その矢沢さんを尋ね、私と弟と二人で中米グアテマラの首都グアテマラシティーに、5泊程滞在しました。その間氏は私達のアテンドに多くの時間を割いてくれて、時間が経つにつれ、すっかり打ち解け、色々な話をしてくました。
最初にニューヨークに渡って現地採用で三菱商事に勤めたこと。アメリカ娘と恋をするも失恋したこと。商事での仕事でグアテマラとの関係が出来たこと。そのグアテマラの魅力に取り付かれて住みつき、そしてスペイン人の奥さんと結婚し三人の息子が出来たこと。
現在の中米がスペインの植民地時代に、その総督府が200年間あった、古都アンティグアに小旅行をしました。日本でいえば京都です。その時代に建てられた多数の教会の遺構で知られていて、世界遺産に登録されている美しい街でした。
自宅に招かれ奥様の手料理をご馳走になりました。とても美人で気さくな奥様でした。自宅の敷地はとても広く、別棟で立派な迎賓館風の建物があり、ビジネスで使うことも多いとのこと、氏のお持て成しの心が伝わりました。
グアテマラは、まだまだ貧富の差があり、治安もけっして良くありませんでした。街中のガードマンは全て銃を携帯しています。氏もピストルのライセンスを取得して、外出時は常に持ち歩いていました。
氏の本質はやはり武道家です。顔付きは穏やかですが、いつも冷静にものを捉えている目でした。日本で昔化粧品のCMで有名になった、野性的な俳優チャールズ・ブロンソンに似ていると、いつも弟は言っていました。
今回の事件は本当に悲しい出来事です。複数の強盗に襲われ、車の中で逃げ場も無かったのでしょう。ピストルを持ってたであろう氏は、当然抵抗をしたのでしょう。
しかし同乗者が助かっているのですから、お金を捨てれば命は助かったかもしれません。故人には酷な話しとなりますが、その強さが逆に弱さになったのかもしれません。グアテマラの矢沢文夫さんに、心よりご冥福を祈ります。