第二部の中盤より、演歌で始まった出し物は、とりを取るわが社の三部作まで、本来連続で一気に流す予定でした。我々の出し物を始める前の勉強仲間のパフォーマンスがほぼ終わる、数分前に気が付いたことがありました。
私も出番なので舞台袖のつい立から会場を見渡すと、各テーブルに料理が残っているのです。このままでエンディングを迎えると、お客様が食事を終えない前に宴はお開きになってしまいます。我々は既にスタンバイしていましたが、舞台監督に、我々の出し物の前に間を取るように掛け合います。
今回の舞台監督は勉強仲間の女性に依頼しました。第一部の梅谷忠洋学長のコンサートなどでは、何回も舞台監督をした経験があり、プロではありませんがとても慣れている方でした。しかし彼女も舞台の進行を一手に司っているので、他の指示で目いっぱいでした。
素人の私が口を出すのもはばかられましたが、お客様も大事です、社員も一世一代の大舞台です。彼女にしてみれば、私が口を挟むことは、抵抗があったと思います。彼女の判断に任せるような形にしましたが、その提案を呑んでくれました。
そして、「皆様~、ここで我々は次の準備の為にお色直しをしますので、約10分後にスタートします。本日のスペシャルメニューのお食事もまだ残っておりますので、どうぞお楽しみ下さい」と、司会のわが社の女性社員から、会場にアナウンスが流れました。
その間お客様はお食事をしながらも、トイレに立ったり、他のテーブルへ知っている方に挨拶に行かれたり、会場はざわめき立っていました。そして10分後、「皆様~、これからザ・カジテツオンステージが始まります。お客様がお座りになりませんと始まりませんので、どうかご着席下さい~」と、アドリブを利かした司会が効果を発揮しました。
開場は水を打ったように静まり返りました。それから、カジテツ三部作が積を切ったように流れ出し、最終のエンディングロールまで一気に進みました。急遽設定した、10分間の“間”はお客様には気付かれず、むしろ絶妙のタイミングでした。
この10分間がなければ全体が締まりませんでした。この10分間に救われた気持ちです。何か天から降りてきたような感じでした。全て終わった後の、社員の心からの笑顔に、全社員の達成感と満足感と充実感を、私は全身で感じました。 ~次回に続きます~