づく一方で、米国もソ連もまだ英国の地位を奪うほどの存在ではなかった時代だ。第二次世界大戦後、冷戦時代が到来するが、今回の感染危機は冷戦に近いというよりも1930年に近いとみた方がいい」。主旨はこのようなものでした。
二つの記事の共通は、今回の新型コロナ禍は、ドイツも激動の渦中にあった100年程前を思い起こさせるとのことです。その1930年代です。前年29年のニューヨーク株価の大暴落に端を発し、世界は大恐慌に巻き込まれます。永遠の繁栄が続くと思っていた米国も資本主義の幻滅を突き付けられ、各国で労働者・ファシズム・社会主義台頭の嵐も吹き荒れます。
独裁者といわれるヒトラーの評価は、今でも分かれるところです。世界恐慌が始まると、米国資本に依存していたドイツ経済は直ちに影響を受けます。600万人を超える失業者が街にあふれました。経済的困窮で絶望した大衆を、独裁者は巧みな演説と宣伝で味方につけます。雇用を生み出すことだけでなく、ドイツを強く大きくすると約束し、ナショナリズムに訴えました。そしてヒトラーは首相と大統領を兼ねた、総統という国家元首となります。
二つ目の記事にあった当時世界も無秩序になりかけた時代だからこそ、ドイツは国内に強いリーダーを求め、最後の希望をヒトラーに託したのです。その記事の一部をもう一度引用します。「この状況はしばらく続く可能性がある。こうした結果として生じる指導力の欠如は平時にはあまり意識しないが、危機が到来すると顕在化する」。ここでも、現在の新型コロナと過去のヒトラーがどこか繋がっていることを感じます。 ~次回に続く~
【ドイツ連邦共和国国旗の意味・由来 】
黒、赤、黄(金)の三色は、19世紀始めナポレオン軍との戦いに参戦した学生義勇軍の軍服の色を取り入れたもので、黒いマント、赤い肩章、金ボタンに由来し、自由と統一の象徴とされている。また同時に、黒・赤・黄の3色がそれぞれ勤勉・情熱・名誉を表わすとも言われている。1919年に制定されたヴァイマル憲法によってこの三色がドイツ国家を象徴する色とされ、ドイツ連邦共和国の憲法にあたる基本法(22条)で現在の色の配列が規定された。