梶哲日記

鉄鋼流通業会長の日々

何事も覚悟する(その2)

2019年12月28日 06時37分36秒 | Weblog
「武士たる者は、行く、止まる、座る、臥す等の起居動作全てに覚悟をもち、油断のないようにすべきである」「外出している時には、家の中のことを忘れるべきである」。これは松下村塾で吉田松陰が、門下生に口述で諭したものをまとめた『武教全書講録』の中に出てきます。『武教全書講録』は、『武教全書』を教科書としています。

この『武教全書』を著したのが、山鹿素行(やまがそこう)という人です。素行は江戸時代前期の儒学者・軍学者でした(1622~1685)。9歳で林羅山に入門して朱子学を学び、15歳の時には小幡景憲、北条氏長の下で甲州流軍学を学びました。21歳で、北条氏長の印可(熟達した弟子に与えられる許可)を受けた素行は、それらを基にしてやがて山鹿流兵法を生み出すに至ります。

山鹿流兵学の特徴は、単に戦術に重きを置いた軍学ではなく、戦乱の世が終わり天下泰平となった武家社会において、武士の生き様はどうあるべきかを探究し、武士道精神を示した点にありました。吉田松蔭は、素行が確立した山鹿流兵法を広めようとした学者です。

12月14日東京高輪の泉岳寺では、毎年恒例の“義士祭”が行なわれます。高輪警察署によれば、今年この日の人手は1万7千人を越えたとのことです。言うまでもなくこの祭は、元禄年間の同日、赤穂浪士討ち入りにまつわるものです。

赤穂藩主の浅野内匠頭長矩が江戸城松の廊下で、吉良上野介に刀傷に及び、即日切腹の刑を受ける。後に家臣の大石内蔵助らが討ち入りを果たし、主君の墓前(泉岳寺)に上野介の首級をささげる。主君の仇をとった赤穂浪士は、幕府の命により切腹となる。この忠臣蔵で大活躍したのは大石内蔵助ですが、内蔵助の師にあたる人が山鹿素行なのです。

その素行は45歳の時、官学である朱子学を否定した書を著し幕府の怒りをかい、播州赤穂藩に預けられることになります。浅野家は約10年に亘って素行を優遇し、兵学の教育に当たらせました。この時大いに影響を受けた一人が、内蔵助でした。

北条氏長の教えは山鹿素行へ、山鹿素行から大石内蔵助や吉田松陰へ、教えは伝承されます。北条氏長の自宅で、素行が赤穂配流の命を受けた時、師が「どんなことであってもよいので、言い残したいことがあれば書きなさい」と、硯箱を出します。

しかし素行は、「以前から外出する時は、家の事を忘れるだけの覚悟をしておりますので、今更言い残すことはありません」と、笑みを浮かべ応えたのです。冒頭松蔭の『武教全書講録』の中にあった言葉です。

素行は“常の勝敗は現在なり”との言葉も残しています。「勝敗を決するものは常日頃の中にある」との意味です。いざという時に備えて、どれだけエネルギーを溜め、能力を研ぎ澄ましておけるか。勝負や結果は明らかにそれ以前に決している、との解釈になります。

「あっ、パソコンが無い!」と動転してはいけないのです。一旦外に出てしまったら、家の中のことを一切忘れるくらいの、覚悟の大切さを説いているのです。山鹿素行が武士に伝えたかったのは、そのような日頃の覚悟だと思います。大石内蔵助も吉田松陰も、自分のことよりも大儀の大事さを悟り、命も賭す覚悟で全てに臨んでいたのです。

今回のテーマである「覚悟とは」の、私なりの解釈です。覚悟とは、嫌なものへ立ち向う勇気。覚悟とは、目先の自分を捨てる潔さ。覚悟とは、難問であっても好転する可能性。そのように捉えています。

年内はこれが最後の投稿となります。皆さま良いお年をお迎えください。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

何事も覚悟する(その1)

2019年12月21日 10時01分17秒 | Weblog
「あっ、パソコンが無い!」「会社に置いてきたのかも?」。会社から持ち帰った鞄の中に、入っていると思ったPCがありませんでした。しかしもう会社に戻る時間はありません。三泊四日で関西へ出掛ける為、荷物をチェックして自宅を出ようとした時です。どうするか1~2分ほど思案しましたが、仕方がないと諦めました。

前回と前々回でこのブログに書いたように、先週の木曜日、関西に出掛ける当日のことでした。その日の午前中は会社で仕事をしていました。会社で今私が仕事をしている部屋には、PCから共有のサーバーを使って、例えば書類をプリントアウトするコネクターがありません。会社を出る直前、コネクターがある部屋にPCを置き忘れたようです。

翌日の夜、わが社の社長と京都で落ち合うことは可能でした。社長とは数年前から、月1回週末に行なわれる京都の勉強会に一緒に参加していたからです。自宅から会社にいる社長に連絡を取ると、その部屋にPCがありました。「必要なら、これから何処か持っていってもいいですよ」、と言ってくれました。

