梶哲日記

鉄鋼流通業会長の日々

物流クライシス(その3)

2023年12月30日 05時06分41秒 | Weblog
改めて「2024年問題」とは何かです。『働き方改革関連法が施行され、トラック運転手の時間外労働に年間960時間の上限が課せられる。人手不足が慢性化している物流各社が十分な運転手を確保できず、安定的な長距離輸送が困難になるとの懸念があり、「2024年問題」と呼ばれる。同法が2019年に施行された際にトラック運送業への適用が特例で猶予されていたが、24年3月末で終了する』。このような概要です。

この問題に私は関心を持ち、二ヶ月前から一般紙の切抜き記事を集めてきました。前々回も書きましたが、わが社鉄鋼流通加工業にとって物流対策は重要課題であり、弟の運送会社にとっても、残業時間改善や運転手不足は死活問題です。集めた記事などから、ドライバー不足は運送会社に限らず、他業種へ波及してる実態を見てみます。

路線バスのドライバー不足です。地域の公共性を担う路線バスの減便や廃止が全国に拡大。公営バスを除いた全国の民間路線バス運行業者127社を対象に調査した結果、運行ダイヤの改定などにより、約8割で23年中に一路線以上の減便・廃止を実施することが判明。24年に予定・検討中の事業者は更に増える予測です。

減便や廃止となった理由として、ほぼ全ての事業所で「運転手不足」があげられた。これまで都市間高速バス路線などを廃止して維持してきたものの、運転手の高齢化や流出により対応が限界に。沿線の人口減による不採算化を理由としたケースもみられたが、ドライバーの時間外労働に上限が課される「2024問題」に対応するためも、現行のダイヤでは人繰りが不可能との結果とみなされます。

現在バス運転手は全国で11万1千人。日本バス協会の試算では、バス運転手は減少し続け、2030年には9万3千人となる見通し。不足数は22時点でも7千人とされるが、30年には実に3万6千人まで増えると見込まれます。

タクシードライバー不足です。全国のタクシー会社で働く運転手の数は新型コロナの影響や高齢化による離職が相次ぎ、今年3月末の時点で23万人余りとコロナ禍前の4年前からおよそ20%、約6万人減少したことが業界団体の調査でわかる(個人タクシー除く)。この調査は、全国の5000社余りが加盟する「全国ハイヤー・タクシー連合会」が行いました。

厚生労働省によるとタクシー会社で働く運転手の平均年齢は去年時点で58.3歳。新型コロナの感染拡大で一時、利用客が大幅に減って収入が減少したことや車内での感染への懸念から運転手が離職するケースが相次ぎ、タクシードライバーの高齢化に歯止めがかかっていません。

タクシーを巡っては、新型コロナの5類への移行による外出機会の増加や訪日外国人旅行者数の回復などから利用者の需要が急増して、稼働できるタクシーが圧倒的に足りない影響が広がっている。また高齢者などからはタクシー会社に連絡をしても車両が空いていないと言われ、病院への通院などに支障が出ていて社会問題との声も聞かれます。

一方タクシードライバーには明るい話題もあります。「ライドシェア来春限定解禁」「2種免許試験20外国語OK」「外国人採用タクシー先取り」、新聞紙面にはこのようなタイトルも並びます。以下、それぞれの主旨です。

 一般ドライバーが有償で顧客を送迎するライドシェアが2024年4月に条件付きで利用できるようになります。タクシー会社が運行を管理し、車両が足りてない地域や時間帯に絞って限定解禁されます。
 2種免許(バスやタクシーなどお客を運ぶ運転に必要)について、警視庁は外国語での試験を可能にすることを決めました。これまでは日本語でしか受験できずに外国人は合格が難しかったのを改善します。
 外国語受験に先駆けて外国人運転手の雇用・育成を進めるタクシー会社(日の丸交通)もある。同社は東京五輪開催を控え外国人の採用を強化、2種免許取得を支援する研修も実施しこの期間日給も払われます。

人手不足は、宅配業界で新たな取り組みの切っ掛けとなりました。ヤマト運輸はメール便と小型薄型荷物(ポストサイズの小荷物)の配達を、日本郵便に全面委託。ヤマト運輸は集荷たけして日本郵便が届けます。自宅の宅配便に特化するなど事業の選択と集中を進めるためです。

さて、私の身近でドライバー不足を解消しようとしている起業を次回紹介して、このテーマを終わりにします。    ~次回に続く~

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物流クライシス(その2)

