梶哲日記

鉄鋼流通業会長の日々

介護職研修と介護崩壊!?(その5)

2024年04月20日 07時33分52秒 | Weblog
『介護異次元崩壊』と題し2月17日発刊の週刊東洋経済に特集が組まれていました。「こんな介護保険に誰がした!」「自宅で最期まで、はもう叶わない」「ヘルパーが消える、サービスが受けられなくなる日」。当たり前のように使える介護サービスの危機、サブタイトルの言葉が並びます。

特集の導入として、84歳のヘルパーが支える介護訪問を紹介しています。自分より年下の、69歳の精神疾患のためにグループホームで暮らす男性に、週一回の買い物や散歩のサポートをしているルポです。ヘルパーの高齢化は全国的に広がっていて、介護労働実態調査によると全国の訪問ヘルパーの4人に1人は65歳以上。この事業所も職員不足が改善されなければ閉鎖に追い込まれる。との、内容です。

本編は4つから成り立っています。Part1:介護職不足の衝撃。Part2:介護崩壊の果て。Part3:踊る介護企業。Part4:介護難民にならないために!。介護分野に精通している専門家の見解やフリーランスのルポライターの取材も多く載せ、本誌がまとめています。各Partの筆者は複数なのでまとめきれず、扱っているテーマや問題点を、以下追ってみます。

Part1:介護職不足の衝撃
特養の夜勤密着ルポ、2時間に1回寝返りを打たせるトイレ介助とおむつ交換に追われる、利用者22人に対し介護職員は1人、綱渡り状態の過酷な夜勤体制。人手不足なのに報酬減(厚労省の今年度介護報酬引き下げ)の試練、存続の危機に直面する訪問介護、在宅生活を支える「最後の砦」が今崩壊の寸前。離職超過となった介護職、なぜ辞める人が多いのか、低賃金にあえぐ介護職の実態に迫る。あなたの保険料・利用料に直結!介護保険の将来はどうなるのか、縮小は避けられない?。

Part2:介護崩壊の果て
部屋に閉じ込める薬で動けないようにする、機能不全の組織体制が生む過去最多の高齢者虐待、複数の職員が関わっていた虐待事件の背景を追った。安易に入院させられるケースも、急増する単身高齢者は介護保険だけでは救えない、制度の整備は遅れ人材も不足、単身高齢者が行き場を失くしている。死に至るケースもあるが実態は闇の中、病院で多発する認知症の人への身体拘束、介護施設で対応できない認知症患者が精神科病院に多く入院している。パワハラ、セクハラ、カスハラ、表に出ることのない介護職員達の苦悩、現場での生々しい体験を語る、介護職員覆面ホンネ座談会。

Part3:踊る介護企業
改革の手法はコンサル仕込み、大規模化と収益増を図る投資ファンド、ファンド主導で介護業界の経営改革が進む。介護業界では高い利益率、「看取りビジネス」急拡大の危うさ、社会に定着しつつあるホスピスだが、儲けすぎ批判も出ている。人手不足につけ込んで荒稼ぎ、介護保険料が人材紹介会社に流れる、介護人材紹介市場の急膨張で悪質な会社も登場。

Part4:介護難民にならないために!
主治医やケアマネージャー(介護支援専門員)選びに要注意、介護認定の思わぬ“落とし穴”、親の意向や家族の情報共有など申請のポイント。親子で冷静に検討を、終の住処選びでのミスマッチを防ぐ、じっくり検討しないで施設に入ると後悔することも。

Part3:踊る介護企業の中の、投資ファンドにつては少し説明が必要かもしれません(以下も雑誌からの引用)。労働集約型で合理化が難しいとされてきた介護業界。そこにICT(欄外※注釈)を取り入れ、構造改革に取り組む企業が現れている。主導するのは株主である投資ファンド。そして投資ファンドによるイグジット(買収して数年後の出口)として、介護業界の再編が起きている。つまりファンドは、既存の介護企業を投資対象とし、改革・活用して後に株式を売却して大きなリターンを狙う、との意味です。

業界最大手のニチイホールディングスは2020年にMBO(経営陣による買収)で非上場化。欧米系ファンド、ベインキャピタルの子会社となる。ベインの下で3年構造改革の結果、営業利益は2倍に。目指したのは介護スタッフが介護に専念できる体制。これまで拠点別に人員採用していた習慣を改め本社に一本化。書類など紙文化も廃し独自のアプリで業務効率化を図った。23年11月、ニチイの株式はベインから日本生命保険に譲渡されることが決まった。

介護業界は、医師会看護協会のような影響力のある団体がなく、発言力が弱い。横で繋がり大きな固まりをつくっていかなければならない時に、業界最大手が異業種の傘下に入ってしまった。ある大手の幹部からは、ニチイの判断は残念との声も聞かれます。雑誌は、ファンドの傘下に入るこのようなビジネスの是非はともかく、踊る介護と称して介護異次元崩壊の一面としてとり上げています。

次回は、では介護崩壊にならない対応策がどのようなものが考えられるのか、世の中の動きを追ってみたいと思います。    ~次回に続く~ 

※注釈 ~介護におけるICT~
ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)とは、ネットワークを活用して情報を共有すること。具体的には「介護ソフト」を中心に、「タブレット端末」「スマートフォン」「インカム」などのICT機器を導入。今まで手書き、手入力していた各種記録が電子化・自動化でき業務が効率化される。情報がデジタル管理されることで、情報共有やデータ連携も促進され、利用者に対するケアの質を向上できることもメリット。政府はICTの導入などを通じた「生産性の向上」を重視しており、補助金や介護報酬の加算を通じてテコ入れを図ろうとしている。


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