しかしその日の夕方は、私は大阪で他の会に出席すべく、新幹線に乗る時間を決めていましたので、社長がPCを東京駅に持ってきてくれたとしても、その時間に間に合いません。社長には、私が連泊するホテルに翌日の夜に届けてくれれば助かると伝えると、ホテルのフロントに預けてくれるとのことでした。

移動する新幹線の車内で、毎週末(土曜日の朝)アップするブログを、PCを使って書こうと思っていました。仕方がなく、車中で手帳に粗筋を書き出しました。PCを使わないで文章を書くことは、文章の入れ替え等が簡単に出来ないので苦戦します。新幹線の中で、下書きは何とか終わりました。

翌日の金曜日の夜、私は大阪での忘年会に参加するだけですので、京都のホテルで日中の時間はあります。前の日にPCがあれば、新幹線でブログの目処をつけて、金曜日は他の仕事も出来ました。しかしPCが無いので、手で書いたブログの下書きを、夜PCが届くまでに文章をデジタル化しようと考えました。スマホを使って文字をお越し、そのデータをPCに貼り付けようと思っていました。

翌朝、ホテルに貸し出し用のPCはないかとひらめきました。不幸中の幸い、貸し出し用がありました。前日の悩みは一気に解消して、朝からPCを使ってブログを書くことが出来ました。

ここで、前回のブログの話に戻ります。前日大阪の会合が終わり食事会も済んで、夜遅く件のお店が(サイト予約した店に直に確認したら断わられた)どうも気になって、訪れたことをお伝えしました。実際に行ってそこで新たな事実を知ります。新幹線で書いた下書きはそれを想定していなかったので、内容が全く違ってしまいました。

つまり、PCを前の日に持参してブログを書き上げたとしても、無駄な仕事をしたことになります。PCを会社に忘れ、ホテルで借りたPCで最新の内容を書いたことが、結果オーライだったのです。自宅から出ようとした時、「パソコンが無い!」と一瞬頭が真っ白になりましたが、仕方がないと諦め、頭を切り替えて正解だったのです

何事も覚悟をすることは大事です。しかしそれは頭で分かっていても、中々出来ないことでもあります。悩んでも解決しないのなら諦めることも必要です。今回の結末をみると、先ずは覚悟を決めることが大切であると気付きました。  ~次回に続く~
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

落とし穴(その2)

2019年12月14日 06時20分27秒 | Weblog
前回、ネット上で京都の飲食店を予約し完了メールが届いたのに、後日確認の為電話を入れると満席と断られ、グルメ予約サイトを運営している会社(A社)に、どうなっているのか問い合わせしたところまで書きました。

このブログを書いているのは12月13日、仲間と忘年会をする当日です。結論から言いますと、関西在住の仲間に大阪のお店を急遽探してもらい、事なきをえています。

一週間前A社とメールでクレームのやり取りしている最中、念のためその店を検索していると、他の大手のサイト会社(B社)からも予約を受け付けていました。なんと、同日・同時間・同人数で、予約が可能でした。そのお店は二つのサイト会社にエントリーしていることになりますが、私が電話で問い合わせをした時、席は未だ空いていたのでは!? なにがどうなっているのか、色々な疑問が涌いてきました。

別の友人から、B社のサイトで予約をしてもらうと、完了メールが間違いなく届いたとのこと。再予約は取れましたがその店に行く気もなくなり、既成事実だけを残して、B社サイトはこちらからキャンセルしました。この事実もA社に伝えます。しかしA社が、その店に対して毅然とした姿勢を示した報告はありません。

この段階で理解出来たのは、多くのグルメサイト業者はシステムを飲食店に提供するものの、その管理はすべて店側がするとのことです。よほど悪質なお店は予約システムを廃止すのでしょうが、指導で改善がみられるのであれば、サイト会社も商売ですので、総花的にお店の数はキープしたいのではないかと推測できます。

実はその問題の店に、私一人で昨夜行ってきました。関西で12日から用事があり、その日も京都に泊まりました。大阪で夕方会合があり食事会も終わり、京都のホテルでチュエックインして、その店に入ったのは夜11時を過ぎていました。ホテルから歩いて数分の場所にあり、やはりその店が気になりました。

お店はお客さんで混んでいました。働いている人は、外人のパートさんが目立ちます。私は何も名乗らず、最低限の食べ物とお酒を注文しました。30分ほどで食べ終わり、お店の責任者を呼んでもらいました。出てきた方は、30歳半ばの店長でした。ここは支店で、本店は別にあり複数の店舗があるお店です。