2023年12月23日 03時26分22秒 | Weblog
トラック運転手が不足する「2024年問題」は産業資材の物流現場にも変革を迫ります。産業資材のメーカーは納入期間の柔軟性など、運転手の負担軽減に動き出しました。膨らむコストを誰が担うのか、課題は山積しています。業界の新聞や一般の新聞がこの問題を取り挙げていて、その紙面から鉄鋼メーカーなどの動きを見てみます。

日本製鉄はビルの建設などに使うH形鋼について、納入先の建材加工会社と納期の見直しに関する交渉を始めました。これまでは受注から納品まで最短で2.5日程度だったものを、そのリードタイムを7日に要請。日本製鉄は同様の交渉を鋼材全般に広げています。鉄鋼メーカーが短納期に応じていたのは、加工会社の意向に配慮していたためです。

加工会社は必要最低限のH形鋼をその都度仕入れれば、余分な在庫をストックせずにすむ。メーカーはこまめに製品を運ばなければならず、そのしわ寄せは運送会社に及んでいました。納期が延びれば、運送会社はこれまでより運転手の余裕に応じて配車するなど運送スケジュールを効率化しやすくなります。

日本鉄鋼連盟の担当者らは、7月下旬から自動車や電機や建設機械などの訪問を始めました。納入時間の柔軟化など、物流の効率化に向けた協力を求めています。年末までに30超えの団体を回る予定。工場などに収める鋼材は納入時間が分単位で決まっているケースが多く、運転手は納品に遅れないようあらかじめ工場付近で待機。こうした待ち時間が運転手の拘束時間を長くしていました。朝一番指定を午前中までとすれば、待ち時間は減らせる。連盟の担当者は、訪問先の業界から前向きに対処するとの返答が得られたといいます。

運送体制の見直しに向け、インフラを整える動きもあります。東京製鉄は鋼材の一時保管ができる中継拠点を全国で増やしています。現在の拠点は38カ所。22年以降で14カ所新設しました。運転手の日常的な時間
外労働を考慮すると、日帰りの陸上輸送では300キロが限界とされています。東京製鉄は全国に4つ製鉄所があり、より多くの中継地点を経由すれば、運転手一人あたりの超過労働時間を抑えられます。

日本製鉄も需要家や商社と連携し、製鉄所の出荷から納品までの配送状態や運転手の配置などを一元管理できる基盤を24年春までに導入。物流の非効率を即座に把握し対処できる体制を整えます。

わが社はこの二つの鉄鋼メーカーから、過去多くの鋼材を提供してもらいました。メーカーが物流に介在してくるこのような対策は前代未聞です。「2022年問題」の危機感が伝わります。産業資材の業界で物流の見直しが進むのは、運転手の高齢化も大きいとされます。鋼材を運ぶ運転手も例外ではありません。

東京都トラック協会が22年に実施したアンケートによると、鋼材輸送を手掛ける運転手の平均年齢は50.9歳。19年度の前回調査の48.6歳から上昇したとあります。鋼材を運ぶトレーラーの運転には特殊免許が必要なうえ、荷台の鋼材を雨風から守るのに重いシートで覆うなど、体力仕事も多くあります。若い運転手は、鋼材など重くてかさばる産業資材を運ぶ業務を避ける傾向にあります。

東京製鉄は50社程度の運送業者と個別に協議し、10月までに運賃の大幅引き上げを受け入れました。引き上げ合意は5年振り、運転手の賃上げや、輸送時間を短縮するために使う高速道路の料金などを加味されているとされます。しかしこれは、いずれメーカーの製品価格に上乗せされることを忘れてはなりますせん。

そこには鉄鋼の川上と川下の力関係があります。鉄鋼メーカーは原材料の高騰や諸経費増を、需給のバランスに左右はされるものの、ほぼ一方的に製品価格に転嫁してきました。しかし我々加工流通業は、しかたなくその仕入れ価格を受け入れたとしても、販売先のユーザーに転嫁できる保証はありません。我々中間流通は自助努力しかないのです。

また運送会社自体の課題も見逃せません。運賃を事前に大幅に上げてもらっても、若手の運転手確保は容易ではありません。24年4月からの改正労働基準法で、ドライバーの時間外労働時間の条件に規制がかけられることはおおいなる前進ですが、運送会社同士のドライバー奪い合いになること必定です。運送会社に限らず、ドライバー不足は他へ波及し、その予兆が表面化しています。   ~次回に続く~

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物流クライシス(その1)

2023年12月16日 01時02分24秒 | Weblog
クライシスとは危機のことです。2024年4月からトラック運転手の時間外労働が年960時間までに制限されます。人手不足に加え労働時間が短くなることで、物流が停滞する「2024年問題」が迫ります。経済の血液とされる物流を止めない取り組みは、待ったなしの段階に入りました。そのような、物流クライシスについて書いてみたいと思います。

鉄鋼流通加工業の業種・業態は、物流を抜きにして語れません。仕入れた物を引き取りに行くとか、販売したものを配達するとか、運送手配はわが社の日常業務です。鉄鋼メーカーから仕入れた鋼材はメーカー傘下の物流会社がわが社に持ち込んでくれますし、販売した物でも販売先がわが社に引き取りに来てくれることもあります。しかし、どこの手配かに関わらずトラックによる運送は業界にとっても生命線です。

私の弟が社長として経営する会社は運送会社です。元々、梶哲商店の運輸部門が独立して、新たに運送会社を興した経緯があります。その総合トラックは今日では鋼材以外の色々な荷物を運んでいますが、そこから派生したメタル便はその名の通り鋼材の小口混載の会社です。他の一般貨物運送会社と同じく、慢性的な低運賃の改善や運転手不足への取り組みは長年の懸案として取り組んできました。

そこに「2024年問題」が、わが社にも総合トラックにもメタル便にももれなくのしかかってきます。以前より、運送業界は時間外労働が異常に多く、大きな課題でした。例えば、時間指定ロス(余裕をもって早く着く)や待ち時間(先着に左右される順番待ち)によるムダな待機が時間外労働賃金に反映されずにきました。そこに待ったなしのメスが入るのです。日経新聞は今年9月『物流クライシス』と題して特集を組みました。以下、第一回目のその抜粋です。
 
“トヨタは値上げ”。トヨタは物流会社に支払う料金を上げる方針を打ち出した。1次取引先からトヨタへ部品を運ぶ20~30社が対象。24年4月から残業時間が短くなると運転手は手取りが減ってしまう。トヨタは料金を引き上げて運転手の年収を維持し、部品輸送の担い手の離職を防ぐ。運び方も変えた。料金引き上げに先駆けて、複数の部品メーカーを1台のトラックで回って部品を引き取る方式を一部地域で導入した。部品メーカーからトヨタに納入していた従来の「お届け物流」より必要な運転手が12%少なくてすむようになった。
日本の多くの企業にとって、物流はコスト削減の対象でしかなかった。1990年の通称「物流二法」の施行に伴う規制緩和で運送業者が増加。荷主側の力が大きくなるとその傾向が強まった。日本ロジスティクスシステム協会によると、全業種の売上高に占める物流費比率は新型コロナウイルス禍前の2019年で4.9%。1995年と比べ1ポイント以上低い。日本のものづくりの強みである「ジャストインタイム」は、無駄な在庫を持たないために、多頻度少量の配送が欠かせない。その影響が物流の現場に及んでいた。
そうした状況が人手不足で一気に変わる。
NX総合研究所(日本通運の子会社の物流に関するシンクタンク)によると25年度で14万人の運転手が足りず、13%の物が運べなくなる。物流の停滞による需要減で、30年には国内総生産が10兆円押し下げられるとの試算もある。企業にとってトラック確保が事業継続の上で最優先課題となる。
“積載率低く4割”。物の値段の上昇は避けられない。物流各社は値上げ交渉を進めており、運賃相場は1~2割上がるとの見方が強い。就労人口が減る日本では、24年問題は賃金改善だけでは解決しない。4割程度と低い積載率を向上させるなど、新たな対策が求められる。輸送を鉄道や船舶に切り替える「モーダルシフト」も重要だ。
政府は10月、24年問題に対応するため「物流革新緊急パッケージ」を打ち出した。共同輸送の促進や、自動フォークリフトの導入などで運転手不足を補う。日本ではどこから仕入れるかというサプライチェーン(供給網)戦略はあっても、誰がどう運ぶかという物流戦略はメーカーにも小売りにもほとんどなかった。運転手を増やす取り組みもなされてこなかった。官民を挙げてデフレ時代の物流システムを見直す時だ。

要約がちょっと長くなりましたが、単に一企業だけの物流戦略ではなく、「2024年問題」は国をあげて抜本的に取り組んでいかざるを得ない危機的な状況が窺えます。トヨタのような日本を代表する大企業が、自ら支払い運賃を上げる対処は前代未聞です。荷主による運送会社への運賃還元は、言い過ぎかもしれませんが、物流に関わる運転手の争奪戦に他なりません。

次回以降、産業資材メーカーでの新たな対応、運送会社に限らずドライバー不足が他へ波及している事例、私の身近でドライバー不足を解消しようとしている起業なども紹介したいと思います。  ~次回に続く~
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山仲間の集い(その3)

2023年12月08日 04時43分12秒 | Weblog
今回は我々の同期の代についてふれて、このテーマを終わりにします。このテーマ(その1)で同期は15名と書きましたが、残念ながら何十年も会っていない同期が二人いました。今回の秋の日帰りプランの後、その一人と久しぶりに再会することができました。その彼の自宅がBC地から近かったこともあり、また前々から誘っていたことも奏効しました。


その彼は長年の持病で、定年退職をしてからは自宅療養に専念していました。現役の頃の仕事柄、遅くまで食べて飲む機会が多かったとのことで、結局糖尿病になってしまいました。三十代の頃、彼と私互いの奥さんも一緒で会っていました。その後、精神的にも不安定だった時期があり、同期会に誘ってはいましたが顔を出さなくなってしまいました。

それでも私は諦めず、彼には連絡を入れていました。それには訳がありました。彼の前にやはり何十年も会ってない同期がいましたが、手紙を書いたりメールを送ったりした結果、二年前に同期会に出てきてくれました。その彼も過去胃癌で大手術をして、回復はしたものの、それを界に同期から遠ざかってしまっていたのです。

人間は弱っている時、そんな自分を見せたくないとの気持ちは誰しもあります。気持ちが落ち込んでる時期は、たとえ大学の四年間苦楽を共にした仲間でも、会いたくない気持ちは分かります。しかしその気後れが再会のハードルを高くしてしまうこともあります。途中で諦めない、継続は力です。食らいついたら離さない「マムシの梶」と、最近言われるようになってしまいました。

実は同期の一人が、6年前癌で亡くなっています。集まりには積極的に参加していた同期の一人です。我々の歳になれば、二人に一人は癌になるとの時代ですので、癌でいつ亡くなってもおかしくありません。しかし仲間が欠けることは、ぽっこりと穴があいてしまったようで、とてもいたたまれないものがあります。「今出来ることは先送りにしない、今やる!」。私の心境もここ数年で変わりました。

今回の日帰りプランの後、久しぶりに再会することができた彼の話しに戻します。各パーティが分散して行動し、午後二時半に集中したBCは秋川渓谷の下流の河原でした。武蔵五日市駅から徒歩10分くらいの所です。そこに約100人が集結。彼の自宅は拝島駅の近くなので、30分かければBCに来られますので誘ったところ、何十年も会っていない先輩・後輩に行き成り再会するのは敷居が高いといわれ、我々同期6人がBCが終わった後、拝島まで出向くことしました。

BC地では、各自受付を済ませ、若干の会費を払うと、缶ビールと乾き物のつまみを手渡されます。先ずはパーティで無事終了を祝って乾杯し、その後同期で集まったり会いたい先輩・後輩の所に行って話をしたりするのが恒例です。一時間半ほど歓談してから、皆の前で各リーダーがそのパーティの行動報告をして解散となります。それからは場所を替え、各代同期同士でかたまり、また分散していくのも恒例となっています。

武蔵五日市駅を出る直前に彼に連絡して、拝島駅に着く時間を知らせます。さていよいよ、拝島駅改札口で何十年ぶりの再会です。ちょっと見間違えましたが、直ぐに彼と認識します。予約してあった駅の近くの居酒屋に直行します。果たして話が弾むのか、会うまで心配でした。あにはからんや二時間半余り、過去の事や近況を、彼の独壇場で話してくれました。我々との再会を心から喜んでくれたのだと思います。

12月に錦糸町で行われる同期の忘年会に誘ったのですが、糖尿病の治療中でもあり、遠出はまだ無理とのことでした。機会があれば、是非また会いたいと思っています。今回のように彼の自宅近くに我々が出向けばチャンスはあります。実は一年前、同期二人で奥多摩の山に登った帰り、彼と会う約束をしていたのですが、前日ドタキャンとなりました。奥さんからコロナ感染の心配もあり、止められたとのことでした。ようやく長年の念願が叶いました。

何十年も会っていない同期が、あと一人(住所が不定)となりました。拝島で再会した彼が、その彼とはなんとか連絡が取れるとのことです。互いに元気なうちに、山仲間との邂逅を果たしたいと願っています。
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山仲間の集い(その2)

2023年12月02日 06時41分14秒 | Weblog
春と秋の日帰りプランがどうして天気に恵まれているかの理由は、雨が降る時は実施しないからです。開催3日前の午後5時の天気予報によって、親睦委員会が判断して、中止の場合は各パーティのリーダーを通して全員に連絡します。当日中止による順延もしませんので、一旦流れるとその時期のプランは実行されません。

悪天候の時に行わないことも、安全対策の一環ですが、更に万全を期すため種々対策が講じられます。特に登山プラン参加者は、申込にあたっては「健康状態調査」の報告をし、65歳以上の人は「直近の登山歴」の申告をしなくてはなりません。参加にあたり改めて「自己責任」を自覚するのが狙いで、自分の体力レベルを冷静かつ客観的に判断し、難易度によってコースを選択することが促されています。

実は去年事故がありました。それも我々の代がリーダーとサブリーダーとなったパーティで起こりました。参加されていた80歳の方が、突然山行中倒れ、ドクターヘリを要請し、地元の病院に搬送されました。結局、一旦は意識が戻ったものの亡くなられました。医師の診断は、重症度の心筋梗塞によるとのことでした。リーダーとサブリーダーは立場上、事前に防げなかったか、事態発生直後対処は適切であったか、自責の念にかられたのは言うまでもありません。

その後親睦委員会でも、色々な検証がなされました。経過を追う限り、事前準備や当日の行動そして事態発生後の対処とも極めて的確であった。むしろ迅速的確な措置により、一旦は一命をとりとめることが出来たのではないか。心筋梗塞の重症度から推し量ると、山中以外でも手遅れとなった可能性が高い。これらの見解にまとまりました。平均年齢70歳以上の100名規模の集団が山行した場合には、一定の確率で数々の事態が生じます。従って、あくまでも自己責任で山仲間との楽しい山行に加わる、というのが今後とも基本的な方針となりました。

さて我がパーティの当日の様子です。午前10時武蔵五日市駅改札口集合で、14名が集まりました。リーダーとサブリーダーは私より一つ年上の代で、パーティ内で一番年上が84歳(女性)、一番年下が71歳(私)でした。私は股関節の古傷の後遺症で長らく登山から遠ざかり、この日帰りプランにしても参加して5~6年しか経っていませんので、今回も初めてお会いする先輩もいます。しかし半日一緒に行動することで、すっかり親しくなります。一つの目的を達成し、BC地に行く頃にはパーティは結束して連帯感すらうまれます。

武蔵五日市駅から地元の路線バスに乗って、当日散策する秋川渓谷のスタート地点に着きます。朝方曇っていた空も回復して、散策には絶好の天気となりました。ここが東京都かと思う程、時代がタイムスリップしたようなひっそりとした山里の中を、秋川渓谷の清らかな水が流れます。車一台がやっと通れる車道も歩きますが、点在する民家を見ても、けっして楽ではない日頃の暮らしがしのばれます。

この平地プランの良さは、都度気が合った人と話をしながら歩けることです。今回も、過去の部活の話題やさらに身の上話など、色々話ができて親しくなった先輩もいます。現役時代は、自分を中心に三つ上までの先輩と三つ下までの後輩の範囲の付き合いですが、このプランを通しその範囲が広がるようになります。

大学の体育会では、卒業しても厳格な力関係は続くようです。特に競技スポーツでは、現役の頃記録を持っているとか大会で優勝実績があるような人は、いつまでたっても一目置かれます。我々の部も現役の時は、上下関係は明確でした。それは山に入ると遭難する危険があるので、上級生:リーダーの判断・指示は絶対だったからです。

その上下関係は卒業しても引きずられますが、年を重ね薄らいてきているようにも思われます。前回書きました。「現在リーダーとサブリーダーを担っているのは、70歳前半から60歳前半です。年々この役は下の代にバトンが渡され、リタイアした代は、次からメンバーとして参加します。年下のリーダーだとしても、年上のメンバーであっても服従しなくてはなりません」。さながら「老いては子に従え」の心境にならざるを得ません。 

大学時代からやっているスポーツでも、ハードなものは幾ら体力があってもある年齢で限界がきます。山登りは普段から健康管理をしていれば、年齢に関係なくOB・OGと一緒にいつまでも楽しめるスポーツだと思っています。素晴らしい山仲間がいることに、感謝しています。   ~次回に続く~ 








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