店長に事の経過を訊ねたところ、ほぼ私の認識と同じでした。しかし私がお店の予約を確認した時店長は留守で、電話に出た人はどうも新たな予約が入ったと勘違いし、それで断った様子です。A社の営業は今回のことで確かに是正勧告に来たけれど、店に断わられて他サイトから予約が入ってしまう、私の不愉快さはあまり伝わっていませんでした。店長曰く最近手が回らないとのことで、終始店の不行き届きを詫びていました。

最近また、店側のドタキャンの自衛に関する記事が載っていました。経産省によると、無断キャンセルが飲食店にもたらす年間の被害総額は推定で2000億円にのぼるといわれ、航空券やホテルは座席や部屋を押さえた個人を特定出来るが、飲食店では困難。業界からはドタキャン時の賠償請求ルールを求める声があがるが、議論は進んでいない。そのような内容でした。前回も書きましたが、これは店側が被る落とし穴です。

今回の私のケースは稀でしょうが、利用者側にも起こりうる落とし穴です。実際にその店に行って分かりましたが、ネットの利便性を手玉にとった悪質なお店ではありませんでした。しかし、人手不足とかネット管理の緻密さを欠けば、利用者に不快な思いをさせてしまうことは否めません。

三つ目の落とし穴があるとすると、情報交換不足によるものです。お店で働いている人同士の情報交換の不足。お店とネット予約サイト会社との情報交換の不足。利便性の中には、必ず落とし穴があると思っています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

落とし穴(その1)

2019年12月07日 06時39分10秒 | Weblog
先日新聞に、「宴会無断キャッセルで賠償も」「飲食店、悪質客に対抗」との見出しの記事が載っていました。手軽な予約サイトにより無断キャンセルが増えている、スマホからのとりあえず予約が大きなトラブルを招きかねない、との内容です。

お店に女性から40人分のコース料理の予約が入り、店を貸し切るとの電話があっが、当日団体客は現れず、予約をした女性とも連絡が取れなかった。金曜日夜に17人分の1万3千円の飲み放題付きコースの予約が入ったが、当日誰も来ず、系列店に確認すると他の4店でも同じ名前の男性から予約があったが、無断キャンセルされていた。

このような実例が出ていて、店側はいずれも厳しく訴訟で対抗して、女性には簡易裁判所から支払いを命じる判決が言い渡され、男性は偽計業務妨害容疑で逮捕された、との結末です。女性は「とりあえず場所を確保するための予約」だったがキャンセルするのを忘れた、男性は「系列店でのサービスに不満があり嫌がらせ」が目的でした。

飲食店側の主張はこうです。無断キャンセルは、食材や人件費の無駄もバカにならず、席だけの予約でも別の客を入れなれない分が損となる。無断キャンセルが無くなれば、同じ価格で料理をグレードアップできるなど、消費者にもメリットがある。このような記事でした。

私達は飲食店に限らず宿泊先にしても、ネット予約サイトの利便性を享受しています。サービスを提供する側もネットでの便利さを求めています。しかしその利便性の裏に、最近話題になっているように、店側が損を被る落とし穴があります。逆に、この落とし穴が利用者(消費者)にもあることが、私の身に起こりました。

毎月一泊二日で、私は京都の勉強会に長年参加しています。先月の下旬に、そのスクール仲間6名で勉強会の前日、忘年会をする話が持ち上がり、私が予約することを引き受けました。開催が12月第二週の金曜日のこともあって、知っているお店はどこも満席で、ネット上で何軒も探した結果ようやくある店が見つかり、ネット上で予約完了の返信メールも届きました。

開催の10日ほど前に、確認することもあって私はその店に電話を入れました。「確かにネットで予約を受けましたが、その日は席が埋まってしまい予約は出来かねない」との店員の回答です。一瞬、耳を疑いました。なんで、どうして、ネット予約で完了の通知も来ているのに。

色々疑問も沸きましたが、出た店員は責任者がどうかも分からず、どうしてそうなったのか店から改めて私に電話をもらいたい旨を伝え、電話を切りました。しかしそれから、現在5日経ちますが店からは何の返答もありません。事の詳細は後で知ることになります。

直ぐにその店から返答も無く、仕方なくその予約サイトを展開している会社に、翌日連絡を試みます。このようなグルメ予約サイトの業界では大手です。ネット予約完了メールから、遡ってクレームのメールを発信しましたが、これで返信が来るのか不安でした。

念のため会社に電話をしてみようと思いHPを調べると、会社案内は出てきますが、電話番号は一切明示されていません。うがった見方をすれば、電話で一々クレームを受け付けない防衛策かもしれません。

翌日の午後遅く、ようやくその会社からメールの返信があり、担当者の名前も明記されていました。しかし、その内容を見て再度目を疑ってしまいました。回りくどい言葉で、予約が履行されないニュアンスです。その店と直に交渉してくれたのか、そのサイト管理会社が今後その店に厳しく対処するのか、全く伝わって来ませんでした。  ~次回に続く~
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする